ここでは、31年型衣嚢のバリエーションの展示をしてい ま す。

   
 
はじめに
 
このコンテンツでは、31年型衣嚢 : Bekleidungssack 31を紹介する。
31年型衣嚢は、長辺40cm、高さが31cm、厚みが7cmの手提げ式の布製バッグで、背嚢もしくはリュックサックに入りきれない衣類等を収納するた め、
背 嚢もしくはリュックサックと共に、殆ど全ての兵士に支給されたが、後方部隊の兵士には、背嚢もしくはリュック サックに代えて、衣嚢を2つ支給される事もあった。
衣嚢は通常、背嚢と共に部隊の段列によって輸送されるので、戦闘行動中の兵士達が携行する事はあまり無かった。

   
31年 型衣嚢(初期型)
  
 

 

 
31年型衣嚢初期型
 
1931年型初期型衣嚢は、初期型雑嚢と同じフィールドグレーの生地で作られた手提げ式の布製バッグで、 本体の縫い合わせ部分は、写真の様に革の縁取りが施されていた。


31年型衣嚢初期型
 
フロントフラップ(かぶせ)を開けた状態の31年型衣嚢。バッグ本体は、1枚の布から作られたフロント、ボトム、バックとフロントフ ラップ、別パーツから付けられたサイドとサイドフラップ から構成されており、トップのセンターには革製のキャリングハンドル(持ち手)が付けられている。また、フロントフラップには、2本の革製 ベルトが付けられ、フロントのバックル付ベルトで留める作りになっている。


ディティール
 
サイドから見た衣嚢。

革製の縁取りに関しては、
フロント、ボトム、バックとフロントフラップが一枚布で作られているので、サイドパーツとの取り合い部のみに付け られている。

サイドパネルは一枚の布で作られており、上部にはサイドフラップが付けられている。

また、この画像でも解る様に、フラップを留めるバックル付ベルトは、フロントパネルの上下のほぼ中央に付けられている。

ディティール
 
フロントフラップと本体は茶革製のベルトで留められる。

このベルトは巾16mm、長さは135mmで、調節用の穴が15mm間隔で5個開けられている。

ベルト金具はアルミ製で、無塗装である。

この初期型ベルト金具は、ローラーバックルと呼ばれるタイプで、革製ベルトを傷つけにくい様に、バックルにパイプ状のカバー(ローラー)が付けられてい る。

これは装備用ベルト等にも良く見られるタイプのバックルであるが、衣嚢に関しては中期型以降簡略化され、ローラーの無いバックルに変更された。

ディティール
 
サイドフラップのディティール。

サイドフラップは、衣嚢に入れた物がこぼれ落ちない様に設けられた物 で、先端は両サイドを折って面を取った形状に作られている。

また、サイドフラップと本体の取り合い部には、1/4円形の補強布が縫い付けられている。

この1/4円の補強布はセンターが摘んで縫われていて、サイドフラップが自然に内側に入る様に作られている。


ディティール
 
フロントフラップの裏側のスタンプ。

画像では逆さまになっているが、1939年製造を示すと思われる”39”の数字がスタンプされているのがうっすら見えるが、後の文字は残念ながらかすれて いて判読出来ない。
  
戦時生産タイプの31年型衣嚢
  
 


31年型衣嚢中期 型

雑嚢など他の布製装備同様、戦争が始まってから生産された衣嚢は、 フィールドグレーからオリーブグリーンに変更された。
理由は定かでは無いが、占領国が増えて綿の供給先が変わった事が主な原因だったのではないかと思われる。
また、この衣嚢の革製パーツは黒に着色されているが、これも1939年以降の装備に共通した特徴と言えるだろう。
本稿では、便宜上このタイプを中期型衣嚢と分類する。

 

 
31年型衣嚢中期 型
 
フロントフラップを開けた状態の中期型衣嚢。

中期型の衣嚢からは、両サイドのパーツ縫い付け部の革製縁取りが略されたため、初期型と比べると外観があっさりした感がある。

初期型と中期型衣嚢は、上記の使用生地、革製縁取りの有無以外、大きな差異は無いが、生地の質感はかなり異なる。

この中期型衣嚢に使われたオリーブグリーンの生地は、初期型のフィールドグレーの物より柔らかいので、芯材を使用していないバッグ用としては多少頼りな い。

ディティール
 
フロントフラップと本体は黒革製のベルトで留められる。

このベルトは巾16mm、長さは135mmで、調節用の穴が15mm間隔で5個開けられている。

ベルト金具は鉄製で、グレーに塗装されている。

初期型のベルト金具は、前述の様にローラーバックルが付けられていたが、この中期型ではそれも省略されている。

ディティール
 
フロントフラップに縫い付けられたベルトは、初期型同様あて革が付けられている。

皮革製野戦装備のベルト類は、革の裏側をなめして使用しているが、この衣嚢のベルト類は革の表面を黒く着色して使用している。


ディティール
 
サイドフラップと本体の取り合い部には、1/4円形の補強布が縫い付けられている。

この1/4円の補強布はセンターが摘んで縫われていて、サイドフラップが自然に内側に入る様に作られている。

ディティール
 
サイドフラップのクローズアップ。

この衣嚢では、サイドフラップの先端は丸く処理されている。

上で紹介した初期型では
、先端の両サイドを折って面を取った形状に作られて いるが、この違いが材質の違いによる物なのか、仕様変更による物なのか、単に製造工場によるバリエーションなのかは判らない。

