ここでは、Mauser kar98kの無可動実銃の展示をしています。
   
はじめに
 
今回は、ドイツ軍の基幹小銃だったMauser kar98kを紹介する。kar98kはkarabiner 1898 kurzの略で1898年採用の短騎兵銃という意味である。採用年の1898年に関しては、原型となったMauser GeW98の採用年で、kar98k自体は実際には1935年に採用されている。
Mauser GeW98は1898年にドイツ帝国陸軍で制式採用となり、第一次世界大戦では、長さの長い歩兵銃GeW98と、それよりも短い騎兵銃kar98aが使用 され、1924年にリアサイト等の改良が行われ、kar98bを経てkar98kとなった。
kar98kの”k”が短いという意味である事は既に書いたが、これは第一次世界大戦で 使われたkar98aが全長111cmであったのに対し、ベルサイユ条約の関係もありkar98bは125cmと歩兵銃並みの長さがあった為、111cm に戻ったkar98kに付けられた名称である。従って、この111cmと言うのは1935年当時の小銃の長さとしては、特別短い物では無い。
これは、兵の移動が車両によって行われる事が増えた事や、着剣による歩兵の白兵戦が減っ た事に起因する。
 
kar98kは採用年は1935年であるが、実際には1924年に原型が出来ていたの で、1935年の制式採用と共に陸軍に大量納入された。作動方式は既に信頼性の実証されたマウザータイプのボルトアクションで、反動も少なく完成度の高い 小銃であった。
ただし、kar98kも開戦と共に毎年の様に細かいマイナーチェンジが行われ、様々なバ リエーションが存在している。
 
このコンテンツでは、そのバリエーションの中から外観上特徴のある変更点をピックアップ して紹介するが、変更時期に関しては沢山のメーカー間では差異もあり、あくまで目安である事を含んで頂きたい。
 
データ
 
  口  径 : 7.92mm
  全  長 : 1107mm
  銃 身 長 : 600mm
  重  量 : 3900g
  作動方式 :マウザータイプボルトアクション
  装 弾 数 : 5発
 
今回のコンテンツ制作にあたり、貴重な実銃の画像を提供してくれたたまごやきさんに感謝 の意を表します。
   
kar98の系譜
   
 
kar98kの年式によるバリエーション
 
写真上が1935年から1939年迄に生産された代表的なkar98k。
 
写真中は1940年頃から1941年頃にかけて生産された代表的なkar98k。
 
写真下が1942年頃から作られた戦争中期生産タイプのkar98k。
 
この後、戦争末期の1945年には、着剣装置を省略した末期生産タイプのkar98kも 作られている。
 
 
kar98kの年式によるバリエーション
 
上の写真を反対側から見た画像であるが、銃口と木製ストックの境にある帯金と、小銃の木 製ストックの右端にある銃床板の形状に若干変化があるのに注意して欲しい。
 
因みに一番上のkar98kは1939年製。
真中のkar98kは1941年製。
 
 
銃床板のバリエーション
 
小銃の木製ストックは湿気などで変形すると銃身などを曲げてしまう恐れがあるため、通常 はクルミやサクラなどの良材を選んで使用していた。kar98kも当初はクルミの単材を使用していたが、1939年頃から集成材導入し、更に戦争中盤から は樫やブナの合板製のストックも生産した。
結果的には重量はやや増加したが、強度と精度は維持され、世界初の合板製ストックの実用 化に成功している。
これによって材料となる良材の不足を補う事が出来た。
また、集成材ストックの導入に伴い銃床板の改良も行われ、1939年頃から鋳造製の板状 の銃床板の他に、鋼鈑プレス製のストックをカバーするタイプの銃床板が作られ始めた。
写真上が1939年迄の銃床板。(実際には1939年以降も生産されている。)
写真下が1939年頃から導入された新型銃床板。
 
 
 
 
 
