このページでは陸軍のM35スチールヘル メットを紹介します。
   
はじめに
 
今回はPucki氏のコレクションの中から、ドイツ陸軍のM35スチールヘルメットを紹 介する。ドイツ軍のスチールヘルメットと言うと、フィールドグレーにダブルデカールと言うイメージを持っている方も多いかと思うが、実はフィールドグレー の塗装でダブルデカールのヘルメットは生産期間が極めて短く、現在コンディションの良い物を見る事は非常に難しい状況である。
このコンテンツではヘルメットの塗装色にフィールドグレーが採用される前のアップルグ リーンの逸品を紹介するが、この様な取材を快諾して下さったPucki氏に改めて感謝の意を表します。
   
M35スチールヘルメット
 
新生ドイツ国防軍の誕生と共に軍装・装備がかなり変更されたが、スチールヘルメットも今 までのM16・18ヘルメットに代わり新型軽量型M35が採用された。
M35スチールヘルメットの採用は1935年6月25日でデカールも同年8月には新 型の転写式の物が採用された。材質はモリブデン鋼、シェル(外装)のサイズは60cmから2cmおきに70cmまで、M31ライナー(内装)は 52cmから1cmおきに63cmまで作られた。陸軍のM35スチールヘルメットは当初艶のあるアップルグリーンに塗装されていたが1940年1月27日 付け通達により、艶消しのフィールドグレーに塗装される事となった。
M35スチールヘルメット
  
このヘルメットは初期のアップルグリーンの塗装を施された物で、ライナーも1938年以 前に生産された物が使われている。
このヘルメットのシェルは、外観上は最も角張った感じのシルエットを持つ Emaillierwerke, AG Fulda社製でサイズは57cm(シェルサイズは64cm)。
1939年に本格的に戦争が始まり、M35スチールヘルメットの生産性を向上させる為 に、1940年3月26日より新型ヘルメットが採用され、M35タイプの生産は順次M40スチールヘルメットに切り替えられた。
 
M35スチールヘルメット
 
これはM35スチールヘルメットを上から見た画像であるが、この様に塗装が良く残った初 期のヘルメットは現在なかなかお目にかかる事が無い。
アップルグリーンの塗装は当初光沢があったのであるが、流石に艶はかなり失われており、 半光沢の状態になっている。
当初はヘルメットを磨くワックスの様な物もあったとする資料があるが、これについては詳 細がわからない。もしも詳細を御存知の方がいらしたら御教示願いたい。
M35スチールヘルメット
 
下から見たM35スチールヘルメット。
 
ライナーの革製ハンモックも極めて状態が良く、あまり使用されていない様にも見える。
シェルの後頭部に使用者の部隊・階級・氏名が記入されているが、これは戦前のヘルメット には良く見かける特徴である。具体的資料は見ていないが、これも防諜上の理由から戦争が始まってからのヘルメットには行なわれていない様である。
通気ブッシングとデカール
 
これは、M35スチールヘルメットの特徴である別パーツになっている通気ブッシングと、 右側の国家色のデカールを写した画像であるが、通気ブッシングはM40スチールヘルメットからはプレスで一体成形に変更される。また、この国家色のデカー ルは1935年3月22日採用された物で、1940年3月21日付けで廃止された。したがって、国防軍のM35スチールヘルメットには生産時に全てこのタ イプの国家色のデカールが貼られていた事になる。
デカール
 
これは1940年3月21日付け通達で採用になった国家鷲章で、1943年8月28日付 け通達でヘルメットのデカールが全て廃止されるまで使用され続けた物である。本来であれば、国家鷲章のデカールは輪郭線の薄い1935年タイプが貼られて いたと思われるが、これはおそらく生産時のデカールの補修の為に1940年以降に貼られた物と思われる。この様なデカールの補修は特に初期のヘルメットで はよく行なわれている。
シェルの縁の折り曲げ加工とメーカー・サイズ刻印
 
M35スチールヘルメットは、M40スチールヘルメットと共にシェルの縁は内側に折り曲 げ加工が施されていた。このヘルメットでは左のチンストラップ取り付け部の下にヘルメット製造メーカーのコードとサイズが打刻されている。またライナーバ ンドもアルミ製で、チンストラップ取り付け部も初期型の特徴の角型金具が使われている。
メーカー・サイズ刻印
 
これはメーカー・サイズ刻印のクローズアップであるが、E,F,は” Emaillierwerke, AG Fulda”社を表し、64はシェルのサイズが64cmである事を示している。この”Emaillierwerke, AG Fulda”社のメーカーコードはE,F,の他にF,S,があったが、ヘルメットの生産各メーカーコードに興味のある方はスチールヘルメットのメーカー比較の コンテンツを参照されたい。また、シェルサイズが64cmと言う事はライナーサイズが56cmか57cmである事を示している。このシェルとライナーのサ イズに関しては既にM31ライ ナーのコンテンツで紹介している。

 
所有者の氏名と所属部隊
 
このヘルメットは支給された兵の階級と名前と所属部隊が記入されている。
上段のFeldw,はFeldwebelの略で曹長、Dalichauが名前で、下の段のStab25.Divはこの曹長が陸軍第25 歩兵師団の司令部付き曹長であった事を示している。この師団は1936年4月1日に Ludwigslustで編制され、ポーランド戦、ベルギー・フランス、1941年にはバルバロッサ作戦南方軍集団の所属で参加し、中央軍集団に移ってモ スクワ前面まで進出、ブリヤンスク・スモレンスクと後退戦を戦い抜いた後、本国で再編制と給養を取り、最後はヴァイクセル軍集団に所属し、オーデル河で防 衛戦を戦っている。
製造番号
 
シェルの後ろには20446とシリアルナンバーが打刻されているが、スチールヘルメットのシリアルナンバーに関する資料は今のところ詳 細は発掘されていない様である。
今後これらのシリアルナンバーの資料をドイツの公文書館等で探してくれる研究者でもいると嬉しいのであるが、納入先などが公開されると 泣きを見るコレクターも多いかも・・・(笑)。
M31ライナー
 
このライナーは1938年2月8日付け通達(WKrV 38 ,No.154)以前に作られた初期型のライナーである。
シェルとライナーの隙間からのぞいただけでは、刻印が確認出来ないので具体的製造年や メーカーはわからないが、極めてコンディションの良いライナーである。ヘルメットのシェル自体がM35なので、1935年以降に作られたライナーを使って いる可能性が高いが、チャンスがあれば1934年以前に作られた、刻印が製造年を反映していない極初期生産のM31ライナーを見てみたいものである。
このキャプションが意味不明で解り難いと言う方はM31ライナーのコンテン ツを再読されたい。
M31ライナー
 
これはライナーのハンモックの縫い合わせ部とサイズスタンプを撮った画像であるが、丸に囲まれた57がこのライナーのサイズである。
革製ハンモックのつなぎ目のステッチが、タブの先端の方まで縫われているのも初期型のライナー以外ではあまり見かけない様であるが、具 体的な説明をしている資料は未見。
M31ライナーのチンストラップ取り付け部
 
前述の様に、チンストラップの取り付け部の金具は、1939年まではこの画像の物の様にアルミで作られており、形状も角張っている。
1940年以降は太い鉄製の針金を曲げた物に変更されたが、在庫はそのまま使用された為1940年製ライナーにはこのアルミ製金具を使 用したライナーが存在する。
   
   
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25.Mar.2001 公開
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