このページでは、ドイツ陸軍の機甲科将校用制帽を紹介します。
   
はじめに
 
今回は陸軍のPz将校用制帽を紹介する。戦車兵の軍装というと黒の戦車搭乗服があまりに有名だが、戦車搭乗服はあくまで装甲車両に搭乗する際の服として採用されたため、採用当時のヘッドギアはパ ンツァーベレーと規定されていた。
戦車兵も他の兵科同様のフィールドグレーの勤務服の方が正式の軍装として考えられていた経緯もあって、制帽はフィールドグレーの勤務服に合わせた通常のデザインの物が 採用された。
このコンテンツで紹介する制帽はPEIPERさんのコレクションで、キャプションに関し てはマイスター・シュミットさんに御協力を頂いた。この場でお二人に感謝の意を表します。
   
 
将校用制帽

1935年にヴェルサイユ条約を破棄したドイツは再軍備を宣言し、同条約で保有を 禁止されていた航空機や戦車を保有する軍・兵科を編成した。
軍装にも様々な変更が実施され、暫時新型装備が採用支給された。この制帽はピンクのパイ ピングでわかる様に、兵科はPanzer(戦車)で、いわゆる新生ドイツ陸軍の将校用制帽である。
製造メーカーはShellenberg社で、使用生地は将校勤務服と同等のフィールドグ レイトリコット。
はちまきはダークグリーンラシャで、はちまき下のパイピング下のフィールドグレイ部分は フィールドグレイフェルト製でトップ生地とはちがう素材を使用している。(多くの実物将校用制帽がその様になっている。)
 

 
正面より
 
Shellenberg社製制帽
バイザーはValknfiber製のリブ入りの物で通常の陸軍将校用の物。ピンクパイピ ングはウールラシャ製で襟章やパイピングに使用される専用素材である。
同メーカーの制帽はパイピングが太くパッドが厚めの形状の物が多い。
各メーカーとも太いトップパイピングには樹脂製等の硬めの芯が通っている物が多く、ワイ ヤー芯を抜いてもトップの形を崩さないひとつの工夫となっている。
*この製法の方がワイヤー芯で形を持たせている物に比べてトップの形が丸いフォルムとな る。
<類似メーカー>エレール社・アウグストミュラー社
<対比メーカー>ペキュロ社・クレメンスヴァーグナー社
*一般的に取り外し可能なワイヤーの芯が入ったままのことも多いが当時の帽子メーカーの 説明によると「着用時は取り外して下さい。」ということである。
 
帽章
 
この制帽には当初刺繍タイプの国家鷲章が付けられていた様であるが、現在はアルミの陸軍 将校用国家鷲章II型が付けられている。(1935年に採用になった初期の鷲章のデザインは羽の長さがもっと短い物であった。)
良く見ると元は刺繍タイプの国家鷲章が付けられていた形跡が見られるが、いつの時点でア ルミ製帽章に変えられたかは不明である。
帽章
 
この国家章と柏の葉をあしらった制帽帽章はモール刺繍製であるが、鷲章同様に金属製の物 も作られていた。国家章はコカルデもしくはロゼット章とも呼称されているが、これはドイツ国旗の赤・白・黒の3色をモチーフにデザインされており、廻りの リースはドイツの国樹がモチーフになっている。国家章の左右にあるドングリに繋がる枝の部分やロゼット章のモールの一部が欠損しているが、当時このモール 刺繍の帽章は極めて高価な徽章であった。この価格に付いては下にオフィツィアクライダーカッセ1936/37年版価格表から制帽本体と付属品の価格を掲載 しておくので参考にして頂きたい。
上から
 
多くの制帽は、この様に上から見ると後部(画像右)の方が尖った感じの楕円形をしている が、実際には型紙で見ると前部の方が尖った形をしている。
 
また、兵科色パイピングのすぐ後ろを見ると、上述の様にこのメーカーの帽子が厚めのパッ ドを使っている事がわかる。
ピンクの兵科色パイピング
 
Panzerの兵科色がピンクである事は既に説明の必要は無いと思うが、具体的にどのよ うなピンクだったかと言うと、実は使用された色にはかなり巾があった様である。
ただピンクも経年変化で退色するが、帽子の後ろのトップの影になっている部分をめくって 見ると、このように露出している部分より若干色が濃く残っている。
 
内装等
 
この帽子のはちまき芯は一般に使用される樹脂加工したボール紙ではなく、透明のセルロイ ドを使用している。(スウェットシールドの素材が厚地になった物)通常、多くの制帽はボール紙芯を使用しているためはちまきの形状が折れたり、変形してい るのに比べて、非常に美しい円を描いている。
当時としては最新技術であったと思われる。
ダークグリーンのはちまきは通常のような後ろ正面の接合ではなく前正面の接合となってい る。
これは台布のついたクランツ帽章を付ける陸軍・空軍将校制帽によく見られる方法で、接合 部は帽章の台布で隠れるため目に触れることはない。
またトップ接合部とはちまき接合部の位置が多少ずれても隠れてしまうので問題がないとい うメリットもある。(はちまきにドクロやコカルデだけを付ける制帽には基本的に使用できない。)
 
セルロイドのシールド
 
セルロイドシールドには赤印刷でメーカー名Shellenbergと Stirndrueckfrei D.R.Pの文字が見られる。Stirndueckfrei D.R.P(ドイツ帝国特許)は着用者の「額を締め付けない。」製法の特許であり、スウェット革の基部全周に布をテープ状にしたものを縫いつけ、構成して いる。一番下のSONDER KLASSEは帽子のシールドには良く見られる表記であるが、等級に関してはSonderklasse - ExtraとかSonderklasse - Standardの様に併記されている事が多く、これ自体が等級を表しているのでは無い様である。
内装等
 
内装は人絹ツイル製。Stirndrueckfrei D.R.P.着用者の「額を締め付けない。」製法に関しては、エレールのStirnschtzとならんで有名な製法である。
*Stirndrueckfrei D.R.P.製法の制帽はPekuero社の物が有名であるが、同社がスウェット基部の多くにベルベットを使用しているのに対し今回の Shellenberg社の物はフィールドグレイの厚地フェルトを使用している。
*MJ社の複製制帽にShellenbergのロゴを使用した物があるが、こちらは Stirndueckfrei D.R.Pの構成にになっておらずロゴの印刷もシールドにではなく、天面内装布に黒で印刷されている。
   
制帽と付属品の価格について
 
<参考>オフィツィアクライダーカッセ1936/37価格表より
帽章付き・チンコードなし・トップ生地は最高級エスキモー(極厚ドスキン生地)製
・人絹内装・Sonderklasseマーク入り・エレガントなフォルム。価格は 6.90RM。
なお付属の帽章は共に金属製で別売の場合は鷲章0.30RM、柏葉/コカルデ章が 0.40RM。
ちなみにモール製柏葉に金属コカルデのものは2.30RM、総モール製は2.90RMと 帽子本体に比べて非常に高価である。
チンコードはアルミ製のものが1.75RM、チンコードボタンはアルミ/金色共に1個 0.05RM。
   
   
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17.Nov.2000 公開
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