このページでは、ドイツ軍のM 31ヘルメッ ト用ライナーを紹介します。
   
はじめに
 
ドイツ軍ではM16/18スチールヘルメットに続いてM35・M40・M42等のスチー ルヘルメットを開発使用したが、スチールヘルメットの内装、ライナーに関してはM31ライナーを使用し続けた。今回は、そのM31ライナーを紹介するが、 本コンテンツを制作するにあたり、08/15さんとオータさんのスチールヘルメットも使わせて頂いた。改めてこの両名に感謝の意を表します。
   
M31ライナー

1931年にドイツ軍は新設計のスチールヘルメット用ライナーを採用した。これは 革製ハンモックのタブの数が3つから平均8つに増えた事で簡単に識別できる。採用年でもわかる様、このライナーは第一次世界大戦時に採用になった M16/M18スチールヘルメットに使用された。1935年6月25日付けで新型スチールヘルメットが採用になったが、ライナーは引き続きM31ライナー が使われた。
写真のヘルメットは左右ともにM35スチールヘルメットであるが、後で詳しく紹介するが 改良型のM31ライナーが付けられている。
左のヘルメットはサイズが61cmの物でタブが9枚ある。

M31ライナー

M31ライナーは1945年の終戦迄、若干のマイナーチェンジは行なわれたものの 生産され続けた。
後で紹介するが、1944年に簡易型ライナーが採用されたが、本コンテンツでは、それも M31ライナーのバリエーションとする。
スチールヘルメットのシェルは60cm〜70cmまで2cmおきに6サイズが作られてい たが、M31ライナーは52cm〜63cmまで1cmおきに12サイズが作られ、適合するシェルに装着されて支給された。
この写真は左右共にM42スチールヘルメットであるが、右側のライナーの革製ハンモック には豚革が使われている。

 
M31ライナー
 
スチールヘルメットの内装:M31ライナーは基本的に金属製のライナーバンド(内・外の 二重構造)と内外のライナーバンドを固定する板バネ・フェルト製クッション・革製のハンモック・ハンモックとライナーバンドを固定する割ピン・チンスト ラップ等から構成されているが、スチールヘルメットのシェルには3本の割ピンで固定される様になっていた。
各パーツの紹介の前に、シェルとライナーサイズの関係を紹介しておく。
 
ライナーサイズ      シェルサイズ
 
  52・53           60
  54・55           62
  56・57           64
  58・59           66
  60・61           68
  62・63           70
 
上記のサイズ対応表の単位は全てcm
M31ライナーは生産時期によって多少作りが異なるバリエーションが存在するが、この ページでは最も生産数が多かった戦時型を例に各パーツを見ていく事にする。
 
M31ライナー
 
この写真は、M31ライナーを上から見た状態である。上の写真同様、右が前である。革製 ハンモックの縫い合わせ部は常に後方に位置する様に組み立てられている。(縫い合わせ部は当然裏側に縫い代が折返されているが、表面から触ってわかる様な 段差にはなっていない。)
革製ハンモックは、サイズによって異なるが平均8枚のタブを持つ一枚の革で作られてい て、タブの先端には紐を通す穴が、さらにタブの中央部には通気用の穴が各々5ヶづつ開けられている。
金属製のライナーバンドが二重になっており、それぞれの間に若干のクリアランスがとられ ている。なお、画像のライナーは1943年製の為、ライナーバンドは亜鉛メッキ鋼鈑で作られているが、1940年頃までのライナーバンドはアルミニューム で作られていた。
ディティール
 
ライナーバンド(外)と革製ハンモックの付いたライナーバンド(内)を分解した状態。外 側と内側のライナーバンドを別パーツにした理由は、外側のライナーバンドはスチールヘルメットのシェルとしっかり固定する為に、シェルとのクリアランスが あまり無い為、直接革製ハンモックを取り付けた場合、衝撃を吸収する性能に問題がある事と、柔らかい(薄い)内側のライナーバンドを板バネで外側のライ ナーバンドで固定する事で、ハンモックをより頭にフィットさせる事が出来る為であると思われる。
 
