このページでは、ドイツ軍の30年型ガスマスクを紹介します。
   
はじめに
 
第二次世界大戦時のドイツ軍では、第一次世界大戦の時の毒ガス戦の教訓から様々な対毒ガ ス戦装備を採用していた。代表的な物として、ガスマスク・ガスシート・ガス洗浄剤等があるが、それらの装備の中で、もっともポピュラーな物としてガスマス クがあげられる。ガスマスクには、1930年に採用されたガスマスク30、38年採用のガスマスク38の他に、視力補正レンズ付きマスクや酸素吸入用タイ プ・工兵用タイプ・緊急時の呼吸装置・頭部負傷者用マスク、更には軍用犬用や馬用マスク等の様々なマスクが用意されていた。
今回はそれらのガスマスクの中から1930年採用のガスマスク30を紹介する。
   
 

 
 
30年型ガスマスク
 
30年型ガスマスク:Gasmaske30はフィルター(吸収缶)を直に付けるタイプの マスクで、通常は下の画像の様な専用の収納缶に入れられて携行された。
面体は気密性を保持するためにゴム引き処理をしたコットンとスエードで作られており、7 点支持のハーネスで装着された。
サイズは1から3までの3種類が用意され、ハーネスと内部の調節ベルトで顔の形にフィッ トさせる事が出来た。
フィルターを付けるマウント部はアルミ鋳造製で、吸気と排気はゴム製の弁で別けられる様 になっている。
 
 

 
 
収納缶
 
ガスマスクの収納缶は細部まで見るとかなりのバリエーションが存在するが、大まかには長 さの異なる2種類の物が作られた。
画像左が初期型の短いタイプで右が後期型の長いタイプであるが、これはガスマスクに取り 付けるフィルターの大きさが変更された事に起因する物で、1942年4月22日より新型の長い収納缶の支給が始まった。
新型収納缶は前線部隊に優先的に支給され、古い収納缶は回収された後、後方部隊等で再支 給された。
この収納缶に関しては改めてコンテンツを作って細部を紹介したいと思っている。
 
 

 
収納缶の中身
 
写真はガスマスク収納缶の中身を示す。
 
左上の収納缶は1942年4月22日以前の短いタイプ。
蓋の裏側には予備の曇り止めレンズを入れるボックスが付けられている。
白い布は面体やレンズを手入れする為の物で、収納缶の低部に入れられ、布の上に乗ってい るスプリングで固定される。
布の右上に見えるのは、紙袋に入れられた予備の曇り止めレンズ。
右側がガスマスク30の面体とフィルター。
 
 

 
ガスマスク30
 
サイズ2と3のガスマスク30。
マスクのサイズは額の所に押された1から3の数字で判別出来る様になっており、1が大、 2が中、3が小となっている。
目ガラスは透明のプラスチック製で、アルミ製マウントに、同じくアルミ製の枠で固定され ている。
フィルターに関しては後述するが、FE37、FE41、FE42等の形式があり、全て同 一規格のねじ山で共用出来る様に作られていた。
また、この30年型ガスマスクには外部連絡用マイクの取り付けマウントが付けられたタイ プもあった。
 
 

 
 
側方より
 
ガスマスク30を側方から見る。
この位置から見ると、各ハーネスの取り付け基部にスプリング(金属製)が入れられてい て、マスクが顔面に密着する様になっている事がわかる。
ハーネス自体もバックル金具の部分で長さを調節できる様になっているのであらかじめハー ネスの長さを調節しておく必要はあるが、最終的にスプリングで密着される。
周囲及び縫い目は全てゴムが塗布されていて気密性を保持する様に処理されている。
画像下の方に写っている布製ストラップは携行用で、マスクを首から下げて携行する事が出 来る。
 
 
 
装着状態
 
実際に装着してしまうとハーネス等が見えなくなってしまうので、装着状態を図示してみ た。
実際には、ハーネスのDリングを留めれば装着が完了する状態を描いてある。
この図でみると7点支持というのがわかってもらえるだろう。
額の上から出ているハーネスには短いタブが付いているが、これは携行用スリングに付いて いる金具を通す穴があいていて、首から下げて携行する時にガスマスクを真直ぐ保持するための物。
図の下の方にある携行用スリングにその金具が描いてあるのがわかるだろうか。
 

 
 
後方より
 
ガスマスク30を後方から見た状態。
ガスマスクは第一次世界大戦の毒ガス戦で多くの将兵を失った経験から装備されたが、結果 的には第二次世界大戦では毒ガス兵器は大々的に使用される事は無かった。
戦場での写真等を見ると、防寒目的や焚き火の時の煙を避ける目的、更にはパンツァーシュ レッケ(対戦車バズーカ)の発射時の火炎避け等に使われていた。
 
