はじめに
 
迷彩スモックはその作りの特徴から、1型、2型、3型に分類されているが、今回はその3 型を紹介する。3型迷彩スモックは1942年頃から生産され、その最大の特徴は野戦服に手を入れる為のスリットが廃止された変わりに、前面左右に腰ポケッ トが付けられた事だ。これに伴い胴回りのゴムより下の長さも1型の23cm、2型の18cmから41cmに変更されている。
   
3型 迷彩スモック
   
3型迷彩スモックの正面

「すずかけの樹Aパターン・迷彩番号5及び6番」を使用して作られたSS3型迷彩スモック。
正面から見ると左肩の裁断線(ツェルトバーンを作る時の為の物)から下、殆どが迷彩番号6番のパターンで作られている。
外観上は草や枝を通す為のループが全て失われている他、殆ど新品と言っても良いコンディションである。
左右の袖が途中で接がれているが、これは原反幅の関係である。

3型迷彩スモックの背面

こちら側は正面とは逆に襟刳り直下の裁断線から下、殆どが迷彩番号5番のパターンになっている。
この迷彩パターンの現れ方については後程同パターンのツェルトバーンの上に置いて見る事にする。
また、スモックのサイズだが袖から袖の長さは約1.9m、着丈は約0.9mでフリーサイズになっている。

   
ディティール
   
裁断線

SSの野戦服に被せた迷彩スモック。やはり野戦服の襟があると無いでは随分と印象が変わって見える。
ところで、左肩から脇にかけて斜めの線が見えるが、これがツェルトバーンを作る時の裁断線で、この線にそって裁断されたツェルトバーン はどの様な組み合わせでも模様が連続して見えるように作られていた。
ただし慢性的な原反不足の為、貴重な原反を無駄には出来ないという事情から、この裁断線を無視したツェルトバーンも多く作られていた。

腰ポケット

3型スモックの特徴の一つが腰にポケットが付けられた事であるが、このポケットは春夏側・秋冬側どちらからも使う事が出来るよう になっている。このスモックのポケットの雨蓋はスモック本体とは異なる生地で作られているが、SSの迷彩装備に良くある事で、この様な部品が細かい端切れ から作られていた事を示す物である。また良く見るとポケットの高さが左右で異なっているが、これもSSの被服全般に良く見られる事で、国防軍の被服ではあ まりこの様な事が無いのと対照的である。なお、ポケットの雨蓋は通常の野戦服と同じ金属製ボタンで止めるようになっている。

腰ポケットの内装

腰ポケットの中袋を引っぱり出して見ると内装の一部に「縁取りパターン(Dパターン)」が使われていた。元々このスモックは3型 であるので、1942年以降に作られた物である事は間違いないのだが、極初期から作られていた迷彩生地と1941年頃から作られた生地が同じスモックの パーツとして使われているのが面白い。このこ事から、様々な生地が被服工場に集められ、大きなパーツを裁断した残りで細かいパーツが作られて取り付けられ ていた様子が想像できる。また、ポケットの中袋は夏用の野戦服や、作業着などに使用したデニムで杉綾織の生地を使用した物も存在する。
ポケットの雨蓋の裏側も迷彩生地が使用されている事に注意。
画像左下に十字が見えるが、これは「すずかけの樹パターン(AとBパターン)の特徴で、ツェルトバーンを製造する時の裁断線、三角形の 底辺の1/4の位置(減反のセンター)を示す物である。

腰ポケットのボタン

今度は裏返して秋冬側のポケットを見てみると、ボタンの取付部分に丸い補強布(共生地)がついていた。(矢印の先の部分に見える のが補強布)。これは布地自体がリバーシブルプリントで一枚の布の裏表にボタンを付けたのでは、すぐに布の方が傷んでしまう為付けられた物で、秋冬側に付 けられている。
また、胴回りのゴムも秋冬側に縫い付けられた布製テープの中に入れられている。他のリバーシブルのSS迷彩装備同様、春夏側を中心に考 えた設計という事が出来るだろう。この春夏側が表という事については、まだ他にも例があるので徐々に見て行く事にする。

脇の下のスリット

迷彩スモックは基本的にはツェルトバーンと同じ防水布(帆布)で作られていて(この3型スモックでは機能を迷彩効果のみに限定し たヘリンボーン布地で作られたスモックも作られた。)、迷彩効果と同時に簡単な雨具としての機能も兼ね備えていた。この帆布は濡れると通気性が無くなる 為、脇の下には画像の様に通気用のスリットが設けられていた。これは雨天に限らず、袖口と胴回りにゴムが入れてあるこの被服を夏期などに着用する際には、 かなり有効だったと思われる。

