このページでは、ドイツ空軍の将校用制帽を紹介します。
   
はじめに

第一次世界大戦後、ドイツは航空兵力の所有を禁止されていたが、ベルサイユ条約破 棄と共にドイツ空軍が新設された。実際には様々な形で将来空軍を編成するための準備は行われていたが、その中にDLV(航空スポーツ協会)があり、制服等 もその影響を強く受けている。
今回は、その様な服装の中から、空軍将校用制帽を紹介する。この帽子は空軍用M35ス チールヘルメットと同じく、08/15さんのコレクションを借用した。また、キャプションに関してはマイスターシュミットの全面的協力を頂いた。

   
将校用制帽

1935年にDLVの制帽から派生し(帽章が異なる)、採用当時から将校は銀パイ ピング・徽章、将官は金パイピング・徽章を採用していた。(陸軍は当初将官も銀パイピングであった。)

写真の物は銀パイピングを付けた将校用(少尉から大佐)の制帽で、有名な帽子メー カーEREL : エレール社で1937年以降に作られた物である(帽章より判断)。

下士官・兵用制帽
 
これは将校用制帽と比較するために掲載した画像だが、外観上の相違点としては、徽章が金 属製(この制帽ではアルミ製)である事と、兵科色の縁取りがある事、チンストラップ(顎ひも)が革製のバンド状である事があげられる。

ちなみにこの下士官・兵用制帽は兵科色が赤なので、対空砲兵: Flakartillerieの物である。

正面より
 
全体的に丸みを帯びたデザインの、いかにもエレール社らしい作りの制帽で、大変良い制帽 である。
なお”EREL”の商標は E ”R” E ”L” ということで”R”obert ” L”ubstein 会社・個人名から来ていると思われるが”E”の文字の意味が不明。
制帽も年代によって使われる素材等に変化があるが、この帽子に関しては両脇のチンコード (顎ひも)用ボタンが真鍮にシルバーの塗装の物を使っている事、チンコード自体が細い方を使用している事等は戦前の物の特徴だが、スウェット革が後期型な ので製造は戦前ではない可能性が大きい。。
ちなみに、チンコード用ボタンは35年頃はNEUSILBER製、その後アルミとなり戦 中は銀塗りの亜鉛製もある。
それにしても、帽子自体の形と言い、帽章の取り付け位置ののバランスと言い、とてもかっ この良い帽子である。
帽章
 
この帽子の帽章は画像の様にモール刺繍で作られているが、これは空軍将校の場合は標準的 な仕様である。
写真左上が空軍用国家鷲章:Hoheitszeihen 。飛んでいる鷲の尾が下向きの物(ダウンテール鷲)が、初期型(35年型)、これは1937年4月1日に採用になった後期型である(37年型)。
写真上及び左は空軍制帽用国家章:Reichskokarde u. Eichlaubkranz fuer die Schirmmuetze
Reichskokardeとは、帽章のセンターにある赤・銀(白)・黒の三重丸のマー クの事で、ドイツ国旗の赤・白・黒をデザイン化した物である。またそれを囲む様に配置してあるのが樫の葉で、これは樫がドイツの国樹であることに由来す る。
それぞれ国家鷲章はLWグラウ地、コカルデ&リースは黒地に刺繍されている。
内装
 
この帽子の内装にはレーヨン(人絹ツイル)が使用されている。(他に天面人絹サテン等を 使用した物もある。)シールド(セルロイドのラベル)はネームポケットのない型で、この帽子を販売していた空軍購買部と製造メーカー”エレール社”の文字 がプリントされている。シールドの詳細についてはアップの写真のところで紹介する。
また、この制帽は下から見ると写真の様に横に広がった感じがするが、これはバイザーが広 がろうとするのに負けた為で、一種の経年変化である。
あと、制帽の場合、トップにピアノ線を入れて形を整えている物が多いが、この帽子の場合 は、シルバーのパイピングの芯材が弾力のある樹脂製で、帽子の形を整える作りになっている。
この方法はピアノ線を入れた帽子に比ベ大変柔らかいラインを出す事が出来、厚めのパット と共に特徴的な帽子となっている。ただしこの方法にも、形が良い反面帽子自体の重量は重くなると言う欠点はあった。
バイザー
 