面体の内装
 
面体の内側はゴム引きで顔に接する周囲にはやはり裏側をゴム引き処理をしたスエードの縁 取りが付けられている。
目ガラスのすぐ下に見えるのが吸気口で、ゴム製の逆止弁の先にフィルターが付けられる。 更にその下の金網で覆われているのが排気口である。この金網はゴミなどがゴム製の逆止弁に挟まる事を防ぐために付けられた物で、脱着式になっている。
更に下方に見える革製のベルトはマスクの巾を調整する為の物で、5段階に調節する事が出 来る。
製造年
 
接顔部のスエードは写真の様にゴム引き布と合わせになっていて、密閉性を保つ構造になっ ている。
この面体では右頬のあたりのスエードの裏側に製造年を表す1940のスタンプが押されて いる。1938年には面体自体がゴム製のガスマスク38が採用になったが、旧型のガスマスク40の生産は続けられた事がわかる。因みに1943年の製造年 が押されたガスマスク30も確認しているので、製造ラインはかなり末期まで活かして生産を続けたと思われる。
サイズとヴァッフェンアムト
 
面体には表面の額の部分に1から3までのサイズ表示がしてあるが、この面体は内側の接顔 部のスエードの裏側にも57のスタンプが押されている。(これは全てに押されている訳では無い。)また、その左側には鷲のマークとWaAのスタンプ: ヴァッフェンアムトのスタンプが押されており、これが軍用である事を示している。多くのガスマスクは、このようにスエードの裏側等に色々なスタンプが押さ れているが、全てのスタンプの意味がわかっている訳では無い。
メーカースタンプ等
 
ガスマスク30は、様々な素材の部品を使用して作られているため、部品ごとに製造メー カーを表す刻印やスタンプが押されている物もある。
これは額の裏側に押されたスタンプだが、面体を製造したメーカーのロゴマークだと思われ る。
曇り止めレンズ
 
ガスマスク30を装着した時の視界は、この2つのプラスチック製レンズで確保されるが、 呼吸による水分でレンズが曇ってしまう事を防ぐため、内側にセルロイド製の薄いレンズを付ける様に設計されている。この曇り止めレンズは鋼鈑プレス製の枠 で本体側のフレームに固定出来る様になっており、簡単に脱着する事が出来る。写真左目の方は曇り止めレンズを付けた状態で、右目の方は未装着の状態であ る。
 

 
曇り止めレンズ
 
画像の左側に写っているのがセルロイド製の曇り止めレンズで、右側が取り付け枠。
 
この曇り止めレンズは定期的に交換する消耗品で、レンズにも製造年がプリントされている 他、収納缶の方にも年月日等をタイプした紙片が貼りつけられている。
 

 
 
予備の曇り止めレンズ
 
予備の曇り止めレンズはボール紙を間に挟んだ形で画像に写っている様な紙袋に入れられて いる。
 
紙袋には以下の様な説明がプリントされている。
Klarscheiben
クリアレンズ
vor Feuchtigkeit schuetzen;
湿気から守る。
nicht wischen nur am Rand anfassen.
拭わずに縁を持って扱う事。
 
 

 
 
フィルター側面より
 
フィルターはFE37、FE41、FE42等のバリエーションがあるが、写真左が FE37で、右がFE41である。
FE42に付いてはガスマスク38のコンテンツで紹介する。これらのフィルターは3層構 造になっており、活性炭と繊維質の層が組み合わされていたが、これでは全ての毒ガスに有効と言う訳では無い。
 
 

 
 
フィルター上方より
 
フィルターの上面には写真の様にフィルターのメーカーや形式の刻印の他にWaAのスタン プや日付、供給地などのスタンプ等が押されている。
 
左のFE37はAUER社製WaA165、1941年3月にヴィーンで支給された物。
 
右のFE41はgnh社製WaA C39 1942年のスタンプが押されている。
 
 

 
 
フィルター下方より
 
シャワーの様に見えるのがFE37で、右はFE37の改良型から採用になった吸気口。
これらのフィルターは飲料水の確保が困難な戦場ではしばしば浄水機代わりに使用されてい た。
 
   
Waffen Amt:ヴァッフェンアムト
 
兵器局検査済み印:銃などの兵器や個人装備類に打刻されている刻印で、鷲のマークの下に 英数字と組み合わせてある。英数字は兵器局の検査員長に割り当てられたコードを表している。その為、メーカー・工場によっては検査員長の移動と共に英数字 が変更された。検査員スタッフは、軍が認めた民間人も加わっており、検査に合格した製品にはWaA:ヴァッフェンアムトの刻印やスタンプが打刻された。し たがって、これがあると「軍用品」であるという事になる。
  
   
ホームに戻る
資料 館トップへ

本サイトに掲載されている文章及び画像の 無断転載はお断りします。Copyright  2000  STEINER

22.Nov.2000 公開
  
   inserted by FC2 system