このページでは、ドイツ空軍のM 35スチールヘルメッ トを紹介します。
   
はじめに
 
今回は、08/15さん所有のドイツ空軍のダブルデカールのM35スチールヘルメットを 紹介する。
第一次世界大戦後、軍備を厳しく制限されていたドイツ軍もベルサイユ条約破棄後、急激に 再軍備を押し進め、なまじ旧式な装備を大量に所持していなかった事が幸いして、近代的な軍隊を作り上げる事に成功した。その様な状況の中で、空軍も新たな 装備で出発する事になった訳だが、その中に当時最新式だったこのM35スチールヘルメットも含まれていた。
   
Stahlhelm M35
 
1935年6月25日付けで採用になったスチールヘルメットで、ライナーはM31ライ ナーを使用していた。
シェルの材質はモリブデン鋼を使用しており、60cmから70cm迄、2cmおきに6種 類のサイズの物が作られていた。
写真のヘルメットはSE( Saechsische Emailler-und Stanzwerke, AG Lauter)社製、シェルサイズ66cm、ライナーサイズ61cmで1939年製造。
通気用ブッシングの下に黒、白、赤、三色の国家章デカールが張り付けてあるが、これは 1940年3月21日付け通達で廃止された為、それ以降生産されたヘルメットには付けられていない。
ただし、既に生産されていた物や、支給されたヘルメットのデカールを剥がす事は規定され ていなかった為、在庫があるだけ支給、使用が続けられた。
Stahlhelm M35
 
軍種を表す”空軍タイプ国家鷲章”のデカールが貼られている側より見たところ。
ドイツ空軍のスチールヘルメットは、陸軍等とは異なり”LWグレー”と言う青味の入った グレーで塗装されていた。
写真では黒っぽく写っているが、パンツァーグラウよりは明るく若干青味も強い。塗膜自体 は半光沢なのだが、表面が平滑なので光りが当たると写真の様に反射してしまう。
空軍と言っても”地上師団”等を有する為、M40やM42スチールヘルメットでは、艶消 し効果の高い、砂状の物を塗料に混ぜて吹き付けたラフテクスチャーのヘルメットも生産されていた。
なお、ドイツ空軍でもパレードなどの礼装では、ヘルメットを着用するため、兵科に関わら ずスチールヘルメットは支給されていた。ただし、将校などではパレードの時に重たいスチールヘルメットでは無く、軽いアルミ製や樹脂製 (Vulkanfiber)の”パレード用ヘルメット”を着用している場合がある。
内装:M31ライナー
 
内装は金属製のライナーバンドとフェルト製クッション・革製のハンモック等から構成され ているが、このヘルメットのライナーは1939年製で、各金属部品にもアルミが多く使われている。
ライナーはいわゆる帽子のサイズと同じで頭にフィットさせる必要があるため、52cmか ら63cm迄、1cm刻みに12サイズが作られていた。
これも私見ではあるが、こうして見るとサイズ設定の中心は57cmと58cmである事は あきらかで、良く言われている程ドイツ人の頭が小さいとは思えない。実際には頭の形が上から見ると東洋人の方が円に近く、欧米人の方が長頭形の為、正面か ら見ると結果的に頭が小さく見える事、(勿論身長差から来る全体のバランスも重要なポイントである)更に残存するヘルメットや帽子等のサイズが小さい事 が、この様な説が一般的に流布されている主な理由と考えられるが、残存と言う事は使われなかった、若しくは売れ残っていると言う事を示す物でもあり、本来 は生産数で比較するべきだと考えている。
ヘルメットの縁の折り返し
 
写真で見るように、このヘルメットの縁は内側に折り返されている。これはM35とM40 スチールヘルメットの特徴でM42スチールヘルメットでは省略されている。これは、鉄板の切り口の処理と、補強を兼ねた設計ではあるが、工程的にはかなり 手数のかかる作業であった。写真で見るように、バイザー部とネックガード部をつなぐ曲線部分にもプラス皺等は全く無く、当時のプレス技術の高さが伺われ る。
メーカー及びサイズの刻印
 
これは上の画像の拡大写真だが、SE 66と刻印されている。
SEはSaechsische Emailler-und Stanzwerke, AG Lauterのコード、66はシェルのサイズ 66cmを表している。メーカーコード及びサイズの刻印は、殆どがこのヘルメットの様に左耳の位置又は真後ろのネックガード部に刻印されている。スチール ヘルメットの主要生産メーカーについてはメーカー比較のコンテンツで既に解説したが、どのメーカーが、どの軍(陸・海・空・SS)にヘルメットを納入して いたかについては、残念ながら資料を持っていないので判らない。もしもこの辺の情報をお持ちの方がいらしたら、是非とも御教授願いたい。
製造番号の刻印
 