バイザーは3ミリ厚の革製と1.2ミリ厚のファイバー製があり、(革製は37年に廃止さ れたという説もある。)レギュレーションによるとバイザーは両面黒ということになっているが、実際にはグリーンにチェックプレスのものが多い。この帽子に 使われているバイザーはバルカンファイバーと言う樹脂製の物で、縁取りが縫いつけられていないタイプだが(一番上の、下士官・兵用制帽のバイザーには縁取 りが縫いつけられている。)、EREL社製の制帽にはよくあるタイプである。
この写真にはスエットも写っているので、ついでに見ると、額の部分に通気用の穴があけら れているのがわかる。この様なパーツ類は各製造者が様々なパテントを取っているケースがあり、このスエットもEREL社がパテントを取っている。
セルロイドのシールド

トップの内装に縫いつけてあるセルロイドのシールドには、
Verkaufs Abteilung der Luftwaffe Berlin SW68
Puttkamer ster.16/18 EREL(組文字のロゴ)
Sonder klasse Privat等の金文字がプリントされている。

空軍購買部ベルリンSW68
プットカマー通り16/18
「エレールゾンタークラッセ」(ここまでがおそらくブランド名)
”Privat”(これが帽子の等級)
「空軍購買部」と「エレール」のダブルネームものでありエレール社取引先の大量販売店舗 用のものの多くはダブルネームになっている。(個人店とのダブルネームも存在する。)
 
なお同購買部ではエレール社のものの他にクレメンス ヴァーグナー社製のダブルネームも のも販売されていた。

メーカースタンプ
 
スエット皮にEREL  STIRNSCHUTZ  PATENTの文字が金で入れられている。
同社のキャッチフレーズとしては「特許 いつまでも額を締め付けないエレール式」といっ た感じだろう。
スウェットのロゴが”Erel” Stirnschtz D.R.G.M.D.R.P. angem.と斜めに入っているのが前期型スウェット、EREL STIRNSCHTZ PATENTと水平に入っているのが後期型スウェットと思われ る。
額を守る。バイザーの付け根で締めつけず、おでこにあとを残さないようにするというのが 当時の帽子屋の課題だったようで、エレールの以外のメーカーもこれを研究しPekuero− Peter Kueper Wuppertal-Ronsdorf社も違った方法で特許を取得していた。
エレール方式とはバイザー直下のスウェットバンドにフェルトを構成して主にソフト感と、 そして吸湿性を持たせる方式である。
サイズ調整
 
スエットをめくってみると、後頭部の部分に新聞紙が折り畳んで入れてあった。三カ所ほど 簡単に糸で止めてあるが、これはおそらくサイズ調整の為に入れた物であろう。(ただ単に挟み込んだだけの物もある。)この様なサイズ調整方法は、将校用制 帽では珍しい事では無いが、適正なサイズが無かったのか、はたまた被り心地が良いように、敢えてこの様な方法を採ったのかは不明。このサイズ調整に使われ ている新聞紙を広げれば、もしかすると製造年等を知る手がかり等が含まれているかもしれないのだが・・・。
スエット皮に空けられている通気穴
 
スエットには帽子の中が蒸れない様に、額の部分に通気用の穴が空けられている。
有名なエレール式ベンチレーションシステムはこれとは別の話であるが、同社の付加価値 「その2」でありこちらは特殊なコカルデ章や記章を通して通気して汗びっしょりにならないようにする方式の事である。
なおエレールのスウエット革の額部は細かい穴と大きな穴があるが、これはベンチレーショ ンシステムの「一部」と考えられる。
ベンチレーションシステムはエレール式の他にも他社によるフリッシュルフト式がある。
   
今回は当掲示板でもお馴染みの08/15さんの所有する、ドイツ空軍の将校用制 帽を紹介させて頂きました。また、写真のキャプションに関しては京都のschmiditさんの協力を頂きました。この場であらためてコレクションを貸して 下さった08/15さんと、豊富な知識を提供して下さったschmidtさんに感謝の意を表します。
   
   
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17.Mar.2000 公開
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