ディティール
 
これはライナーバンド(外)の写真であるが、このパーツは前述の様に、ライナーとシェル を固定する目的と、チンストラップを固定する目的がある。写真でライナーバンドの上方2箇所にチンストラップを取り付ける為の金具が付けられている。左方 にあけられている丸い穴がシェルの後部の穴から通された割ピンの為の穴で、右側に見える楕円形の2つの穴がシェルの左右の穴から割ピンを通す為の物。後部 の穴が正円なのは、センターの位置をはっきりさせる為で、これが楕円だとチンストラップが左右で位置がずれてしまう可能性がある。また、左右の穴が楕円な のは、シェルサイズに対応する意味とシェル自体が製造メーカーによって形状が異なる事に対応すると言う理由がある。なお、ライナーバンド(外)は極端な変 形を防ぐ為に上下に浅いリブがプレスされている。所々に見える凹みはライナーバンド(内)に付けられた板バネを通す為のスリットで、5箇所に設けられてい る。
 
ディティール
 
これはライナーバンド(内)とフェルト製クッション及び革製ハンモックの関係を示した画像。
革製ハンモックとフェルト製クッションは筒状の状態で縫いつけられ、画像の様に真鍮製割ピンでライナーバンド(内)に外側から固定され ている。割ピンは概ね5cm間隔で付けられており、このライナーでは12個使用されている。ただし1940年以前の割ピンはアルミ製で数も13個であっ た。
ディティール
 
革製ハンモックとライナーバンドを固定している真鍮製の割ピンの足のアップ。
この割ピンの足は極めて薄く、ヘルメットを着用した時に違和感を感じる事は全く無い。
ヘルメットを着用している限り、常に足が開く様に力が加わるので、外側から割ピンを刺す のは合理的な感じがする。
画像中央やや上方に板バネを固定しているアルミ製リベットの頭が見えている。
ディティール
 
ライナーバンド(内)とフェルトクッション付き革製ハンモックを分解した状態を示す。
写真左が金属製のライナーバンド(内)で、中央下方が革製ハンモックを固定する割ピン、 右がフェルトクッション付き革製ハンモックである。
革製ハンモックとフェルト製クッションは縫付けられている為、通常分解する事は出来な い。
ディティール
 
ライナーバンド(内)のアップ。
ライナーバンド(内)には画像の様に5枚の鋼製の板バネがリベット留めされており、これ をライナーバンド(外)のスリットに差込む事で両ライナーバンドは固定されている。
この板バネを差込む作業は、まず5枚の板バネ全てを同一方向のみ差込んで、反対側の板バ ネが差込みやすい様にライナーバンド(内)を回転させ、更に反対側の板バネの先端をライナーバンド(外)のスリット部に差込んだ後に、スリットとスリット の中央に板バネの取り付けリベットが位置する様逆回転させる事で完了する。
(今回は一応組み立て方を記載したが、ライナーの分解は割ピン等の破損の恐れがあるの で、ライナーバンドが極端に錆びている等の場合で、メンテナンスを必要とする時以外は原則としてはお奨めしない。)

 
ディティール
 
こっちはフェルト製クッションと革製ハンモックのアップだが、革製ハンモックの折返し部 (下端部)に、取付け用割ピンの頭の跡が残っている。また、丁度割ピンの跡の高さより少し上に縫い目が見えるが、これはフェルト製クッションと革製ハン モックを固定している縫い目である。フェルト製クッションは厚み約2mmのしっかりしたフェルトで作られていて、着用者の頭部を保護する役割と、革製ハン モックの折返し部が金属製のライナーバンド(内)に直接擦れて切れる事を防ぐ意味も兼ねている。
ディティール
 
これは、革製ハンモックの紐を通す穴の裏側のアップだが、写真の様に補強の為の円形の革 辺が膠で接着されている。
この部分が切れてしまうと、シェルとハンモックの間に適正な間隔を保つ事が出来なくなっ てしまう。写真は良く観ると、通気用穴が楕円形になっている物があるのが判る。これは使用している内に革製ハンモックが伸びた事を示している。
各パーツの関係
 
ここまで各パーツについて簡単に紹介してきたが、各パーツの関係がわかりにくいので、シェルとの取り付けや、M31ライナーのバリエー ションに移る前に図示してみた。
この絵の様に実物をカットして撮影すればもっと解りやすいかと思うが、それはどうか御容赦願いたい(笑)。
   
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07.Feb.2001 公開
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