ネックガードの真後ろの部分に数字の刻印があるが、これは製造番号である。
このヘルメットの場合は3783と刻印されている。
ライナーのサイズスタンプ他

ライナーの革製ハンモックの縫い目の脇に61のスタンプが確認出来る。これはライ ナーサイズ61cmを表す物である。なお、裏側にも61Baのスタンプがあるが、これは製造段階(皮を裁断した時)に押される物で、完成したライナーサイ ズとは異なる場合がある。と言うのもライナーのハンモックは縫い合わせ方でサイズを調整出来るため、大きめのサイズで裁断した物を縫い合わせ部の重なりを 大きく取って、生産した物もあった為である。なお、このライナーのハンモックには個人名と思われるUMIAUFと言う文字があるが、詳細は不明。

チンストラップ取り付け部
 
チンストラップは、この様にライナーのチンストラップ取り付け部の金具に付けられてい る。金具は金属製のライナーバンドにリベットで固定されているが、ここら辺の詳細に関しては、あらためてM31ライナーのコンテンツで紹介する事にする。 写真では紹介出来ないのが残念だが、このライナーは1939年に、BERLINのB&C社で作られた物で、ライナーバンドにはまだアルミが使われ ている。このライナーバンドは後に鉄製に変更されるが、アルミは柔らかいので、チンストラップ固定部分のみ二重になっているのが、この写真でも確認出来 る。なお、ライナーには66 n.A 61と、シェルとライナーのサイズの関係を示す刻印も打刻されている。
このヘルメットのデカール
 
これはドイツの国章で、黒・白・赤の3色旗を盾型にあしらった物だが、この様な盾型のデ ザインは古くから使われており、ハイデルベルクの学生牢等にも全く同様のマークの落書きを見る事が出来る。この国章は、陸・海・空の3軍共通のデカールで あったが、1940年3月21日に廃止され、それ以降のヘルメットには、軍種を表すデカールのみが貼り付けられた。コレクターの間では、この国章のあるヘ ルメットをダブルデカールヘルメット、軍種を表すデカールのみのヘルメットをシングルデカールヘルメットと言って区別している。ダブルデカールヘルメット は前記の様に1940年3月21日以前に生産された物のみの特徴のため、M42スチールヘルメットには軍種のみのデカールが貼られていた。
このヘルメットのデカール
 
こちら側は、空軍を表す鷲章のデカールである。
この軍種を示すでデカールも1943年8月28日には廃止されてしまい、全くデカールの 無いヘルメットも生産されたが、デカールが既に貼ってあるヘルメットはそのまま支給され、既に支給されていたヘルメットも使用され続けた。 余談ではあるが、このデカールの上にあるのが、通気用ブッシングで、これが別部品で作られているのが、M35スチールヘルメットの外観上の最大の特徴であ る。これがM40以降のヘルメットではプレスの一体成形に変更される。また、デカールの左側に写っているのが、シェルとライナーを固定するピンで左右と後 ろの3カ所にある。このピンにもIKA39と、メーカー、製造年を表す刻印が打刻されている。
チンストラップ
 
全体を写すと小さくなってしまうので、今回はライナーに取り付ける部分のクローズアップ を紹介する。写真で見る様に、チンストラップは、アルミ製のピンで簡単に脱着が出来るように作られていて、切れたらすぐに交換出来るようになっていた。こ のストラップも他の多くのドイツ軍装備同様、肌に触れる面に皮の表面が使われている。チンストラップは物凄くバリエーションが多いが、このストラップには 13個の長さ調節用の穴があけてある。また、LBAと言う刻印が確認出来るが、BAはBekleidungs Amt:被服検定の意で、LBA は空軍被服検定を表している。
   
今回は当掲示板でもお馴染みの08/15さんの所有する、ドイツ空軍のダブルデ カールのM35スチールヘルメットを紹介させて頂きました。細部まで見ると極めてコンディションの良い逸品ですが、ライナー等は外すと価値が下がってしま うため、刻印等は撮影出来ませんでした。と言っても私は隙間から覗いて堪能させて頂きましたが・・・(笑)。この場であらためてコレクションを貸して下 さった08/15さんに感謝の意を表します。
   
   
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04.Mar.2000 公開
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