このページでは、ドイツ陸軍の36年型野戦服を紹介します。
   
今回は、えっさいさんのコレクションの中から陸軍の36年型野戦服 (Feldbluse36)を紹介します。
   
各部のディティール
   



襟の裏地

この服の襟の裏地にはカーキ色の目の詰まったコットン生地が使われている。
野戦服の襟の裏地に関しては、服と同じウール地を使った物や、画像の様なコットン生地を使った物、更にもう少し後の形式の野戦服ではグ リーンのヘリンボン生地(夏季用被服や作業着に使われた生地)などを使った物もある。ウール生地を裏地に使用している場合でも、初期の物ではズボンに使わ れていたストーングレーの生地が使われていたりしていて、服と全く同じロットのウールが使われている事は少ない様である。これは襟は襟だけを分業で作る為 に生ずる物で、襟が服と同色になってからも裏地の色は若干異なっている事が多い。

脱着式肩章取付部

脱着式肩章を付ける為のボタンとループ。
肩章はこのボタンとループを使って取り付けられており、簡単に取り外しが出来る様になっていた。
しかし、陸軍の肩章は残存する物を見る限り、長さがかなり「まちまち」で、本来互換性があるべきと思われるが、何故かきちんとした規格 が無かったような感じがする。
この服のループには初期のズボン生地(ストーングレー)が使われているのに注意。

36年型野戦服のダーツ
 
胸の立体裁断の為に、脇から胸ポケットにかけてダーツが入れられているが、この部分はつまんだ生地が着心地に強く影響する為か、生地に 切れ込みが入れられている。
ダーツは脇とポケットに挟まれているので、外観上はあまり目立たない。
このダーツはウール生地を切断しているので、両脇に縫い目があるのに注意。
ベルトフック用ホール
 
ドイツ軍の野戦装備はウエストベルトを基本に装着する様設計されていた。
したがって、ウエストベルトが下がらない様に野戦服にも脱着式のベルトフックが前後4ヶ所に付けられていた。
写真はそのベルトフック金具を出す為のホールで、専用のミシンで廻りをかがってある。
ベルトフックと内蔵サスペンダー

ベルトフックは内蔵式のコットン製サスペンダーに付けられる様になっていて、服自体には負担をかけずに肩から背負う仕組みになっ ていた。
内蔵サスペンダーは服の裏地のスリットを通し、前後に下げられる様に装着された。
画像は内蔵サスペンダーにベルトフック金具を付けた状態で、実際に使用する際にはベルトフック金具を野戦服のホールから出し、内蔵サスペンダーをホールの 下方にあるフック金具で固定する。

ベルトフックと内蔵サスペンダー
 
この画像は使用状態を示す。
内蔵サスペンダーは厚手のコットンのベルト状の物で、肩に当たる中央部は巾が広く厚みも厚く、ベルトフック金具を付ける両端部は若干巾 が狭く厚みが薄く織られていて、前後に各々15個のベルトフック用ホールが設けられている。
これは服とは異なりフリーサイズで作られていた為で、通常は真中あたりのホールが使える様になっている。
内蔵サスペンダーとベルトフック金具

ベルトフック金具は約4mmのアルミ製針金を曲げて作った物で、内蔵サスペンダーのホールに通して装着する。
具体的には服のベルトフック用ホールの位置に合うホールの2ケ上のホールに金具を裏側から通し、2ケ下のホールから表側に再び出して装 着する。後は服のホールから金具を表に出せば取り付け完了である。因みに内蔵サスペンダーの長さは約1m、中央部の巾は44mm、両端部の巾は27mm で、ホールは13mm間隔に開けられている。

センターベント

ウールの野戦服は背中が一枚の布で作られている為、この部分は布を剥ぎ付けて作られている。
内側には裏地が付けられているが、ウールの生地自体は切りっぱなしの状態である。
また、背中の布も二重ステッチで縫い合わされているが、やはり生地自体は切りっぱなしになっており、まつり縫い等の処理は施されていな い。
この作り方は43年型野戦服までの全ての形式の野戦服に継承されていた。

裏地と腰ポケットの関係等
 
野戦服は素肌の上に着る服では無いので、裏地は服自体の強度を維持する目的が主な目的で、各ボタンやダーツやホール、ポケットの取り付 け部の裏側に付けられている。
腰ポケットは特に上端部と雨蓋に力が加わるので画像の様にその部分には裏地が付けられている。
画像左端に写っているのは包帯用ポケットで、陸軍の場合は43年型野戦服までの各形式の野戦服全てに同様のポケットが付けられている。
包帯用ポケット

これは、前線での応急処置用のファーストエイド(包帯)を入れる為に付けられたポケットである。
包帯は、防水のパッケージ(ゴム引きの布で作った袋)に入れられていて、更に説明が詳しくプリントしてある紙につつんである。120度で殺菌した上に消毒 液をしみこませたガーゼと包帯がセットになっている。

包帯
 
包帯は製造年や製造メーカーによって様々な物が作られていたが、野戦服のポケットに入れる物としては、2種類のサイズの物が作られてい た。
 
包帯に付いて興味のある方は、当HPの小物と生活雑貨等包帯と衛生用品を参照されたい。
サイズ表示スタンプ
 
この野戦服も包帯ポケットの上方に、この服のサイズを表すサイズスタンプが押されている。
一番上が服のメーカースタンプ。
サイズスタンプは3行で5カ所のサイズをセンチで表した物で、上段から、43:襟から腰 ・ 45:首廻り ・ 中段には、108:胸囲 ・下段に、71:着丈 ・666:袖丈となっている。
一番下のHは軍装補給廠の所在地名の略号で、39は1939年製造を表している。
   
バリエーション
  
36年型野戦服の改造について
 
33年型野戦服及び36年型野戦服の一部は、外出着として使用された場合にウエスト絞りの紐が取り付けられる場合があったが、このシス テムは1936年の3月31日に、公式には廃止された。ただし実際には1938年頃までの服にこの様な改造例を見る事がある。
当時から野戦服の修理や改造は結構行なわれており、この服もかなり修理や改造が行なわれている。
着丈を詰めた為、ベルトフック用ホールが腰ポケットと重なってしまっているのに注意。
  
   
ホームに戻る
資料 館トップへ

本サイトに掲載されている文章及び画像の 無断転載はお断りします。Copyright  2001  STEINER

29.Jan.2001 公開
28.Mar.2001 改 訂
inserted by FC2 system