ここではMP40の無可動実銃を展示しています。
  
はじめに
 
今回は、A氏の所有しているMP-40の無可動実銃を紹介します。素晴らしいコンディ ションの実銃画像を提供して下さったA氏と、キャプションに協力して下さったtoto7氏に、感謝の意を表します。
MP-40とはMaschinenpistole 40:40年式機関短銃の略で、ドイツ軍の代表的な基幹兵器の一つでもあり、当時としては生産性・運用面でも画期的なサブマシンガンであった。
本コンテンツでは既にMP-38のコンテンツがあるので、MP-40特有のディティール とMP-38のコンテンツでは紹介しきれなかったアングルの画像を中心に紹介する事にする。
  
テクニカルデータ
 
口    径   :9mm×19 ピストル弾(9mmパラベラム)
作動システム  :ブローバック・フルオートのみ
給弾方法    :脱着式鋼板プレス製マガジン(32発)
全    長   :630mm(ストック折りたたみ時)833mm(ストックを延ばし た状態)
重    量   :4.03kg
銃 身 長    :252mm
サ イ ト       :フロント・カバー付きポスト型/リア・Vノッチ、100mと200mの選択式
発射速度     :450〜550発/分
射    程   :約200m 
  
 
MP-40
 
エルマ社が開発したMP-38の後継機種として1940年に採用された機関短銃で、MP -38の生産性と安全性に関する欠点を改良した物。
 
写真左の上がMP-40の初期型で下が後期型であるが、ドイツ軍では特別な区別はしてい なかった。
 
コレクターや研究者の中にはMP-40とMP-40/Iと区別している場合があるが、 MP-40では生産性に関する改良は行われていたが、MP-38同様銃身を上にして落下すると、慣性でボルトが後退し、暴発する事故が発生した為に、安全 性の改良も施されたのがMP-40/Iである。
 
外観上もマガジンハウジング部にリブがある無しで容易に区別する事が出来る。
 
   
ディティール
   
MP-40
 
MP-40ではMP-38と比べ、レシバー部やマガジンハウジングが削り出し製から鋼鈑 プレス製に変更された他、ピストルグリップ部のフレームもアルミ鋳造製から鋼鈑プレス製に変更され、生産性は飛躍的に向上した。
しかし、前述の様にコッキングしていない状態のボルトにストッパーが付けられていなかっ た為、安全性には問題が残っていた。
画像はMP-40のマガジンハウジング部で、MP-38にあった大きな穴は廃止されてい るのがわかる。
(この画像のMP40に関してはボルトを改修後の物に交換している様で、レシーバーも改 修されている様だ。)
MP-40/I
 
MP-40/Iの外観上の特徴は、画像の様にマガジンハウジング部にリブが設けられた事 である。
 
これはマガジンの脱着時に泥や埃が入った場合、マガジンが抜けなくなる事を防ぐ意味と、 補強リブの役割を兼ねたものと思われる。
 
MP-40からはレシーバーもプレス製に変わっているが、MP-38とかなり印象が異 なっている。
MP-40/I
 
これはMP-40/I のコッキングレバーだが、MP-40/I のコッキングレバーはボルトのストッパーも兼ねていて、写真左がレバーを押し込んだ安全位置、右の様に引っ張った状態でコッキングが可能となる。この改良 によって暴発事故は防ぐ事が出来、MP-40/I は終戦まで生産され、使用され続けた。
MP-38とMP-40のフレーム
 
写真上がMP-38で、下がMP-40のメインフレーム。
MP-38とMP-40では画像の様にメインフレームの作りも変更されている。MP- 38では一枚の鋼鈑をプレスして作っていたが、MP-40の場合は細かいパーツをスポット溶接で接合した作りになっている。これは生産性と言うよりは材料 の鋼鈑の節約が目的だったと思われる。
MP-40
 
MP-40ではMP-38ではアルミ鋳造製だったピストルグリップ部も画像の様に鋼鈑プ レス製に変更されている。
 
これは生産性の向上と貴重なアルミを使わないと言う両方の意味があったが、高度なプレス 技術とスポット溶接の技術があってこそ出来た改良である。
カバー付きフロントサイトと銃口部
 
