このページでは、ドイツ陸軍のM 42スチールヘルメッ トを紹介します。
   
はじめに
 
今回は、ドイツ陸軍のシングルデカールのM42スチールヘルメットを紹介する。
1935年に採用されたM35スチールヘルメットも、戦争が始まるとその他の様々な装備 類同様に、その生産性の向上が計られてM40スチールヘルメット、M42スチールヘルメットと省力化された。機能を出来るだけ損なわず生産性を重視したと 言う意味では最も進化したヘルメットであるはずだが、戦後間もなく作られた西ドイツのスチールヘルメットが再びM40に近い作りになっているのも極めて興 味深い。
  
 
M42スチールヘルメット
 
1935年に採用になったM35スチールヘルメットは1940年に通気ブッシングが簡略 化され、更にそのシェルの縁を内側に折り曲げる工程を止め、省力化したのがM42スチールヘルメットで、その採用は1942年4月20日であった。シェル の縁を内側に折り曲げていたのは、鋼鈑の切り口の処理と補強リブの役割を兼ねていた訳であるが、M42では縁を外側に4mm残す事で補強リブの役割を兼ね ている。
写真のM42スチールヘルメットには軍種を表すデカールが付けられているが、1943年 8月28日付け通達で軍種別デカールも廃止される。
ヘルメットの変遷に関してはM35・M40・M42ス チールヘルメットのコンテンツを参照されたい。
写真上:正面から見たM42ヘルメット。
シェルの縁が外側に折り曲げられているのに注意。
 
写真下:後方から見たM42スチールヘルメット。
写真上:このヘルメットは1943年製で あるが、8月28日の通達前に作られた物で軍種のデカールが付けられている。
 
写真下:陸軍のヘルメットではこちら側にデカールは無い。
M42スチールヘルメット
 
上方より見たM42スチールヘルメット。
このヘルメットは最も長頭形のヘルメットを生産していたNS社製の物。
M42スチールヘルメットのシェルはM40タイプより更に簡略化を計られてはいるが、サイズに関しては今までの物同様60cmから70cm迄、2cmおきに6種類のサイズの物が作られていた。こ のM42ヘルメットはラフテクスチャー仕上げで、塗料に砂状の物が混入されているが、通常のフラットな塗装の物も生産されていた。ただし1940年3月21日に制定されたブラックグリーンの塗料は半光沢でM35スチールヘルメットの初期に塗装されていた アップルグリーンの様に艶は無い。
 
M42スチールヘルメットのライナー
 
このヘルメットにも、1931年採用のM31ライナーが付けられている。M31ライナー は生産時期によって改良が加えられ終戦まで使用され続けた。
M31ライナーは金属製のライナーバンドとフェルト製クッション・革製のハンモック等か ら構成されているが、このヘルメットのライナーは1943年製で、各金属部品にも鉄が多く使われている。
ライナーはいわゆる帽子のサイズと同じで頭にフィットさせる必要があるため、52cmか ら63cm迄、1cm刻みに12サイズが作られていた。
M31ライナーの詳細に関してはM31ライナーのコ ンテンツを参照されたい。
デカール
 
M42スチールヘルメットは、1940年3月21日に既に国章のデカールが廃止されてか ら採用されたため、軍種を表すデカールのみが貼り付けられた。ただし前述の様に、この軍種を表すデカールも、1943年8月28日付け通達で廃止された。 このヘルメットには1940年採用の陸軍用デカールが貼られているが、デカールは有機溶剤で塗装に溶着してある。
デカールのバリエーションに関してはヘルメットのデカールの コンテンツを参照されたい。

 
刻印
 
これはネックガード部(真後ろ)の刻印の拡大写真だが、NS 66・D339と刻印されている。
NSはVereinigte Deutsche Nickelwerke, AG Schwerteのメーカーコード、66はシェルのサイズ 66cmを表している。D339の方はシリアルナンバーである。メーカーコード及びサイズの刻印は、殆どがこのヘルメットの様に左耳の位置又は真後ろの ネックガード部に刻印されている。メーカーコードに関してはスチールヘルメットのメー カー比較のコンテンツを参照されたい。
M31ライナー
 
