このページでは、武装親衛隊の40年型野戦服を紹介しま す。
   
前ページに引き続き、武装親衛隊の40年型野戦服 (Feldbluse40)を紹介します。
    
各部のディティール
   
 
襟の裏地と脱着式肩章取付部

この服の襟の裏地は、服の生地と共生地で作られている。また、肩章は標準的野戦服同様脱着式で、襟の近くに付けられたボタンと肩 に付けられているループで固定されている。この服に付いているSSの42年型肩章は、作りの違うバリエーションを見てもサイズは統一されているが、実際現 存する陸軍の肩章などでは長さが様々で、肩章によってはボタンの位置を変えなくては付かない物もある。これは規格とか規則が多いイメージのドイツ軍軍装に 関する七不思議の一つである。

 
襟の裏地

この様に初期の服では襟の裏地もウール生地を使用した物が多いが、野戦服のズボンがスレートグレーからフィールドグレーに変更に なった時期にはグレーの裏地が使われる事もあった。また、1941年以降の服では上襟の裏地が作業着等に使われていたヘリンボンのコットン地を使用した物 もあった。これは、ウールの源材料である羊毛が全て国産でまかなわれる事が無かった為、利用価値の高いウールの端切れを節約する為の処置と思われる。ウー ル生地の端切れは肩章等の材料に利用出来る他、フェルト等の原材料として再利用されていた。

40年型野戦服のダーツ
 
ドイツ軍の野戦服は極力ウール生地を切断しないで作る工夫がなされていた。画像の矢印は 全てダーツで、上の矢印以外ではウール生地は切断されていない。これは、工程の簡略化と当時使われていた綿の糸とウール生地の強度に関係していると思われ る。一般的にウール生地の接合部はダブルロックされていて、ウール生地の切断部はまつられていないのも特徴である。
40年型野戦服のダーツ
 
胸の立体裁断の為に、脇から胸ポケットにかけてダーツが入れられているが、この部分はつまんだ生地が着心地に強く影響する為か、生地に 切れ込みが入れられている。ダーツは脇とポケットに挟まれているので、外観上あまり目立たない上、胸の貼り付けポケットで補強もされている。このダーツは ウール生地を切断しているので、両脇に縫い目があるのに注意。
40年型野戦服のダーツ
 
この画像は、ウエストサイズを絞る為のダーツだが、この部分はウール生地を切断せずにつまんだ形で仕上げられている。また胸ポケットと 腰ポケットの間に設ける事で、ウエストベルトを締めると殆ど気にならない配慮もされている。このダーツも上下にあるポケットの縫い付けに補強の効果がある と思われる。これは当時の綿糸が現在の化繊糸と比べると引っ張りに弱い事や、ウール生地もレーヨンの混毛で弱くなっていた事と関係があるのだろう。
ダーツと接合部
 
画像中央やや左に写っているのが前後の接合部で、ダブルロックされている。
他の縦線は3本共ダーツでウエストラインを絞る為の物。こうしたダーツはあくまでシル エットを大事にしたデザインで、ある意味では実用性とはあまり関係無いかもしれないが、これがドイツ軍の野戦服の魅力でもある。これら3本のダーツは様々 な省力化が施された1943年型野戦服にも踏襲されている。
センターベント

ウールの野戦服は背中が一枚の布で作られている為、この部分は布を剥ぎ付けて作られている。
内側には裏地が付けられているが、ウールの生地自体は切りっぱなしの状態である。
また、背中の布も二重ステッチで縫い合わされているが、やはり生地自体は切りっぱなしになっており、まつり縫い等の処理は施されていな い。

腰の貼り付けポケット
 
官給の野戦服の腰ポケットは、この様にプリーツが付けられていてある程度大きな物が入れ られる様になっている。ただし、画像でも解る様にポケットの上部は服に縫い付けられているのでポケットの口の部分は意外と狭く、物の出し入れはしにくくあ まり実用的とは言えない。このプリーツは製造に手間が掛かるので、1942年頃からの野戦服では作りが簡略化されるが、ポケットの口の部分を広くする様な 変更は行われていない。ここら辺に実用性とデザインの狭間が垣間見られるのもドイツ軍の野戦服の特徴であろう。
袖口
 
