このページでは、ドイツ軍の編上靴を紹介します。
   
はじめに
 
今回はドイツ軍の編上靴を紹介する。編上靴は靴の裏側に鋲を打ってある戦闘用の物と、鋲 が打っていない営内靴に分類できるが、多くのメーカーが生産に携わったため、非常に多くのバリエーションが存在している。したがって、今回紹介した様な靴 もあったと言う程度に考えて頂きたい。
また、本コンテンツを制作するにあたり、フィンランドのパローラ博物館の画像を提供して 下さったKI-100さんに、この場で感謝の意を表します。
    
 
編上靴と靴紐・鋲
 
画像左は編上靴と予備の靴紐及び鋲である。
 
ドイツ兵と言うと長靴や半長靴のイメージが強いが、実際には様々な靴があり、編上靴も戦 前から使用されている写真が結構残っている。
 
背嚢装備の中にも編上靴は含まれており、編上靴が必ずしも戦争が激化してから採用になっ た物では無い事を示している。
 
考えてみれば、あの重い行軍靴を四六時中履いていたとする方がかえって不自然だろう。
軍用の多くの革装備がそうであった様に、行軍靴には足を負傷から守るという意味合いが あった様に思われる。
 
 
編上靴
 
編上靴というと、あの布製の短ゲートルがペアの様に思 われるが、あの短ゲートルも資料によると1940年には採用になっており、TPOでどの靴をどの様に履くかは指示が出されたのだと思われる。
ここらへんは基本的と思われるが意外に良い資料が見つからない分野でもあり、今後とも一 次資料を含めて調べてみたい。
なお、官給の靴の耐用期間は17ヶ月とされており、期間内に損傷した場合は修理可能な場 合は中隊付靴職人等によって補修修理され、期限が来ると古い物は回収されて代わりに新品が支給される事になってはいたが、実際にはなかなか規定通りには支 給回収は行われなかった。
 

 
靴の裏側

靴の裏(ソール)は皮製であるが、土踏まずより前は厚みを厚くしてあり、鉄製の鋲 が打たれている。
この鋲は屋外行動の際のすべり止めと、靴底の保護を目的としているが、硬く平滑な石材の 床などでは滑ってしまう。
つま先にも半月金具が付けられている他、踵にも馬蹄形金具が付けられているが、これらの 金具は主に靴の損耗を防ぐ目的で付けられている物である。
 
 

 

 
 
靴の裏側の鋲
 
靴の底に打たれている鋲のアップ。
鋲も実際にはサイズ・形状のバリエーションが存在するが、これは紹介している靴に使用さ れている物と同じ形の物。
行軍靴のコンテンツで既に説明しているが、冬の東部戦線では、この鋲が靴底の温度を下げ てしまい、着用している兵士の凍傷の原因になったと言う。
 
 
鋲と半月金物
 
既に各金物の目的に付いては大まかな説明をしたが、この鋲は野外ではなかなか良好なグ リップを発揮する。靴底に何も施されていない平滑な革底の靴と比べると、その性能には雲泥の差であるが、反面石畳等の上では大きな歩行音がする欠点もあっ た。
また磨いた石の床などの上では滑って危険ですらある。戦争の全期間を通じてこの点に関し てはあまり改良がなされた様子が無い様で、私自身としては極めて不思議に思っている。(旧日本軍などでは、靴底に鋲が打ってある靴は行軍靴として使用し、 実戦では地下足袋が活躍したそうである。)
 

 
踵の馬蹄形金具等
 
踵に関しては、当時既にゴム製の物も作られていたが、この靴には革製の踵が付けられてい る。
踵の周囲には馬蹄形の金具が付けられているが、この靴に使われている様に金具の巾より厚 みが厚い物と、逆に巾が広い金具等のバリエーションもあった。
この靴の馬蹄形金具は、踵に取り付けた後から、金工やすりで踵からはみ出した部分を削っ た跡があり、金具のエッジで足を怪我したりズボンを破かない様になっている。

 
踵と踵の金物
 
踵は画像の様に厚い皮の積層で作られている。
画像の一番下の層は馬蹄形金具で、良く見ると20Lと刻印が打刻されている。
あと、この画像では靴底に暗く写っている部分があるが、これは踵を交換した痕跡で、踵の 交換時に以前とは異なる形状の踵が付けられた事がわかる。
靴紐のホールとフック
 
この靴の場合は、4つのホールと4つのフックが付けられているが、この数に関しては色々 なバリエーションが確認されており、全てがホールの物もあった。
ただし、上の方はフック金具の方が、素早く靴紐を緩める事が出来ると言う利点はある。
なお、金具の付いている部分は裏側に補強の為、もう一枚革が縫い付けられている。
サイズの刻印等
 
靴類に関しては物によって様々な刻印が打刻されているが、今回紹介するこの編上靴の場合 は画像の様に、靴の内側の踵の部分にサイズを表す”43”の刻印が打刻されている。ドイツ軍の装備はサイズを独特のシステムで表示している物もあり、対応 表が無いとわからない物もあるが、野戦服や帽子に関してはcmによる表示が標準的である。しかし、靴に関してはこの様にcmでは無く、元々靴の業界で使わ れていたサイズ表示が採用されていた物が多い。
 
靴紐
 
ドイツ軍が使用した靴紐には、画像上の様ないわゆる靴紐と、画像の下の方にある皮紐が あった。
コットン製の靴紐は、巾が約5mmで厚みは約1,5mmのいわゆる靴紐だが、黒と茶色の 物が作られていた。革製の靴紐は厚みが約3mmの革を紐状に切って作られており、断面形状は丸と言うよりは四角に近い。靴紐はその性格上、わりと安定供給 されていた様で、本来の目的以外に迷彩スモックの紐代わりに使われたり、皮紐は認識票をぶら下げるのに使われたりもしていた。
 
 
靴紐:Schuhriemen
 
これはデッドストックの靴紐で、包装の裏側にはサイズ(長さ)はセンチでスタンプされて いる。因みにこれは100とスタンプされているので長さが1mの物である。
 
   
パローラ博物館の展示から
  

 画像提供 KI-100氏
パローラ博物館所蔵の編上靴
 
これはKI-100氏がフィンランドのパローラ博物館で撮影されたドイツ軍の編上靴の写真であるが、極めて標準的な編上靴の未使用品で ある。
多くの編上靴は画像の様に生成りの革で作られており、未使用の場合はこの様に茶色をしている物が多い。
上で紹介した編上靴と基本的な作りは似ているが、つま先の金具の有無や、靴底の鋲の打ち方等が異なっている。

 画像提供 KI-100氏

パローラ博物館所蔵の編上靴
 
この画像では、踵の部分に付けられた馬蹄形金具の断面形状が良く判る。
また、縫製に使用されている糸が白糸である事や、踵に使われている革の表面処理等にも注目してもらいたい。
  
   
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30.Nov.2000 公開
16.Sep.2001 改定
  
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