写真では紹介出来ないのが残念だが、このライナーは1943年に、B&C社 LITZMANNSTADTで作られた物で、ライナーバンドは鉄製である。
なお、ライナーバンドには66/59と6n.A/59と、シェルとライナーのサイズの関 係を示す刻印も打刻されている。
66はシェルサイズ、59がライナーサイズである。
M31ライナー
 
このヘルメットのライナーの革製ハンモックは豚革製であるが、通常の革製ハンモックと同 様革の表面が頭部に触れる側に使われている。
写真はヘルメットの後部を写したものであるが、通常革製ハンモックは、この様に後部で縫 い合わせてある。接合部を見ると型抜きされたハンモックのタブのパターンが中途半端な形状になっているが、これはサイズにかかわらず同じ型で打ち抜いて生 産していた事を示している。
M31ライナー
 
M31ライナーとシェルは両サイドと後部の割ピンで固定されているが、この角度から見る とシェルとライナーのクリアランス等が良くわかる。
またライナーの頂部の紐でヘルメットを被る深さが調節出来るのもこの画像で理解できるだ ろう。写真でライナー固定ピンの上、革製ハンモックの折り返し部分にも割ピンの頭が見えているが、これはライナーバンドとハンモックを保持する割ピンの頭 である。
M31ライナーの革製ハンモック
 
ライナーの革製ハンモックの裏側の縫い目の脇にBa60のサイズスタンプが確認出来る。
この裏側のスタンプは必ずしもライナーサイズとは一致しないが、これは60cmまでのハ ンモック用であると言う意味で、皮製ハンモックを生産した工場で押したスタンプだからである。事実このライナーのサイズは59cmで仕上げられている。
M31ライナーと通気ブッシング
 
これはスチールヘルメットの通気ブッシング部をライナーの革製ハンモックをめくって内側 から見た状態。
写真の上の方に写っているのはフェルト製クッションと鉄製のライナーバンドである。
こうして見るとシェルの通気ブッシングがプレスの一体成形である事が良くわかる。
M31ライナーとチンストラップ
 
チンストラップは、この様にライナーのチンストラップ取り付け部の金具に付けられてい る。金具は金属製のライナーバンドにリベットで固定されているが、ここら辺の詳細に関しては、M31ライナーのコ ンテンツを参照されたい。チンストラップは非常に多くのメーカーで作られており、バリエーションも様々あるが、このチンストラップはライナーのハンモック 同様豚の革が使われているのが珍しい。因みにこのチンストラップのバックルも鉄製であるが、これが戦時生産タイプの標準である。
チンストラップ取り付け部
 
このヘルメットのライナーは1943年製の為、チンストラップ取り付け部も後期型の作り で鉄製の針金を曲げた金具が使用されている。写真で見る様に、チンストラップは、アルミ製のピンで簡単に脱着が出来るように作られていて、切れたらすぐに 交換出来るようになっていた。このストラップも他の多くのドイツ軍装備同様、肌に触れる面に皮の表面が使われている。このストラップは長さが470mm で、巾は15mm、13個の調節穴が開けられている。
チンストラップのメーカー刻印
 
これはチンストラップのバックル金具が付いていない方の先端部のアップ画像であるが、こ の様にメーカーと製造年が打刻されている。四角に囲まれた刻印の最上段にはWilhelmと見えるが、2段目以下が今一つはっきり判読出来ない・・・。
3段目はBielefeld(?)と見えるが、通常はメーカー所在地を示す地名の場合が 多い。
四角の刻印の下には製造年の1941が打刻されている。これら製造メーカーを表す刻印の 多くは1942年頃からはRB.Nr(国家工場番号)と言うシステムに変更され、数字のコードが使われる様になった。
   
   
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24.Apr.2001 公開
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