このページでは、戦車兵・戦車猟兵の徽章を紹介します。
   
はじめに
 
今回は、ドイツ陸軍の華、戦車兵・戦車猟兵の徽章類の中から様々なタイプの襟章と肩章を 紹介する。戦車兵の軍装と言うと、あの黒の戦車搭乗服が頭に浮かぶ方も多いとは思うが、1934年に最初の戦車大隊が編制された当時には、戦車兵には27 年型の礼服を始め、将校であれば勤務服、下士官兵であればフィールドグレーの野戦服、更に作業着等の被服類が用意されていた。通常の兵科より戦車搭乗服が 多い分、特殊な襟章と肩章が作られていた訳である。
極めてバリエーションの多いこれらの徽章類の全貌は網羅する事が難しいが、野戦服と戦車 搭乗服に使用されていた襟章と肩章のバリエーションの多くをPucki氏のコレクションと軍装品店クラウゼの山下氏の協力を得て集める事が出来た。
また、連隊番号や大隊番号に付いてはきたむらひろし氏に多くの情報を提供して頂いた。
ここで改めてPucki氏、山下氏、きたむら氏に感謝の意を表します。
   
肩章に付いて
 
ドイツ陸軍の場合は襟章自体は具体的階級を表していないので、兵の場合は階級袖章が、下士官以上は肩章が事実上の階級章となっている。 肩章は戦争が始まる前にはその所属部隊をも表している事があり、材質や作り等も含めると極めて情報量が多いアイテムでもある。ただし、野戦服等の場合は肩 章自体が脱着式である場合がある為、服との組み合わせが当時のままであるか否かを判断する事が難しい場合もあるが、肩章だけでも充分楽しめるアイテムであ る事だけは否定できない。
  
下士官・兵用の襟章と肩章
   
陸軍Panzer下士官・兵用襟章
 
これは装甲科の野戦服に付ける下士官・兵用襟章であるが、上のペアはライヒスヘーア時代からの野戦服に対応した物で、センターのライン のグリーンが下のペアの物より明るいグリーンになっているのが特徴である。画像下の襟章は36年型野戦服の採用に合わせて制定された襟章で、襟のグリーン の色変更に伴いセンターのラインがダークグリーンに変わっている。これらの襟章はダークグリーンの台布に縫いつけられている場合が多く、この台布ごと野戦 服の襟に縫い付けられた。
第1装甲師団・第1戦車連隊の兵用肩章
 
この角型肩章は1934年に最初の戦車大隊が編制され、その後1935年に3個装甲師団が編制された頃の創世期に野戦服用に作られた肩 章で、装甲科の兵科色で”1”の連隊番号が刺繍されている。フィールドグレーは初期の青味の強い生地が使われており、裏側には1934年に制定されたス トーングレーのズボン用生地が使われている。
 
第5装甲師団・第15戦車連隊の兵用肩章
 
これは1935年9月10日に制定された、ダークグリーン地の角型肩章で、15の連隊番号から第5装甲師団所属であった事がわかる。
ただし1940年に装甲師団を増設する際、今まで2個連隊編制であった装甲師団は各1個連隊編制に改編された為、この第15戦車連隊は 1940年9月以降第11装甲師団に配属された。
ただし、その頃には肩章の形自体も丸型に変わっているので、この肩章に付いては第5装甲師団所属の頃の物である事がわかる。
 
 
第2装甲師団・第38対戦車大隊の兵用肩章
 
これは上記の様に戦車猟兵の肩章であるが、戦車か戦車猟兵かを区別する”P”の刺繍が施されていない為、一見第38戦車連隊の肩章と判 断されがちである。しかし、実際には第38戦車連隊と言う部隊は存在しないので、これは第2装甲師団の第38対戦車大隊と考えるのが正解であろう。
この様に見ると、軍装コレクターにとっても戦史や編制に関する知識が絶対重要であると言う事が良くわかる。
 