ディティール
 
サイドフラップの裏側と、バッグ本体、サイドパーツの縫い合わせ部のディティール。

サイドフラップはサイドパーツと一体化され、裏側で二重に折り返して縫われている。

また、バッグ本体の両サイドは、内側に折って縫い放しのため、解れている。

初期型では外側で縫った後、革製の縁取りで解れ止めが施されていたが、これはかなりの省力化である。



31年型衣嚢 後期型

31年型衣嚢の後期型は、中期型と殆ど同じ物であるが、フロントフラップのベルトに開けられた、長さ調節用の穴が5個か ら2個に減らされた事、キャリングハンドルの縫い付け方がトップに沿ってフラットに変更されている。


ディティール
 
フロントフラップには革製のベルトが付けられているが、このベルトの穴は2個となっている。

また。この衣嚢の場合は、革の表面が表側に使用されており、黒く着色された面は裏側に使われている。

ベルト金具は鉄製でメッキが施されており、無塗装となった他は中期型と同じ作りである。

ディティール
 
フロントフラップの裏側には、中期型までと同様革辺の補強があり、フラップを貫通してベルトが縫い付けられている。

長さ調節の穴は2個になっているが、ベルト自体は長さ133mmで、巾も15mmと中期型と殆ど同じ寸法である。

ディティール
 
革製のキャリングハンドル(持ち手)の比較。
上の黒いキャリングハンドルは
中期型の物で、下の茶革製は後期型の物。

共に長さは190mmの革バンドであるが、中期型までは手が入れやすい様に、浮かせて縫い付けてあるのに対し、後期型では衣嚢のトップに沿って、単に縫い 付けてある。

また、中期型のキャリングハンドルは巾17mm、後期型は両端部は同じく17mmであるが、中央部は15mmになっている。

ディティール
 
サイドフラップの先端も、丸みを帯びた中期型と異なっているが、初期型とは同じ作りであるため、生産性を考えての変更と言うよりは、製 造メーカーによる違いかもしれない。

丸く縫うか、こうした角がある形に仕上げるかでは、僅かな違いしか無いかもしれないが、熟練工の不足気味な状況下では、大量に生産する上で大きな違いが出 そうにも思う。

ディティール
 
サイドフラップと本体の取り合い部には、1/4円形の補強布が縫い付けられている。

この1/4円の補強布はセンターが摘んで縫われていて、サイドフラップが自然に内側に入る様に作られている。

ディティール
 
サイドフラップ取付部分と、バッグ本体、サイドパーツの縫い合わせ部のディティール

上で紹介したサイドフラップは、サイドパーツと一体化されていたが、このサイドフラップは別パーツになっている。

また、サイドパーツとバッグ本体の縫い合わせ部は外側で二重に折り返して縫い合わされているため、解れにくい構造となっている。

末期型と言えども、必ずしも省力化するだけでは無く、改良を施される場合があるのが興味深い。
  
31年 型衣嚢の使用例
 



31年型衣嚢 の使用例

砲兵のプライベートアルバムから。

この写真にはキャプション等は書かれていないが、写真の前後の関係から、戦前の内地での撮影と思われる。

Gefreiter:上等兵が水差しと衣嚢を持っているが、衣嚢にはあまり物が入れられていない様子だ。

衣嚢には芯材の類が入れられていないため、中身が入っていないとこの写真の様に少々だらしのない感じがする。
また、フラップのベルトの間隔が広いため、フラップの中央にベルトを追加して使用していた例もあった。

この兵が着用している野戦服は33年型野戦服で、襟元にはクラーゲンビンデも写っている。
また、右胸のポケットから出ているひも状の物は、ホイッスルランヤードで、ベルトバックルもアルミ製の物が着用されている。

アルバムの砲兵大隊は挽馬部隊だったためか、長めのブーツには 拍車のベルトも写っている。


31年型衣嚢の使用例

無蓋貨車で移動中の兵士達。

食料袋の様な物の上に座っているが、各々が衣嚢を携行している。

写真中央に写っている衣嚢には、
初期型の特徴である、革製の縁取りがはっきり確認できる。

31年型衣嚢の使用例

干し草を敷いた有蓋貨車で移動中の兵達の傍らに、31年型衣嚢が見える。

野戦帽の兵科色が白黒写真で明確には判らないが、衣嚢の中から靴底が出ており、背嚢の代わりに衣嚢を
2つ支給された、いわゆる後方部隊かも しれない。
    
   
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13.Jul.2011 公開
  
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