このページでは、ドイツ陸軍の43年型夏季野戦服を紹介 します。
   
はじめに
 
今回は、陸軍の43年型夏季野戦服(Drilchanzug 43)を紹介する。ウール製野戦服と同型の夏季用野戦服は1941年頃に登場し、ウール製の野戦服同様42年にはポケットのプリーツが省略され、43年に はポケットの雨蓋のカットが直線的に変更された。
本コンテンツを制作するにあたり、貴重なコレクションを取材させて下さったPucki氏 に、この場で改めて感謝の意を表します。
    
 

 
陸軍装甲擲弾兵二等兵
43年型夏季用野戦服

1939年の開戦当初、ドイツ陸軍の夏季用野戦服は、正規の物が無かった。(しばしば作業服等が代用品として使われていた。)
1940年の軍装規定改訂後、戦時軍装規定で被服の作りは簡略化され続けたが、戦線の拡大と共に気候風土に合わせた被服を作る必要性に 迫られた。
このリードグリーンのヘリンボーンコットン製野戦服も、それらの被服の一つであるが、ウール製野戦服のデザインとほぼ同じデザインで作 られている。

 

 
陸軍装甲擲弾兵二等兵
43年型夏季用野戦服

後ろから見た43年型夏季用野戦服。コットン製の作業着同様、背中はセンターでづがれた2枚接ぎとなっている。
また、コットン製野戦服では、ウール製野戦服では、前後4箇所に設けられているベルトフック用ホールが両脇にのみ開けられている。

これは裏地の面積が多いと、夏季用被服の意味が減じてしまうためと思われる。
ベルトフック金具の取付に関しては後で詳しく紹介するが、装備はサスペンダーとこのフックでバランス良く装着出来る様になっている。

 

 
内装

内装は補強の必要な部分のみと最低限に抑えられており、かなり簡略化されている。
この服の裏地は、コットン不足を補うために1942年に開発されたペルロン製である。

   
各部のディティール
   
バストショット

この服は、基本的に開襟着用する事になっていたが、画像の様に第一ボタンを留めることも出来た。
襟首の真ん中に黒いボタンが見えるが、これは脱着式の布製カラーを付ける為の物である。

この脱着式布製カラーに関しては他のコンテンツで既に紹介したので今回は省略する。

ポケットの雨蓋と国家鷲章

ウール製野戦服同様、右胸ポケットの上方には国家鷲章が付けられている。
また、胸ポケットの雨蓋も、ウール製の43年型野戦服同様、直線的なカットに変更されている。

BEVOタイプの国家鷲章

この服には、フィールドグレー地にライトグレーのBEVOタイプの国家鷲章が付けられている。
上辺は直線ミシンで、後はジグザクミシンで縫われているのに注意。

襟章と肩章等

夏季用野戦服と言っても、特別な襟章や肩章が作られた訳では無く、通常の襟章及び肩章が付けられていた。
また、この服には1943年頃まで車両等の塗装に使われていた”パンツァーグラウ”に塗装された、末期型の鉄製ボタンが使われている。
パンツァーグラウは車両に使用されなくなった1943年から、装備品類に流用され、統一色”ドゥンケルゲルプ”が使用される1944年 まで、様々なアイテムに塗装されている。

襟章

この襟章は、1938年11月26日付通達で採用になった各兵科共通の襟章(Einheitslitze)で、ラインがダークグ リーンになっているのは、襟自体がダークグリーンの服に付ける事を意識した物である。
1940年末には、フィールドグレー地にマウスグレーのラインの襟章が採用されたが、この服には旧型襟章の在庫が使用されている。

肩章

この肩章は、陸軍の装甲擲弾兵の脱着式末期型兵用肩章である。
兵科色パイピングはレーヨン製、肩章本体はウール製である。
 

肩章
 
末期型肩章は、この様に裏地も簡略化され、補強テープが縫い付けられたのみとなっている。
襟の裏地等

この服の襟の裏地には服本体と同じ、リードグリーンのヘリンボーンコットン生地が使われている。
また、上襟と下襟のつなぎ目には、ウール製野戦服同様、力糸が施されている。

ポケットの雨蓋の裏地
 
ポケットの雨蓋の裏側には、服の内装同様ペルロンの裏地が付けられている。
ベルトフック金具用ホール
 
前述の様に、夏季用野戦服のベルトフック金具用ホールは、両脇に設けらられている。
ベルトフック金具用ホール
 
ホールはウール製野戦服同様に、縦に3個並んだ形で作られている。
ベルトフック金具用ホール
 
裏から見たベルトフック金具用ホールと、ベルトフック金具取り付けベルト。
ベルトフック金具についての詳細に興味のある方は、「陸軍の36年型野戦服」の コンテンツを参照されたい。
ポケットの補強布
 
腰の貼り付けポケットの上端部には、最も力がかかるので、裏側には画像の様に補強布としての裏地が付けられている。
左側の裏地は、ベルトフック金具用ホール部や、脇の縫い合わせ部の補強も兼ねている。
背中の接ぎ

コットン製被服の多くは、背中が2枚接ぎで作られている。
接ぎ目には解れ止めに織られた原反の端部が使われており、まつり縫いを省く工夫がなされている。

包帯用ポケット

これは、前線での応急処置用のファーストエイド(包帯)を入れる為に付けられたポケットである。
この包帯について詳しく御覧になりたい方は、「包帯と衛生用品」のコンテンツを参照されたい。

袖口

袖口には2ケのボタンが付けられていて、袖口を止める様に作られている。
この服では黒の樹脂製ボタンが使われている。
袖口の作りに関しては、今まで紹介してきたウール製野戦服と殆ど同じである。

ボタンの取り付け
 
コットン製被服の多くは、洗濯の便のため、ボタンが脱着式となっている。
この服もボタンはS環と呼ばれる金具で固定されており、簡単に脱着することが出来る。
ボタンの取り付け

これはボタンを留めている”S環”を裏側から写した画像である。
服自体にはホールが開けられているのみで、ホールに通したボタンの足に、S環を通す様になっている。なお、S環は直にシャツに当たらな い様に、共生地のカバーで覆われる様な作りになっている。(右前身ごろの裏側は二重構造になっている。)

末期型ボタンとS環
 
左は1943年末頃から作られたと言われる、末期型ボタンで、S環を包んだ様な構造になっている。
右はボタンを付けるS環金具。
コットン製被服や、SSの初期型略帽等に使われている。
サイズ表示スタンプ
 
この服では、左前身ごろの裏側にサイズスタンプが押されている。通常サイズスタンプは3行で、上段は襟から腰、首廻り、中段は胸囲、下 段には着丈と袖丈がスタンプされているが、画像のスタンプは配置が異なる様である。
96は胸囲、43は襟から腰までの寸法と思われるが、他はハッキリと判読出来ない。
更にその下に、地名の略号と製造年がスタンプされているが、やはり判読不能である。
  
   
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22.Jun.2002 公開
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