 
第3装甲師団・第6戦車連隊の兵用肩章
 
これは全体のバランスから見て、礼服に付けられていた肩章ではないかと思われるが、丸型肩章である事から1938年11月26日付け通 達で採用された物である。
角型肩章は1939年3月18日付け通達で生産が禁止され、先端の丸い肩章に更新される事とされたが、実際には古参兵の一部は好んで旧 式の角型肩章を使用していた。
 
 
陸軍装甲科軍曹の肩章
 
これも差込み式肩章で、1938年11月26日付け通達で採用された物であるが、部隊番号の金属製モノグラムが付けられていた痕跡も無 いので、開戦後から肩章の地色がフィールドグレーに変更される1940年5月までの間に作られた物か、テーラーに残っていた未使用品であると思われる。
この時期の下士官用肩章は部隊番号の金属製モノグラムが付けられていたが、開戦後防諜上の理由でモノグラムを外した為、爪の跡が残って いる物も多い。
 
 
陸軍装甲科兵用肩章
 
標準的脱着式兵用肩章の例。
これも部隊番号が刺繍されていないダークグリーンの脱着式肩章であるが、作りや素材は極めて標準的な官給タイプである。ただし生産期間 は長く無いので現在なかなかお目にかかる事は難しい。
表は36年型野戦服の襟と同じダークグリーンのウール地で、裏側とタブの部分は青味の強いフィールドグレー生地、タブの補強にはグレー のコットン生地が使われ、兵科色パイピングにはピンクのウール生地が使われている。
 
陸軍装甲科上級曹長の肩章
 
これも上の肩章同様、極めて標準的な作りの陸軍装甲科上級曹長の脱着式肩章である。
表はダークグリーンのウール地で裏側とタブの部分は青味の強いフィールドグレー生地、タブの補強にはグレーのコットン生地が使われ、兵 科色パイピングにはピンクのウール生地が、下士官を表すトレッセはアルミシルバーの物が使われている。
 
陸軍装甲科上級曹長の肩章
 
この肩章は上と同じ陸軍装甲科上級曹長の肩章であるが、作りはどちらかと言うと将校用脱着式肩章に似ている。
おそらくこの肩章は野戦用では無く外出着などに付けた肩章なのであろう。と言うのも、通常の官給野戦服の肩章取付け用ループは、約 3cmの巾がありこの様な作りの肩章では前後にだらしなくずれてしまう。この様に裏側のタブを細くするのは取付け用ループ自体が肩章で隠れて見えない様に するのが目的だと思われる。
 
ステッチの種類
 
部隊番号のステッチの多くは画像の左や中央の様なチェーンステッチで刺繍されているが、右の物の様なステッチの物も作られていた。(官 給の角型肩章の場合はほぼチェーンステッチが標準とされていた様である)これは脱着式のスリップオンタブにも継承されている。
 
陸軍装甲科特務曹長(士官候補生)の肩章
 
これは1940年以降のフィールドグレーの脱着式肩章である。
肩章の廻りのトレッセは下士官を表し、3つのピプが階級を表している他、2本のトレッセが巻かれている事から、この特務曹長が士官候補 生である事もわかる。因みにこのトレッセが1本巻かれている兵用肩章は下士官候補生を表している。
 
  
将校用の襟章と肩章
  
 
陸軍Panzer将校用襟章
 
これは装甲科将校用襟章の一例である。
 
実際にはこの襟章にも幾つかのバリエーションが存在するが、代表的な物としては樹脂で固められた布製の芯に、ボール紙を芯にアルミ糸と 兵科色で刺繍したダークグリーンの布を巻いて作った物と、布製の芯にダークグリーンのウール生地を巻いた後からボール紙の芯をあて、アルミ糸と兵科色の糸 で刺繍したタイプ、またBEVOタイプの襟章が作られていた。
 
