ここではMP38の無可動実銃を展示しています。
  
はじめに
 
今回は、たまごやきさんの所有しているMP−38の無可動実銃を紹介します。素晴らしい コンディションの実銃画像を提供してくれたたまごやき氏と、キャプションに協力して下さったtoto7氏に、感謝の意を表します。MP38とは Maschinenpistole 38:機関短銃38の略で、いわゆるサブマシンガンの事である。MP-38とMP-40は、困った事によく”シュマイザー”と言う呼び方をされているが、 シュマイザーはベルクマン社のMP-18(世界初の実用機関短銃)、MP-34、MP-35、ヘーネル社のMP-28等を設計した技師の名前で、MP- 38・MP-40には関係無い。
したがって、本コンテンツではあくまでMP-38及びMP-40の名称を使用する。
  
テクニカルデータ
 
口    径   :9mm×19 ピストル弾(9mmパラベラム)
作動システム  :ブローバック・フルオートのみ
給弾方法    :脱着式鋼板プレス製マガジン(32発)
全    長   :630mm(ストック折りたたみ時)833mm(ストックを延ばし た状態)
重    量   :4.03kg
銃 身 長    :252mm
サ イ ト       :フロント・カバー付きポスト型/リア・Vノッチ、100mと200mの選択式
発射速度     :450〜550発/分
射    程   :約200m 
  
MP38
 
MP38はエルマ社(エアフルター・マシーネンファブリック社)が開発した機関短銃で、 当時としては画期的な設計思想の元に作られていた。同時期の機関短銃は小銃同様に高度な機械削り出し部品と木製ストックから作られていたが、MP38は金 属製の折りたたみ式ストックとプラスチック製グリップ、更にプレス部品を使う事で、軽量化と生産性を高める事に成功している。しかし、ドイツでは貴重なア ルミ製部品や、機械加工で作られたレシーバー部はまだ生産性に問題があり、これらを改良したMP40で極めて完成度の高い機関短銃が完成した。
MP38
 
写真上が銃身部とレシーバー部、銃身の下にあるのが伸縮式チューブに入れられた作動スプ リング、右がピストルグリップと折りたたみ式ストックのついたメインフレーム、左下には32発の容量を持つ鋼製マガジン(2種類)。
 
MP38にはエルマ社のハインリヒ・フォルマーの設計した、新型機構が採用されている。 この新型機構とは、伸縮式のチューブの中にコイルスプリングを入れた物で、作動スプリングを塵や泥から守り、分解清掃時等にスプリングを変形させる事も防 ぐ事が出来た。この方式は作動もスムースで信頼性も高く、特許を認められた。
 
MP38とMP40
 
画像上がMP38で下がMP40である。
MP40では、レシバー部やマガジンハウジングが鋼鈑プレス製に変更された他、ピストル グリップ部のフレームもアルミ製から鋼製に変更され、生産性は飛躍的に向上した。この事によって、ドイツ陸軍では全下士官の標準武装を機関短銃にする事が 決定された。
 
MP-38とMP-40の初期型では、銃身を上にして落下すると、慣性でボルトが後退 し、暴発する事故が発生した。
そのため専用の革製ストラップが支給されたが、この問題も改良が加えられ、更に MP40/1が終戦まで生産され続けた。
 
 
右側面より
 
MP38の外観上の特徴は、画像の様に溝加工のあるレシーバーと機械切削加工で作られた マガジンハウジングに大きな丸い穴があけられている事だが、このMP38はピストルグリップ部の塗装が失われているお陰で、もう一つの大きな特徴であるピ ストルグリップ部のフレームがアルミニュウムで作られていた事も、はっきりと確認出来る。
 
このマガジンハウジング部にあけられた穴の意図が何であったかは知らないが、MP40で は廃止されたところを見ると、やはりここから泥や埃が入って不都合だったものと思われる。
 
 
カバー付きフロントサイトと銃口部
 
フロントサイトは鋼製カバーに保護されているが、完全な固定式では無く、左右の微調整が 出来る様に作られている。
フロントサイト保護カバーの左右にあけられている丸い穴は、この微調整をする時のために 設けられた物である。
 
このフロントサイトの調整機構はドイツ軍が採用した多くの小火器に共通した方式で、 P08やP38のような拳銃をはじめ、制式小銃のMauser Kar98や多用途機関銃MG34等にも採用されている。(ただしMG42に関しては左右の微調整機構はビスで固定する若干異なった機構を採用してい る。)

フロントサイトカバーにヴァッフェンアムトWaA280と072と言うシリアルナ ンバーの刻印が打刻されている。
 

 
カバー付きフロントサイトと銃口部
 
MP-38とMP-40シリーズの銃口部下には独特の形をした突起が付けられているが、 ドイツ軍のマニュアルにはKornhalter:照星保持機と書かれている。
これは走行中の車両などのピストルポートから射撃する際に、振動で銃口がピストルポート から外れ、車内を誤射する事を防ぐため、ピストルポートの縁に引っ掛ける事を目的に設けられた。
 