銃床板のバリエーション
 
写真左が1939年以降の鋼鈑プレス製新型銃床板。
写真右は1939年以前の銃床板。
 
集成材や合板製のストックの問題は、主に接着強度であるが、この新型の銃床板はストック をカバーする形になっていて、ストックを保護するのに極めて有効であった。
集成材:木製ストックを作るような太さと長さのある木材の良材は太い原木の中から少しし か取る事が出来ないが、板や棒状の木材を貼り合わせた集成材を使用する事で原材料を無駄にする事無く、狂いの少ない材料を作る事が出来る。
合板:薄くスライスした板を木目の方向を90度変えて貼り合わせる事で、極めて安定した 材料を作り出す事が出来る。
 
帯金のバリエーション
 
着剣装置を銃に固定する帯金の形状も1942年頃から変更された。
 
写真上が初期型で、写真下が後期型。
一番下に写っているのがクリーニングロットである。
 
写真上のkar98kにはフロントサイトの鋼鈑プレス製カバーが付いていないが、 1939年頃までのkar98kにはカバーが無い。
末期生産タイプのkar98k
 
戦争も終盤の1945年には、着剣装置とクリーニングロットの省略されたkar98kが 生産された。
これは現在ではコレクターの間で”Kriegsmodell”と区別されている。
マニュアルから
 
これは、ドイツ軍の操典”REIBERT”に掲載されている小銃のページの1ページ目だ が、左からヴァイマール国軍が採用していたkar98b、真中が同じくGeW98、右にあるのが新生ドイツ国防軍が1935年に採用したkar98kであ る。
 
マウザー小銃の系譜に関しては始めに名称だけで簡単な説明をしたが、GeW98や kar98bの画像も掲載しておく価値があると思いここに掲載する事にした。
 
銃の長さに関しては歩兵銃のGeW98が1255mmで、騎兵銃のkar98bは 1250mm、kar98kは1107mmである事から、この写真程差は無い。(この写真ではGeW98が1255mmだとするとkar98kは 1065mmと42mm短く縮尺されている。)
 
ただし、GeW98とkar98kを比べて見るとGeW98のボルトが横に水平に伸びて いるのに対し、kar98bとkar98kのボルトは銃の側面にくの字に曲げられている事、スリングの取り付け位置も銃の下面から左側に移設している事な ど、携行性を向上させる為の改良が施されている事がわかる。
 
ただしこの改良は、背の高い兵には”捧げ銃”がやりにくいと言う文句の種になったという 逸話もある。
 
”REIBERT”には小銃の構造、操作、手入れについて、更に8mmマウザーの実包の 種類と構造、照準の仕方を始めとする射撃に付いても詳しく解説されている。
   
スリングの取り付け
   
 
kar98kのスリング
 
kar98kのスリングは革製ベルトと革製ループ、長さ調節用金具、銃に固定する為の固 定具からなっている。
写真上はスリングの長さ調節金具が付いている方の端部。
写真中は、銃本体に固定する為の固定具。
下は、もう片方のベルト端末部で、こちら側が固定具に付けられる様になっている。
 
 

 
スリングの取り付け
 
まず、最初にkar98kの銃口側のスリング取り付け部にスリングの長さ調節金具が付い ていない方を通す。
スリングの取り付け
 
次にスリングの先端を革製ループを通して長さ調節金具へ。
スリングの取り付け
 
スリングベルトを長さ調節金具に通した状態。
 
右側に写っているのがスリングを銃本体に固定する固定具。
スリングの取り付け
 
kar98kの木製ストックにあけられたスリング通しの穴にスリングを通す。
スリングの取り付け
 
kar98kの右側に通したスリングの先端にスリング固定具を取り付ける。
木製ストックのスリング取り付け部とスリング固定具
 
写真上がスリングを取り付けた状態。
 
スリングはスリング固定具の穴を通した後、固定金具を穴に入れ、更に革製ループを通す仕 組みになっている。
 
写真下はスリングを付けていない木製ストックのスリング取りつけ部を示す。
スリングの長さ調節金具
 
鋼鈑プレスで作られた長さ調節金具。
画像に写っているピンを左に移動するとストッパーになり、逆に右に移動するとスリングの 長さを変える事が出来る。
   
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23.Aug.2000 公開
02.Sep.2000 改定
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