このページでは、ドイツ軍の官給腕時計と懐中時計を紹介 し ます。

  
 
はじめに
 
国防軍では、陸・海・空軍が各々独自の規格の時計を採用していたが、今回は、その中からドイツ陸軍の官給腕時計と懐中時計を紹介する。
軍隊では基本的に消耗品を含む物資にも任務があり、官給タイプと一口で言っても、全ての将兵に支給される物と、一定のルールに従って貸与・供与される物が あった。今回 紹介する腕時計や懐中時計も、時間を知っていなければならない者に対して支給された物で、全将兵に支給された物では無い。これは、双眼鏡や懐中電灯、書類 ケース等と同じ考え方である。
具体的には、将校、下士官と、部隊装備として普段は部隊が管理し、任務上の必要に応じて貸与する物があった。
また、時計類は多数のメーカーから納入されていた為、バリエーションも多く、私物の使用例も多かったので、コンテンツで紹介した物は一例に過ぎない事をお 断りしておく。
本コンテンツを制作するにあたり、
Ofw. Walter Rappholz:ヴァルター・ラップホルツ曹長の個人特定をして下さった、 北村氏にこの場であらためて感謝の意を表します。
 
   
官給腕時計



官 給腕時計

これはスイスの時計メーカーから、ドイツ陸軍に納入された
官給腕時計 で、ブランド名は”HELIOS”である

開戦当初の電撃戦では、各部隊が決められた時間に行動する事が要求され、ドイツ陸軍は大量の時計を
国内メーカーのHamhart、Junghaus、Kienzle等に発注した。
戦線の拡大と共に軍は大規模な増員を行ったため、1942年には国内メーカーのみでは、軍の需要を賄いきれない事態が生じ、国防軍はスイスの時計メー カー、
Longines:ロンジン社等と契約を結び、 こうした輸入品が供給されたと言われている。同社から国防軍に供給された時計のブランドとしては、Alpina、Minerva、Mulko、Record、Silvana、Titus、 Zenith、等が知られている。

ディティール

この時計のケースのサイズは、直径33.8mm(リューズを除く)で、厚みはガラスも含め10.6mmである。

文字盤は黒地で、1〜12の数字は夜光塗料でプリントされており、6の位置には秒針用の文字盤が白で設けられている。
長針・短針共に、文字盤の数字同様、夜光塗料が塗られている。

ディティール

手巻き15石のムーブメントは、現在でも1秒以内/1日の誤差で、正確 に時を刻んでいる。

黒革製の時計バンドは標準的なタイプであるが、リベット状の金具で留めた簡単な取付方法である。

刻 印

ケース裏蓋の刻印は以下の通り

STAHLBODEN : 鋼製ケース

WASSERDICHT : 防水

D  15724  H 数字を挟んだDとHは、Dienstuhr Heerの略で、陸軍官給時計を示しており、間の数字”15724”はこの時計のシリアルナンバーである。

ディティール

時計バンドのバックルは、アルミ板を打ち抜いたシンプルな物で、ツメはニッケル製である。


官給懐中時計





懐中時計
 
スイスの時計メーカー、ロンジン社がドイツ陸軍に納入した官給懐中時計で、ブランド名は”ZENITH”である

洋銀(ニッケル・シルバー)製のケースの直径は 50mmで、厚みはガラスを含め13mm。
黒のエナメル仕上げの文字盤には1〜12の数字が配置され、腕時計同様6の位置には秒針用文字盤が配置されている。また、数字の目盛り部と長針・短針には 夜光塗料が施されている。

携行用チェーンの長さは、ナス環金具から革製ループの先端までで345mm。チェーン先端の茶革製のループは、これにチェーンを通してズボンのリング、又 はループに装着するための物である。

裏面
 
裏面パネルは、ケース同様洋銀の鋳造で作られており、スクリュー式の蓋 になっていて、D. 84127051 H. の刻印がある。

数字を挟むD.H.は、前述の通り陸軍官給時計を表していて、”84127051”は、この時計のシリアルナンバーである。

裏面パネルを外すと、中にもう一枚のカバープ レートがあり、ムーブメントはそのプレート内部にある。
そして、耐衝撃構造を備えた手巻き17石のムーブメントは、時計とは別のムーブメントナンバーが打刻されている。

この懐中時計も上で紹介した腕時計同様、メンテナンスが施されているので、現在でも実用可能な状態である。




懐中時計用ランヤード
 
懐中時計は、チェーンの代わりに、画像のようなランヤードでも携行する事ができた。


懐中時計と懐中時計ポケット
 
ドイツ軍のズボンには、懐中時計を収納出来るポケットと、チェーンやランヤードを留めるリング もしくは、ループが設けられていた。

画像は、1940年製の野戦ズボンの該当部分であるが、メッキ処理を施された鉄製リングが糸で縫い付けられており、そこに懐中時計のチェーンを留めるよう になっている。

また、懐中時計には携行用の保護ケースも用意されており、ケースごと懐中時計ポケットに入れられるようになっていた。



使用例
 
画像の人物は、独立第616戦車 駆逐大隊(自走式)第1中隊の小隊長Ofw. Walter Rappholz:ヴァルター・ラップホルツ曹長で、1943年5月5日付で黄金ドイツ十字章、更に1944年11月3日付で騎士鉄十字章を授章。

こ の写真では既に騎士鉄十字章を佩用しているので、撮影は1944年11月3日以降と言う事になる。

この写真から、ヴァルター・ラップホルツ曹長は、腕時計と懐中時計を携行してい る事が確認できる。
(着丈の短い突撃砲搭乗服を着用しているおかげで、懐中時計のチェーンがはっきり見えている。)

余談ではあるが、襟元には騎士鉄十字章、右胸の国家鷲章の下には黄金ドイツ十字章、左胸のリボンバーは東部戦線従軍記章、陸軍勤続章、ズテーテンラント従 軍記章。
その下に一級鉄十字章と一般突撃章、戦傷章(黒)、更に左の下襟には二級鉄十字章のリボンを佩用している。





使用例
 
このD.A.K.の下士官2名は懐中時計を携行している。
右の軍曹は、懐中時計用のランヤードを使用しており、腕時計も着用している。

分隊指揮官であれば、時計を支給されていても不自然では無いが、この画像では懐中時計や腕時計が官給品なのか、私物なのかはわからない。
  
  
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28.Nov.2010 公開
  
  
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