この襟章はあらかじめ刺繍をしたウール生地を布製の芯に巻いて作られたタイプである。
 
陸軍Panzer尉官用肩章
 
これは装甲科中尉の野戦用差込式肩章である。
 
中尉を表す金色のピプ(星章)は肩章を貫通して裏側で爪が曲げられているが、モールと台布の間でピプの爪が曲げられている物もある。
陸軍Panzer佐官用肩章
 
同じく装甲科少佐の差込み式肩章であるが、脱着式肩章の場合は肩章の肩側(画像の左側)の台布がモールに合わせたカットになっており、 裏側にループを通す為のボタンホール付きのタブが付けられている。これら将校用肩章に関しては、勤務服用と戦車搭乗服用の物で明確な違いは無い。
  
対戦車猟兵の肩章
  
 
戦車猟兵伍長の肩章
 
これは戦車猟兵の伍長の肩章であるが、大隊番号は刺繍されていない。
 
連隊番号と異なり大隊番号は肩章が出来てから施されるので、この肩章はまだ大隊番号が刺繍される前の状態の物と言う事か、下士官用なの で金属製モノグラムで大隊番号を付ける前の状態とも考えられる。
 
この角型肩章の場合は戦車猟兵の様に兵科の刺繍のある物以外は、連隊や大隊番号が金属製モノグラムで付けられた場合には肩章だけでは兵 科を特定できない。
 
第9戦車猟兵大隊所属の兵用肩章
 
この肩章はPの下に刺繍された大隊番号から、第9歩兵師団所属の第9戦車猟兵大隊の兵用肩章である事がわかる。
 
これは差込み式肩章を切り取って保存した物であるが、裏側を見るとPは肩章を組み立てる前に刺繍しているが、大隊番号の方は肩章を組み 立てた後から刺繍した事が確認出来る。
 
この大隊番号は兵科色の糸で刺繍する以外に同色の樹脂製モノグラムを付ける場合もあった。
戦車猟兵上級曹長の肩章
 
将校用肩章に似た作りの下士官用肩章であるが、おそらく野戦用では無く外出着などに付けた肩章なのであろう。
 
将校用肩章の場合はピプやモノグラムは肩章の組み立て前に付けられる事が多いが、下士官・兵用肩章の場合は殆ど肩章組み立て後に取り付 ける為、この様に裏側に爪が見えている事が多い。
 
戦車猟兵大尉の肩章
 
これは野戦タイプの戦車猟兵大尉の肩章で、肩章本体がマットシルバーのアルミモールを使用して作られている。
 
この肩章では戦車猟兵のモノグラムは将校用の金色の物が付けられているが、ピプはシルバーの物が付けられているのが興味深い。
 
将校用の場合は好みでこの様な組み合わせの物を作るケースもあるが、戦争後期に昇進してシルバーのピプを追加した可能性も考えられる。
 
”P”の刺繍とモノグラム
 
戦車猟兵は戦車兵と比べると軍装のバリエーションが多いのだが、肩章の”P"は大きな特徴となっている。部隊の名称についても Panzerabwehreinheit:対戦車部隊に始まりPanzerjaegereinheit:戦車猟兵部隊、更に末期には Panzerzerstoerereinheit:戦車駆逐部隊と変わっているが、頭文字の”P"は変わっていない。また戦車兵との区別をする必要から、 割と末期においても省略されなかった徽章の1つでもある。
  
装甲車両搭乗服の徽章
  
戦車搭乗服と対戦車自走砲搭乗服
 
戦車搭乗服に関しては既にコンテンツ化しているのでここでは細かく書く事は控えるが、1940年に制定されたフィールドグレー1色の突 撃砲搭乗服は1941年以降突撃砲搭乗員以外にも支給されるようになり、この写真の服の様に戦車猟兵にも支給される事があった。この服の場合は戦車猟兵と 言っても、戦功章のループなどから考えると対戦車自走砲の乗員に支給された物と考えるのが妥当かと思われるが、最終的には歩兵にも支給された服である事を 考えると通常の対戦車砲兵に支給された可能性を完全には否定できない。
装甲車両搭乗服用襟章
 
