このページでは、武装親衛隊の後期型略帽を 紹介します。
   
はじめに
 
今回はSS将校用39年型略帽を紹介するが、この略帽は39年型略帽の中でも初期の生産 型と思われる。当コンテンツを制作するにあたり、この大変コンディションの良い略帽を貸して下さったKing-2の井上氏とキャプションに貴重な助言を下 さったschmidt & Sohnのschmidt氏に感謝の意を表します。
   
SS39年型将校用略帽
 
当初武装親衛隊の将校には規格の略帽がなっかたため、陸軍のM38略帽等の流用が多く見 られたが、1939年12月12日、この将校用新型略帽が採用されそれらの問題は解消した。実際には陸軍型略帽を被り続けたSS将校も少なくなかった為、 1941年頃の写真では陸軍型略帽の着用例を多く見るが、例外はあるものの徐々にSS型略帽に買い換えられた様である。ただし、SS将校の中には正規軍で ある陸軍に対する一種のコンプレックスの様なものを持っていた者もいる様で、陸軍型の被服等を好む傾向もあった感がある。
混在する将校用略帽
 
これは1941年の東部戦線、SSドイチュラント連隊の写真だが、制帽、SS初期型略 帽、陸軍型略帽、SS後期型略帽などが混在しているのがわかる。

SS39年型将校用略帽
 
1939年12月12日に採用になったこの新型略帽は、空軍の略帽に良く似た流線型の カットで、帽章にはBEVOタイプの新型帽章が使用された。
 
採用当初には、兵科将校の場合正面の髑髏章を囲うように兵科色の山形が付けられていた が、この兵科色は1942年の9月には廃止された。
ただし、この略帽に関しては、帽子のカットやパイピングの処理、裏地のコットン生地等か ら見て、1942年以降の物とは考えにくく、1940年頃までの初期に作られた物の様である。
生地はフィールドグレーのトリコットを使用しており、折り返しのトップにはシルバーのパ イピングが縫いつけられている。
上から
 
こうして上から見ると、この手の略帽が”Schiffchen:船型帽” と渾名されていた理由が良くわかる。この将校用略帽は既に紹介した下士官・兵用略帽とは異なり、トップが開かない様にしっかり”しつけ”がされている。
内装とスタンプ
 
この略帽の内装には初期の野戦服の裏地に使われていた様な厚手のグレーのコットン生地が 使われている。薄いレーヨン生地を裏地に使った略帽と比べると、帽子自体がかなりしっかりした感じである。また、この略帽にはメーカースタンプ等は無く 56と言うサイズスタンプのみが押されている。
SS将校用国家鷲章
 
これはSS独自のデザインの国家鷲章で、袖に付ける鷲章の縮小版である。これは将校用の 為、アルミ糸を使用して作られている。この鷲章は略帽の他に規格帽やクラッシュキャップ、制帽等にも使われていたが、実際には下士官・兵用の国家鷲章と髑 髏を付けた将校用略帽や規格帽等も作られていた。
正面より
 
SS用国家鷲章と髑髏章は黒糸を使用し、手縫いで付けられている。折り返し部の上端は将 校を表すシルバーのパイピングが付けられているが、ダブルロックミシンで縫われており、折り返したフィールドグレーのトリコット生地のまつり縫いも兼ねて いる。SS用国家鷲章や髑髏章は、将校用略帽だけあって、BEVOタイプのベース部分から丁寧に折り返してあり、黒の縁取りが綺麗に出ているのが印象的で ある。
 
SS用髑髏章
 
BEVOタイプの国家鷲章及び髑髏章はいくつかのバリエーションが確認されているが、髑 髏章の方は髑髏自体の大きさにも大小の差がある物があり、この画像の髑髏は小さい方の髑髏章である。これは1942年9月に兵科色が廃止されたのに伴い、 若干大きめの髑髏章が作られたためと思われる。髑髏章も国家鷲章同様に将校用のアルミ糸を使用した物が作られていたが、この略帽には下士官・兵用の髑髏章 が付いている。(これは実際には良くある事で不自然な事では無い。)
トップのパイピング
 
トップと側面を構成する布の間には、共生地で作られたパイピングが挟み込まれているが、 画像でわかる様にパイピングはトップの端部で右側のパイピングが上に重なる様に始末されており、正面からは1本に見える様に作られている。これはデザイン 的な問題以上に、パイピングが額に当たる部分にまであると、被り心地が悪くなる為の配慮と思われる。これに関しては、折り返しをめくった状態の画像を下方 に掲載するので、そちらを参照願いたい。
トップのパイピング
 
後部でも前面同様にトップのパイピングは右側を上に重ね、処理されている。また、折り返 しのトップに付けられている、将校用のシルバーのパイピングが後ろ側のセンターで継がれているのに注意。これもまた右側のパイピングが上に重なる様に処理 されており、他のパイピングの納まりと合わせてある。トップのパイピングは布地の繊維方向に対して斜めに裁断して作ってあり、一見”よりひも”の様に見え る。
略帽本体と側面折り返し部の取り合い
 
この略帽を正面から見ると、帽子本体とおり返し部分でセンターがづれているのがわかる。 これは下士官・兵用略帽のコンテンツでも書いたが、SSの略帽にはよくある事ではあるが、前後部に布の折り返しが集中して縫いにくいためにづれてしまった か、敢えてづらして縫い合わせた物で、本来このようにデザインされた訳では無い。また将校を表すシルバーのパイピングの取り付け方や、本体下部の周囲に施 された縫い目に注意。
略帽本体と側面折り返し部の取り合い
 
写真の様に折り返し部をめくると、本体部と折り返し部のセンターがづれているのがはっき り確認出来る。また、パイピングが途中で本体の中に入れられ、頭に当たる部分では無くなっている。これに付いては前述の様にパイピングが本体下部まである と、帽子を被った時に額と後頭部に裏側の縫い代が当たって、被り心地が悪くなる為の配慮と思われる。
トップ
 
37年型略帽までは一枚の布で作られていたトップは、二枚の布で作られる様になってい る。
この略帽では、トップと側面の布地に色の差があまり無く、保存状態が極めて良い事がわか る。
内外装の取り合い
 
SS略帽の本体はトップと側面の生地は裏地と一緒に縫い合わせて作っており、一番最後に 2枚のトップを裏地ごと縫い合わせて完成する。
したがって、裏側を見てもトップと側面の接合部には縫い目が見えないが、トップのセン ターには画像の様に縫い目が見える作りになっている。裏地は切りっぱなしのウール生地のほつれ止めの役割も果たしており、極めて合理的な設計になってい る。
   
   
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26.Nov.2000 公開
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