ここでは、戦時中のプライヴェート写真を軍装の観点から楽しんでみたいと思っております。
一枚の写真から・プライヴェート フォトを楽しもう!その12
  
 
はじめに
 
今回の”一枚の写真から”のお題は、兵舎の中で撮影された”おふざけ写真”だが、プライベートアルバムなどではこの様な写真を結構多く 見る事が出来る。一般的には冷徹な軍隊と言うイメージのあるドイツ軍ではあるが、これらの写真を見ていると時代や背景は異なるものの、兵士である以前に若 者である事が印象的に感じる。
また、これらの写真には普通の写真集などでは掲載される事の少ない兵舎の内部や野戦服の下に着るシャツ・下着やパジャマなどが写ってい るのも興味深い。
 
  
パジャマとシャツ
 
この写真は裏側に書かれているキャプションによると1942年に兵舎の中で撮影された物であるが、左側の兵士は野戦服の下に着用する シャツの襟を内側に折り込み、ウエストベルトと下士官・兵用制帽を着用、右側の兵は生成りのコットン地の作業着にパジャマのズボン(この画像では見えにく いが縦じまのプリント生地で作られている)・ジャックブーツに制帽とウエストベルトを着けている。
欧米では元来シャツは下着の役割を持っていたので、下半身を包むために丈が長めに作られていたが、この様な写真ではそれがはっきりとわ かる。
また、写真右の兵士は手帳の様な物を上着の中に差込んでいるが、これはシュピース(中隊付き下士官で、新兵などの面倒を見る役職。上着 の第2ボタンを外して手帳をいつも差込んでいる。)を真似ているのだろうか(笑)。
写真右後方に写っている兵士も制帽とベルトを着用しているが、靴下は1939年11月25日付け通達で採用になったグレーのニット製官 給タイプを履いている様である。なお、後方の二人はスリッパを履いているが、各種の靴以外にスリッパの写真は結構残っており、兵士もスリッパを日常的に使 用していた事がわかる。
パジャマと下着
 
この写真にはキャプションが無いので具体的な撮影日時はわからないが、M35スチールヘルメットを被っている事から1935年以降の撮 影である事は判る。
ただし銃剣などは旧式の物で2次戦タイプより長さが長い。左端の兵などは下半身に毛布を巻いて、背嚢を付けている。また、左端の兵と中 央の兵ではパジャマの柄が異なるのも興味深い。
あとの3人は官給の下着姿であるが、右端の兵士の下着は丈の短いタイプの様である。
拡大してみると
 
プライベート写真では、この様なおふざけ写真が結構あると書いたが、この様に小銃まで持ち出している写真も珍しい。大抵の写真は銃剣ど まりである(笑)。また下着がこの様に写っている写真は通常無いので軍装の観点から見ても決して侮れない写真である(笑)。下着のシャツに関しては丈の長 い物と短い物がある事は確認していたが、この様に同じ部隊で支給されていた事もわかり興味深い。
もう一枚
 
この写真は上の写真と同じ部隊の物であるが、やはりキャプションが無いので撮影時期がはっきりしない。やはりM35スチールヘルメット が写っているで1935年以降と言う事だけははっきりしている。また、この写真では2次戦型の銃剣が写っているので、上の写真より後に撮影された可能性が 高い。左から二人目の兵士のみM16/18スチールヘルメットを被っているが、古参兵なのであろうか(笑)?。右端の兵士はこの写真でも毛布をまとってい るが、余程毛布が好きなのだろう(笑)。
拡大してみると
 
この写真では全員が認識票を下げている。敬礼をしている兵士は柔らかい革製の認識票ケースを首から下げているが、この様なアイテムの着 用例の写真も結構珍しく、そう言った意味でもこの手の写真の資料的価値は低くない。ドイツ軍では下着としてのパンツは支給されておらず、シャツがパンツの 役割を兼ねているので、この様な写真は実際にはパンツ一丁でベルトとヘルメットを被っていると言うのりなのだろう(笑)。
参考資料
資料について
官給下着
 
生成りのコットンで作られた官給下着。
下着も年代やメーカーで様々なバリエーションはあるが、基本的には画像の様な長袖のシャツとズボン下がセットで支給されていた。
シャツの襟首は通常ボタン留めになっており、画像の物は紙製のボタンが二つ付けられている。
シャツは着丈の長い物と、画像の様に短い物があり、長い物の場合はパンツの替わりに下半身を包む役割を果たしていたが、この様に着丈の 短い物の場合は野戦服の下に着るシャツがその代わりの役割を果たした。
ズボン下は下半身を包んだシャツをおさえる様にシャツの上から着用し、更にその上にズボンを履く訳であるが、防寒だけでは無く、ごわご わのウール製のズボンで膝の裏側が擦れる事を防いだり、夏季には汗でズボンが足にまとわりつくのを防ぐ役割もあった。
認識票とケース
 
写真左が革製ケースに入れられた認識票で、右が皮紐を付けた認識票。
認識票はこの様に革製のケースに入れられたり、そのまま紐を通して首から下げられていた。
認識票は陸軍の場合は初期にはアルミで、後には亜鉛などの合金で作られた。
  
  
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04.Mar.2001 公開
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