第二次世界大戦時のドイツ軍では、主として1930年に採用されたガスマスク30、38 年採用のガスマスク38が生産支給されていた。今回は、1938年採用のガスマスク38と、ガスマスク関連アイテムを紹介する。 |
38年型ガスマスク:Gasmaske38は、30年型ガスマスクの後継型として採用さ れたゴム製面体のマスクで、5点支持のハーネスを採用している。 サイズは30年型同様3種類あり、レンズやフィルターマウント部等は30年型と共通部品 が使われ生産性も向上しているが、30年型も並行して生産されていた為、終戦時までに完全に更新される事はなかった。 通常は、収納缶(金属製のコンテナ)に収納されて携行されたが、収納缶に付いては30年型ガスマスクのコンテンツを 参照されたい。 |
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直に付けるタイプのマスクで、通常は30年型ガスマスク同様、金属製の専用収納缶に入れ られて携行された。 面体は気密性を保持するために、顔に接する部分が二重構造になっており、5点支持のハー ネスで装着された。 サイズは1から3までの3種類が用意され、ハーネスと内部の調節ベルトで顔の形にフィッ トさせる事が出来た。 フィルターを付けるマウント部は30年型マスクと共用のアルミ鋳造製で、吸気と排気はゴ ム製の弁で別けられる様になっている。 |
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ガスマスク38を側方から見る。 この位置から見ると、各ハーネスの取り付け基部等が簡略化されているのがわかる。 ハーネスのスプリングは接合部の3箇所に集約され、バックル金具の部分で長さを調節でき る様になっている各ハーネスを、合理的に引っ張る構造になっている。 画像下の方に写っている布製ストラップは携行用で、マスクを首から下げて携行する事が出 来る。 |
面体には表面の額の部分に1から3までのサイズ表示がしてあるが、このマスクには3が モールドされている。 因みに、1が大、2が中、3が小となっている。 目ガラスはオレンジ色のプラスチック製で、鉄製マウントに、同じく鉄製の枠で固定されて いる。 画像中央のゴム製のタブは、携行用スリングを使用する時に使う為の物。 |
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ハーネスのディティール。 両サイド下側のハーネスは、スプリングが省略され、バックル金具で長さを調節する様に なっている。 |
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ハーネスのディティール。 脱着時には、下側のハーネスのDリングを外して、ハーネスを緩めてマスクを被り、再びD リングを引っ掛ける事で装着が完了する。 |
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携行用スリングのディティール。 携行用スリングの中程には、前述の面体の額に付けられた、ゴム製タブと固定する為の金具 が付けられている。 |
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面体自体がゴムの一体成形となったので、内装と言った物は無い。 目ガラスのすぐ下に見えるのが吸気口で、ゴム製の逆止弁の先にフィルターが付けられ、更 にその下の金網で覆われているのが排気口である。 この金網はゴミなどがゴム製の逆止弁に挟まる事を防ぐために付けられた物で、脱着式に なっている。 |
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面体の内側には、様々マーク等がモールドされているが、これはメーカーコードの” aqd”で、3文字である事から、1940年11月以降に交付されたメーカーコードである。 |
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また、その左側には鷲のマークとWaAのスタンプ:ヴァッフェンアムトのスタンプが押さ れており、これが軍用である事を示している。 多くのガスマスクは、このようにスエードの裏側等に色々なスタンプが押されているが、全 てのスタンプの意味がわかっている訳では無い。 |
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ガスマスク38は、30年型の様に多くの別パーツを組み立てた物では無いので、刻印等も シンプルになっている。 3つの丸に囲まれた”44”、”49”、”aqd”の文字が確認出来る。 |
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ヴァッフェンアムトのスタンプ。 鷲のマークの下に”WaA 956”の文字がスタンプされている。 |
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フィルターにはFE37、FE41、FE42等のバリエーションがあるが、写真左が FE42で、右がFE37である。 FE41に付いては30年型ガスマスクのコンテンツを 参照されたい。 これらのフィルターは3層構造になっており、活性炭と繊維質の層が組み合わされていた が、これでは全ての毒ガスに有効と言う訳では無い。 |
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フィルターの上面には写真の様にフィルターのメーカーや形式の刻印の他にWaAのスタン プや日付、供給地などのスタンプ等が押されている。 左のFE42にはFE42とFeの刻印の他、48・8・Gのスタンプが押されている。 右のFE37はAUER社製でWaA165と57のスタンプが押されている。 |
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シャワーの様に見えるのがFE37で、左はFE37の改良型から採用になった吸気口。 これらのフィルターは飲料水の確保が困難な戦場ではしばしば浄水機代わりに使用されてい た。 |
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