胴回りのゴム

迷彩スモックはフリーサイズでかなりゆったりと作られているが、袖口と胴回りにゴムが入れられていて、サイズが調整される作りに なっている。胴回りのゴムは前後に分けて入れられていて、各々両端部で固定されている。これは生産性から考えても上手い方法で、片方が切れても全く機能を 失わないと言う利点もある。
写真を見ると、前後のゴム収納部がそれぞれ微妙に高さが異なっていて、独立した作りである事が判ると思うが、この高さは前後で揃ってい る物もあり、このスモックに於いてわざとずらしたのかどうかは不明である。
この画像にも脇の下のスリットが写っているが、やはりこれを見ても春夏側が表の作りになっている。

袖口

綿布の原反巾が130cmだったので、両袖の先端部は写真の様に継ぎ足して作ってある。この画像は袖の下面で縫い目があるが、上 面には縫い目は無い。(迷彩スモックの肩の部分は一枚の布を二等分に折った織り目の部分である。)継ぎ足した袖口に迷彩番号5がプリントされた布が使われ ていた。迷彩番号は原反の左右どちらかの隅の方にプリントされていたため、この様に袖口か袖のつなぎ目付近に見る事が出来る。ただし、袖口は継ぎ足して 作ってあるため、まれに異なるパターンの生地で作られた物が付けられている事もある。

 
秋冬側正面

この写真の両肩を良く見ると、偽装用のループが付けられていた痕跡が見える。これは、スモックのコンディションや糸を丁寧に取り 去った状況から見て、明らかに故意に取り外された事を示しているが、私は当時の兵が(このスモックには使用痕跡がある)擬装用ループを邪魔に感じて外した のでは無いかと考えている。また、この正面の写真を見ても、春夏側の生地が切断部の処理に出てきていているのがわかる。これはくどい様だがSSの迷彩装備 が春夏側を表と考えて作られた為で、多くのアイテムに共通した特徴である。ただし、極まれに例外も存在するが、その様な例外は私の知る限り末期に生産され た物にしか見ることが出来ない。

 
この迷彩スモックの使用痕跡

スモック正面の中央切り込み左上の方にイニシャルが書いてあるのが分かる。更に面白いのが画像では見えにくいが、実物を良く見る と×が縦に4つ書いてある。これは多分洗濯回数を記録したのではないかと言う事であるが、もしそうだとしたらこの話は結構興味深い。これら迷彩装備は洗濯 を繰り返せば当然色落ちしてしまうので、部隊によっては洗濯回数等を管理していた可能性も充分考えられるし、何らかの形で報告をしていた可能性もある。
あと、この下で説明する切断線がライトグリーンの地の上にはっきり見えている。これらはツェルトバーンになってしまうと、殆どが隠れて しまうので、この様な別のアイテムや裁断線を無視して作られたツェルトバーンを見ないと解らない事がある。そう言った意味でも今回面白かったのが、迷彩番 号5と6に関してはパターンが2種類存在すると言う説があるが、まさにそれを実証出来た事だ。今回6番のツェルトバーンも用意したが、この迷彩スモックと パターンを合わせる事が出来なかった。5番と6番が同一の版でプリントされている事を考えると5番と6番は少なくとも2種類のパターンが作られていた事に なるのだ。

ツェルトバーンとスモックの関係

同じパターンのツェルトバーンとスモックを重ねてみると裁断線の意味が良く解る。迷彩パターンが合う位置を捜すと、写真の様に なった。ツェルトバーンのセンターの縫い目とスモックの袖のつなぎ目が一致するばかりでなく、スモックの背中にあった裁断線がツェルトバーンの高さの 1/2の位置を示す物である事もはっきり確認出来る。(右上の矢印)ツェルトバーンのこの位置にはポンチョとして着用するためのスリットが設けられてい る。下の矢印はツェルトバーンにプリンとされた迷彩番号5の位置を示している。

   
SSの迷彩スモックはある意味SSのトレードマークと言っても良い物だが、現在 良いコンディションの物は非常に高価で数も少なく入手困難なアイテムになっている。また、最近では良質の資料も出版されてはいるが、その多くがモデルに着 用させた物で、細部についての紹介も無い。今回は細部も見たいというマニアにも満足してもらえる展示が出来たと自負している。
   
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このコンテンツを作るに際して貴重なコレクションを貸し て下さったKing-2の井上さんに感謝します。

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15.Jun.1999 公開
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