また、銃口部先端のマズルキャップの形状が、後のMP-40とは異なっているのも興味深 い。
 
MP-38とMP-40は多くの部品が共用出来る様に設計されていたが、こうして細部を 見ていくと細かいディティールに結構相違点がある様だ。
 
カバー付きフロントサイトと銃口部

MP-38のフロントサイトカバーは、マズルキャップとかしめてあるピンを外さな いと取り外せない作りになっていて、戦闘中多少ぶつけても外れて紛失する事は無かった。しかし、これはカバーが簡単には交換出来ないと言う欠点とも考えら れるが、基本的にはこの鋼鈑プレス製のカバーが変形する程乱暴に扱ってはいけないと言う事かもしれない。(Mauser Kar98kの様に、カバーのみが別部品の場合はしばしばカバーは外れてしまう事があった。)またフロントサイト自体は左右の調整は出来るものの、上面形 状はフラットで、小銃や機関銃より大雑把な作りになっているが、これは使用する弾薬がピストル弾で小銃弾と比べて命中精度があまり高くなかった為であろ う。

 
排莢口・マガジンハウジング・スリング取り付け部
 
MP38/40シリーズでは、コッキングレバーを引いて撃発可能状態にすると、排莢口は 常にオープンの状態になり、ここから塵や泥が入る事を防ぐ事ができなかった。これはこのシリーズの大きな欠点ではあったが、最後までダストカバー等は付け られる事は無かった。
写真にはスリング取りつけ部が写っているが、この部品は180度回転した位置にも固定す る事が出来るようになっている。これは私の私見で、おそらくコッキングレバーが左側に付けられている事共関係があると思われるが、確証は無い。マガジン キャッチのパーツにもWaA280とシリアルナンバー072の刻印が打刻されている。
 
 
マガジンハウジング・リリースボタン・コッキングレバー
 
機械加工で作られたマガジンハウジングに穴があけられているのもMP-38の外見上の大 きな特徴の一つになっている。
ハウジングの穴の右上にあるチェッカリングの入ったボタンがマガジンリリースボタンで、 ボルトがオープンの状態でもクローズの状態でもマガジンの脱着は可能になっている。
MP-38/40シリーズはドイツで初めてコッキングレバーを左側に設けた機関短銃であ る。これは、トリガーから手を離す事無くコッキングする事が出来た反面、スリングで首から下げた時に、コッキングレバーが体に当たる事も意味した。した がって、上に書いた様にスリングを左右どちらにでも付けられる工夫をしたのでは無いかと想像したのだが・・・。
この面を見ても各パーツにWaA280とシリアルナンバー072の刻印が打刻されている のが判る。
 
 
マガジンハウジング・スリング取り付け部等
 
この写真を見ると、マガジンハウジングが物凄く綺麗な機械加工で作られている事が判る。 生産性は兎も角美しい・・・(笑)。
 
また、スリング取り付け部を見ると、回転しないように突起が付けられている。更に、銃身 基部との間にはスプリングワッシャーが入れられていて、射撃による振動で銃身を固定しているこの大きなナットが緩まない様に設計されているのが理解でき る。
話はまたスリングに戻るが、降下猟兵のポートレートで殆どの兵士がトリガーが左手の位置 に来るように銃を下げているが、やはりコッキングレバーが体に当たるのを嫌ったと考えている。
 
 
レシーバー部下面とメインフレーム
 
凝った機械加工で作られたレシーバーと、極めて合理的なプレス加工で作られたメインフ レームが好対照で面白い。
 
レシーバーを外すには、マガジンを抜いて薬室に実包が無い事を確認し、トリガーを引いて ボルトを前進させた後、下面にあるリリースボタン(このページの一番下の画像のバットストックの中に写っている丸いボタン)を引きながら回転させ、更にト リガーを引きながらピストルグリップを握ったままレシーバーを左の方へ回転させるとフレームグループとレシーバーを分離する事が出来る。
 
写真のレシーバー左端に見えるのはスプリングの入ったチューブの先端部である。
 
 
排莢口・コッキングレバー
 
既に書いたが、MP-38はコッキングレバーを引くと排莢口はオープンの状態になってし まう。また、この画像で分る様にMP-38のコッキングレバーは体に当たるのにはあまり有難く無い形状をしている(笑)。
 
排莢口・コッキングレバー

排莢口のクローズアップ。写真で排莢口の中に見えるのはボルト本体である。 MP38/40では、リコイルスプリングガイド(レシーバーの中のバネの入ったチューブ)の先端に撃針がねじ止めされており、ボルトにはこの撃針が通る穴 が開いていて、薬莢底部中央の雷管を叩く様になっている。ボルトの横に線状に見えるのはエキストラクターで、これが空薬莢を排莢する。既に書いたが、排莢 口はこのように大きく、排莢ミスによるジャミングには有効であったが、塵や泥が入る可能性があった。無可動実銃の為、実際にコッキングして、排莢口をオー プンの状態にする事は出来ないが、排莢口の大きさはこの画像から理解してもらえるだろう。

  
続 き を 見 る
  
  
ホームに戻る
資 料館トップへ
資料館 別館トップへ

本サイトに掲載されている文章及び画像の 無断転載はお断りします。Copyright  2000  STEINER

18.May.2000 公開
09.Sep.2002 改定
inserted by FC2 system