袖口には2ケのボタンが付けられていて、袖口の太さを調節出来る様に作られている。通常は内側(画像では下)のボタンをとめるが、寒冷 地などでは外側のボタンをとめて袖口を絞る事が出来る。この服ではフィールドグレーの樹脂製ボタンが使われているが、これはSSの野戦服に良く使われてい るボタン。袖口はボタンの付いている側も大きくコットンの裏地が付けられていて、ボタンが取れにくくする工夫がされているが、写真でも判るようにウール生 地は切りっぱなしである。(この様な造りが如何にも軍用品の趣がある。)
   
ベルトフック
   
ベルトフック

ドイツ軍の野戦装備はウエストベルトを基本に装着する様設計されていた。したがって、ウエストベルトが下がらない様に野戦服にも 脱着式のベルトフックが前後4ヶ所に付けられていた。写真の左側、胸ポケットと腰ポケットの間に写っているのが、脱着式のベルトフック金具で、右側はその 金具を出す為のホールである。因みに陸軍の野戦服のベルトフックホールは最後まで写真と同様に3つ開けられていたが、SS用は1942年以降は2つに変更 された。

ベルトフックと内蔵サスペンダー
 
ベルトフックは内蔵式のコットン製サスペンダーに付けられる様になっていて、服自体には負担をかけずに肩から背負う仕組みになってい た。内蔵サスペンダーは服の裏地のスリットを通し、前後に下げられる様に装着された。矢印上は肩の部分のスリットで、内蔵サスペンダーを脱着する際に利用 した。矢印下は内蔵サスペンダーが前後にずれるのを防ぐために付けられているフック金具である。
内蔵サスペンダー

内蔵サスペンダーは厚手のコットンのベルト状の物で、肩に当たる中央部は巾が広く厚みも厚く、ベルトフック金具を付ける両端部は 若干巾が狭く厚みが薄く織られていて、前後に各々15個のベルトフック用ホールが設けられている。これは服とは異なりフリーサイズで作られていた為で、通 常は真中あたりのホールが使える様になっている。画像は服の内装のスリットに内蔵サスペンダーを通した状態の画像で、右の方にサスペンダーを固定するフッ ク金具が写っている事と、服に開けられたベルトフック用ホールとサスペンダーの位置関係に注意。

内蔵サスペンダーとベルトフック金具

ベルトフック金具は約4mmのアルミ製針金を曲げて作った物で、内蔵サスペンダーのホールに通して装着する。具体的には服のベル トフック用ホールの位置に合うホールの2ケ上のホールに金具を裏側から通し、2ケ下のホールから表側に再び出して装着する。後は服のホールから金具を表に 出せば取り付け完了である。因みに内蔵サスペンダーの長さは約1m、中央部の巾は44mm、両端部の巾は27mmで、ホールは13mm間隔に開けられてい る。

   
この服のスタンプ
   
サイズスタンプと製造年
 
この服のサイズスタンプは官給陸軍型野戦服の標準的位置、包帯ポケットの上方に押してあ る。
39 44 96 65 62 がサイズを表す数値で単位はcm、部位は最初の39が襟 から腰までの長さ、44が首廻り、96が胸囲、65が着丈、62が袖丈である。
B II 41は生産地と製造年を表していて”B”はベルリンを表し、”41”は1941年製を意味している。
製造メーカースタンプ
 
これは包帯用ポケットに押された製造メーカースタンプであるが、これも官給野戦服には良 く見られる。
上段に”Herbert F. Huettmann”:メーカー名、下段には所在地”Berlin-Charlottenburg ”(ベルリン-シャールロッテンブルク)の文字が押されている。
      
   
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28.Oct.2000 公開
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