フロントサイトはMP-38と同様に鋼製カバーに保護されているが、完全な固定式では無 く、左右の微調整が出来る様に作られている。フロントサイト保護カバーの左右にあけられている丸い穴は、この微調整をする時のために設けられた物である。
もっとも、使用するのはピストル弾なので、小銃弾の様に精密な射撃は出来ない為、この様 にフロントサイトまで微調整が出来るサブマシンガンは少数派の様である(笑)。
銃口部先端のマズルキャップの形状が、MP38とは異なっているのも興味深い。
カバー付きフロントサイトと銃口部
 
MP-40のフロントサイトカバーはMP-38同様、簡単には取り外せない作りになって いるが、マズルキャップの緩み止めはマズルキャップの上に見える針金状のスプリングに簡略化されており、細かい部分も改良が加えられているのがわかる。
MP-38のコンテンツでも書いた様に、フロントサイトはkar98kの様に簡単に取り 外せると戦闘中に紛失する事もあり、ある程度強度がある場合は、この様にしっかりと固定してあっても問題無いのかも知れない。
銃身取り付け基部
 
銃身は画像に写っている大きなナット状の部品で薬室を含むレシーバー部と固定されてい る。
 
ナット状部品とレシーバーの間にはスリング取り付け用リングが挟み込まれていて、スリン グはMP-38同様左右どちら側にも付ける事が出来る様になっている。
画像では右側にスリングを付ける状態になっているが、この状態が正規の位置の様である。
排莢口
 
MP-40もMP-38同様に、コッキングレバーを引くと排莢口はオープンの状態になっ てしまう。
写真で排莢口の中に見えるのはボルト本体である。MP38/40では、リコイルスプリン グガイド(レシーバーの中のバネの入ったチューブ)の先端に撃針がねじ止めされており、ボルトにはこの撃針が通る穴が開いていて、薬莢底部中央の雷管を叩 く様になっている。ボルトの横に線状に見えるのはエキストラクターで、これが空薬莢を排莢する。この写真は無可動実銃の為、ボルトはコッキングする事が出 来ないので排莢口は閉じている。
マガジンハウジング
 
MP-38では削り出しで作られていたマガジンハウジング部も鋼鈑プレス製に改良され た。
 
MG-34からMG-42への新化程では無いが、軍用火器としての完成度が高くなった 分、工芸品的要素は減っている。
 
と言っても英軍のステンガンなどと比べればまだまだ充分工芸品的な銃ではあるが・・・ (笑)。
マガジンハウジング・スリング取り付け部等
 
この写真を見ると、マガジンハウジングがプレスで作られた事が良くわかる。
 
写真にはスリング取りつけ部が写っているが、この部品は180度回転した位置にも固定す る事が出来るようになっている。
 
また、このスリング取り付け部はMP-38同様に、不用意に回転しないよう突起が付けら れている。
折り畳み式バットストックとフォアグリップ
 
フォアグリップはバットストックを伸ばした状態の時に銃を保持し易い様、下方の厚みが薄 くしてあり、滑り止めの溝が設けられている。
また、バットストックはこの厚みの薄い部分に収納される様に設計されており、折り畳んだ 状態で銃本体から極端に出っ張らない配慮がされている。
フォアグリップを外すと、その外観からは意外な単純な箱型のメインフレームが姿を現す が、丁度木製ストックの中の小銃のパーツの様な発想で作られたのかもしれない。
折り畳み式バットストックとフォアグリップ
 
折り畳んだ状態のバットストックを下方から見たショット。
 
バットストックの肩に当たる部分はこの様に中央が抜けた形状になっていて、肩に当たる面 積は少なくなっているが、装薬量の少ないピストル弾を使用する機関短銃では問題は無かった為、MP-40でも変更はされなかった。
 
ただし、後に開発されたドイツ軍の突撃銃では、携行性よりも銃の保持を重要視したらしく 木製のストックが復活している。
  
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09.Nov.2000 公開
09.Sep.2002 改定
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