上の写真の服の襟章のアップ画像。
この襟章は規定では30X65mmとされているが、実際にはメーカー格差やオーダー品もあった為、かなり大きさにばらつきがあった。襟 の髑髏にも数種類のバリエーションが存在するが、この2つも生産者が異なると見え、形状が違う。材質に関しても真鍮製、アルミ製、亜鉛製の物が存在し、プ レス製と鋳造製の物が作られていた。突撃砲兵は砲兵に属する為、兵科色は赤であり髑髏の使用に関しても装甲科からクレームが付いたと言う説もあるが、戦車 猟兵は元々装甲科に属しているので襟の髑髏に関しては全く問題が無かったのだろう。
陸軍Pz兵用肩章(脱着式)
 
極めて標準的な戦車搭乗服・兵用脱着式肩章。
官給の戦車搭乗服の肩章は脱着式になっていたので、戦車搭乗服用に通常の野戦服に付ける肩章と同じ作りの肩章を黒のウール地で作った物 が支給された。ただし、戦車の出入り等に引っかかる事を防ぐ為に肩章の全周を搭乗服に縫い付ける兵士もいた。
 
陸軍Pz下士官用肩章(差込み式)
 
これは搭乗服から外した装甲科伍長の肩章であるが、上述の様に戦車搭乗服では肩章を差込み式に改造したり、肩章の周囲を搭乗服に縫付け ると言った事が行なわれていた。
黒のウール地にアルミシルバーのトレッセを縫付けて作られた標準的な物であるが、肩の部分にミシンの跡があるので差し込み式であった事 がわかる。
戦後せめて肩章や襟章等だけでも取っておこうとした兵士は少なくなかった様で(服は民間用としてリフォームする事も盛んに行なわれた) この様な形で残存している徽章類も決して少なく無い。
 
 
陸軍Pz下士官用肩章(脱着式)
 
これは末期型と言われている脱着式肩章であるが、この作りが本当に時期による物であるか、メーカー格差であるのかは断定出来ていない。
黒のウール地にPのモノグラムが付けられているので、戦車駆逐大隊に所属した兵士の戦車搭乗服に付けていた物と考えるのが自然だろう。
この肩章ではアルミシルバーのトレッセが付けられているので、末期型だとすればお洒落用の外出着に付ける物かもしれないし、フィールド グレーのトレッセの供給が滞り、在庫にあったシルバーのトレッセを付けてしまった可能性もある(笑)。
 
  
熱帯服用の襟章と肩章
  
 
熱帯服用襟章
 
戦車部隊は当初ヨーロッパ用の黒の戦車搭乗服で派遣された写真が残っているが、アフリカで黒の戦車搭乗服が実用的である訳が無く、例外 はあるものの通常の熱帯服の下襟に戦車兵の象徴である髑髏を付けて戦車搭乗服とした。
したがって、多くの場合は襟章自体は写真の様な熱帯用の各兵科共通の物が付けられていた。
この襟章は画像の様にライトブルーグレー地にカーキのラインが入っているが、熱帯用野戦服の服地がオリーブグリーンであった事と考え合 わせると興味深い。
髑髏章の方は黒の戦車搭乗服の襟章に付ける金属製の物が流用されていた。
以下はきたむら氏に御教示頂いた情報であるが、アフリカでは第10装甲師団第7戦車連隊が、1943年にギリシャに派遣された第1装甲 師団第1戦車連隊では熱帯服の襟に通常の戦車搭乗服に付ける黒地に髑髏、ピンクのパイピング付き襟章が付けられていた。
 
 
熱帯服用肩章
 
極めて標準的な熱帯服用肩章の例。
この肩章はPzの伍長の肩章で、野戦服と共生地のオリーブグリーンのコットンに熱帯用のレーヨン製トレッセ、ウールパイピングが使用さ れている。
パイピングに関してはレーヨンパイピングの肩章も作られていた他、SSの42年型肩章と同じ様な作りの肩章も確認されている。
 
  
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17.Apr.2001 公開
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