今回はSS下士官・兵用のニッケル合金製、アルミ製、及び鉄製ベルトバックルを紹介する が、実際には数多くのバリエーションが存在する。 SSはSAから派生した組織である為、極初期にはSAのバックルを使用していたが、ベル トは黒い革ベルトが使われていた。1927年にはバックルメーカーで有名なOverhoff & Cie社からヒトラーの案を元にしたバックルのデザインが提示され、1931年に正式採用、1932年から支給になっている。 なお、本コンテンツを制作するにあたり貴重なアルミ製バックルを貸して下さった 08/15氏と、ニッケル合金製バックルを貸して下さったえっさい氏の両名に感謝の意を表します。 |
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SSのスローガン”Meine Ehre heisst Treue !”(我が名誉は忠誠なり)と国家鷲章・ハーケンクロイツをあしらったデザインのSS下士官・兵用ベルトバックル。 |
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”O&C”は、SS用バックルを当初から生産していた、Overhoff & Cie:OLC社の刻印である。 ”ges.gesch.”は、Gesamthand-gemeinschaftの略で、 提携会社の意。 |
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これは上と同じデザインで、アルミで作られたSS下士官・兵用ベルトバックル。この画像 のバックルは1937年にOLC社で作られた物。 |
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アルミ製バックルは、鉄製バックルとは異なり裏側のフック受け部が一体成形で作られている。 これはアルミが軽量で表面に酸化皮膜が出来ると中まで腐食しにくい反面、鉄等と比べると柔らかくて溶接が難しいためであると思われる が、プレス成形後の加工も必要で生産性は良く無いと思われる。 ベルトバックルも他の装備品同様、1940年頃からは徐々に鉄製に更新されたが、古参の兵などでは結構末期までアルミ製バックルの使用 例が確認されている。 |
SS用バックルを当初から生産していた、Overhoff & Cie:OLC社の刻印。RZM・36はOLC社のコード・37は生産年・SSの刻印。 |
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これは鉄で作られた、戦時型のSS下士官・兵用ベルトバックル。この画像のバックルは 1943年にアスマン社で作られた物。 |
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このバックルはメーカー及び製造年不詳。塗装色から1940年から1942年頃までの物 と思われるが、SS下士官・兵用バックルではこのように無刻印の物も多く存在している。 |
これはFriedrich W.Assmann &Soehne (アスマン社)製のバックルで1943年製。当時戦車に塗装されなくなって余ったパンツァーグラウの塗料で塗装されている。 |
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鉄製バックルの多くは当初アルミシルバーに塗装されていたが、このバックルも裏面は比較 的塗装が残っており、当初はグリーンがかったシルバーで塗装されていた事がわかる。 |
このアスマン社のバックルは1940年頃の物はシルバーに塗装されているが、1943年 製の物はこのバックルの様にパンツァーグラウやフェルトグラウに塗装されている物が多い。 |
この画像のバックルは上から見ると、他の多くのバックル同様湾曲させた形に成形されてお り、装着時にバックルがベルトにフィットする様に作られている。 |
このバックルは上から見ると直線的で、中央のハーケンクロイツのレリーフの突起が大きい のが特徴である。 また、バックルが直線的な代わりにツメが曲げてある。 |
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右上の列で紹介したアスマン社の刻印。 ”RZM 155/43 SS”の刻印がバックルの裏面右側に打刻されている。RZMの後の”155”がアスマン社のメーカーコードで、”43”は1943年製造を表している。 バックルメーカーのコード表ではアスマン社は”39”番のコードを取得しているが、バッ クルに打刻する時にはダブルコードが使われていたと思われる。 |
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下士官・兵用ベルトは、画像の様に裏側に付けられている長さ調整ベルトでサイズを変える 事が出来る様になっている。長さ調節の穴は概ね20mm間隔で7組あけられており、ベルトに打刻されているサイズはセンターの穴を使用した時のサイズで、 プラスマイナス約60mmの調節が出来る。 これは上着を着用していない時や、オーバーコートなどの防寒着を着用した時に対応する為 で、ウエストサイズの変化に対応する為の物では無い。 |
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ベルトとバックルは、長さ調節用ベルトにあけられた穴を使って固定するが、まず最初に バックルのツメが固定されている軸とバックル本体の間に2本のベルトをまとめて挿入する。画像で見るとバックル裏面の左側にフック受け金具があるが、それ を避けるように更にベルトを適切な長さになるまで通して行く。 |
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ベルトの長さが丁度良い長さになる穴に、バックルのツメを入れ、バックルを保持しながら ベルトを引っ張るとベルトとバックルはしっかりと固定される様になっている。ベルトの反対側にはフック金具が付けられているので、弾薬盒やピストルホルス ターをベルトに装着する際には、バックルを外して脱着した方がスムースである。 |
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この画像はベルトとバックルが固定された状態を示す。 下士官・兵用の野戦用ベルトは他の皮革製野戦装備同様、革の表が裏側に使われており、服 との摩擦で服を痛めない配慮がなされていると同時に、ベルトの表面が適度な艶消し仕上げになっている。 |
ベルトはフック金具をフック受け金具に入れるだけで簡単に装着出来るが、適切な長さ調節 されたベルトは常に引っ張る力が掛かっているので戦闘行動中に簡単に外れる事は無い。 画像のベルトは1942年製で、フック金具は鉄製の物が使われているが、1940年頃ま でに生産されたベルトにはアルミ製の金具が使われていた。ベルトのメーカー、製造年、サイズ等(部隊の刻印も打刻されている場合がある。)の刻印について はまた別の機会に紹介したいと考えている。 |
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下士官・兵用ベルトは厚さ4mm、巾45mmの革から作られており、長さ調節用ベルトは 厚さ2,5mm、巾33mmの革から作られている。これらは通常生成りの糸(白)で縫製されている。ベルト表面はしっかりとなめされていて通常エッジは綺 麗に面取りが施されている。最近は生産年が初期でアルミ製金具を使用しているにも関わらず、この面取り加工が雑で革の臭いが残っているフェイクが多いので 購入時には注意が必要である。 |
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装着した状態のベルトとバックルを上から見る。 こうして見るとベルトを外す時には、ベルトを緩めながらバックルを外側に若干引く必要が あるのが理解出来る。 これが簡単な構造の割りに信頼性が高い秘訣だとも言える。 |
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