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前述の様にこの服には左胸に内ポケットが設けられており、その内側ににはネームタグが縫い付けられている。ネームタグにはテー ラー名がプリントされたオイルタグと、テーラーネームが機械刺繍された物等があるが、この服にはテーラー名が機械刺繍されたタイプが使われている。また、 ネームタグは通常この写真の様に内ポケットの内側に縫付けられているので、めくると逆さまになってしまう。 |
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ネームタグの記載内容は上段から |
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この服は襟がめくれあがらない様に襟の一部が服に縫付けられていると同時に、首に下げる 勲章のリボンを掛ける為のフック金具が付けられている。 ベティヒャー将軍は1918年に Ritterkreuz d. kgl.Hausordens v. Hohenzollern mit Schwertern と Ritterkreuz d. klg. saechs. St. Heinrich-Ordens も授与されている。しかし、この服の場合は1942年5月27日に授与された剣付戦功騎士十字章の為と考えてみても良いかと思う。外地から帰ってきて陸軍 総司令部予備司令官の職に着任すると同時に剣付戦功騎士十字章を授与される事が決まったので新調した服と言う推論に無理はないだろう。 |
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既に紹介している兵用の野戦服の場合も襟には布製の脱着式カラーが付けられる様になっているが、野戦服のカラーはあくまで服の襟の汚れ 防止が目的なので、何回も洗濯して再利用が可能な布製カラーが採用されているが、将校服の場合は襟の汚れ防止だけでは無く、襟の形を整える目的もあった為 このように硬いカラーが採用されていた。 写真の下の方に写っているが紙製カラーで、上の方にはカラー取り付け金具が写っている。 カラー取り付け金具に付いては、以下に詳しく紹介する。 |
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この写真は紙製カラーのスリットを金具に通した状態。 この服に付けられているカラー取り付け金具は、先端部が可倒式になっていて、カラー脱着時には先端を写真の様にすぼめる事が出来る。 このスリットと金具は、襟の両端部と中央部の3箇所に設けられており、カラーは簡単に脱着する事が出来る。写真左側に襟のホックが写っ ているが、将校服の多くはこの様に2本のホックが付けられている。(官給野戦服のホックは1個である) |
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これは紙製カラーのスリットに通した金具の先端を開いた状態で、これでカラーはしっかり と固定される。カラーのスリットは通常この様に左右方向に余裕のある寸法で設けられているが、これは襟のサイズにある程度適応させる目的と、脱ぎ着の時に 襟が開いても金具に負担をかけたりカラー自体が折れ曲がってしまうのを防ぐ目的がある。なお、このカラー取り付け金具にもバリエーションがあり、この様に 先端が可動式の高級品もあれば、先端部が動かないタイプの物も作られていた。 |
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この服のボタンホールは手縫いで非常に丁寧に作られている。 |
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これはボタンホールを更に拡大した画像であるが、通常の官給野戦服のキーロック型と眠り ホールと言われるボタンホールの丁度中間的な形に作られているのがわかる。この形のボタンホールは将校用のオーダー服では眠りホールと共に見る事が出来る ボタンホールである。こうして見るとボタンホール廻りの糸も痛みが無く、この服が極めてコンディションが良い事が理解してもらえると思うが、おそらくこの 服が一張羅だった事も想像出来て面白い。 |
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この服でも袖口は通常の将校服同様ダブルカフ(袖口が折り返した様な感じに作られている。)になっている。この折り返しには、書 類を入れたりするポケットの役割があったと聞いた事があるが、軍服に大きなポケットが無かった頃の名残かもしれない。また腰の貼り付けポケットも殆ど飾り で、野戦服の様な”マチ”は付けられていない。将校服のポケットの雨蓋の形は千差万別で、おそらく注文主の好みが強く反映されているものと思われるが、こ の服の雨蓋はおとなしい形をしている。 |
ドイツ軍では将校はパレード用礼装、準礼装でサーベルを下げていた為、多くの将校服には サーベルや短剣を吊る為のベルトを出すスリットが左の腰ポケットに設けられている。この服でも写真の様に腰ポケットの内側にスリットが設けられていてフッ ク金具の付いたベルトが出せる様に作られている。また、将官ともなると、通常腰ポケットは殆ど飾りでしか無いので、この服でも裏地は薄くすっきりとした外 観を重視した腰ポケットとなっている。写真ではわからないが、ポケットには足の部分が通常よりも短いタイプのボタンが付けられており、その拘りが興味深 い。 |
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将校服の多くは、この様に内側にベルトが付けられている。これは内側前面で軽く絞める布 製ベルトで、着用時のシルエットを整える役割を持っている。写真では内装ベルトのやや下方に剣吊り用のスリットが設けられているが、この部分も服によって 色々な作りがある。服によっては剣吊り用のベルトが服に縫い付けられている物もあるが、この服の様にベルトが縫い付けられていない場合はサーベルや短剣用 の吊りベルトを別途装着する事になる。 |
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上の写真の内装ベルトを実際にしめた状態。 この内装ベルトの作りも様々で、中にはボタン留めの物等もあるが、通常はこの様なメッキ 処理を施した金属製バックルが付けられている。このあたりのディティールも個性があって面白いので、機会があったら色々紹介していきたいと思っている。 |
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将校用の服の裏地にはシルクや人造シルク、サテン地等が多く使われているが、一般的には 官給野戦服などより薄い裏地が使われる事が多かった様である。稀に極めて厚手の裏地が使用されているケースを見るが、寒冷地用に作った物かもしれない。残 存している服の多くはお洒落着として内地にあった物が多いと思われるので、実際には厚手の物も多かったのかもしれない。また、この画像でもわかる様に袖の 裏地は薄く滑りの良い別の裏地が使われるケースが多い。この袖の裏地に関してはストライプの物が多いが、これは滑りの良い方向を示しているのか、単にデザ イン上の物なのか?興味があるが、この手の事に詳しい方がいらしたら是非とも御教示下さると幸いである。 |
今回は服のネームタグから3名の将官が検索に引っかかり、最終的に北村さんの御協力で個 人特定が出来た。以下に北村さんから頂いた情報の一部を転記し紹介しておく。 "B"で始まり"tt"が入る名前を持つ大将という条件を満たすのは、 Friedlich von Boetticher しかいません。ただ、タグの名前に "von" と来るべき文字が "H."と読めそうなのが課題ですね。また、綴りは"O"ウムラウトではありません。 |
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