ここでは、ドイツ軍の使用していたコップ付き水筒の展示 をしています。
     
はじめに
 
ドイツ軍の水筒と言っても、用途や材質、製造会社や製造年等の違いで極めてバリエーショ ンが多いアイテムで、細かく見ていくと同じ物に出逢う事が難しい位だが、今回は代表的な物を紹介する事にする。
   
 
 
 
コップ付き水筒(0.8L)

お馴染みのアルミコップ付き水筒。
この水筒は、内容量0.8Lのアルミ製ボトルと、フェルトカバー、キャリングストラップ とアルミ製コップ(内容量0.35L)で構成されている。
採用は1931年で当初アルミコップは黒に塗装されていたが、1941年4月の通達でオ リーブグリーンに塗装されるよう変更された。
ちなみに写真左の水筒本体は1939年FSS社製、ただしアルミカップは1940年 HRE社製。この様に現存する水筒の多くが本体とカップやフェルトカバーの刻印やスタンプが異なっているが、支給された時点では一致していた為、全ての刻 印、スタンプが一致する物をマッチングペアと区別している。
 

 
 
 
コップ付き水筒(0.8L)

上の水筒の裏側。キャリングストラップのナス環が左の物がアルミ製で(1939年 製)なのに、右の物は鉄製に(1943年製)なっているのに注意。
アルミニュウムは航空機の材料として、必要不可欠の物だったため、概ね1942年頃迄 に、通常の装備品から姿を消している。
ただし、水筒のコップに関しては1945年の刻印のあるアルミ製コップが多数現存してい る。これらは必ずしもデッドストックでは無く、もしかすると航空機工場が被災したため、再び防錆処理をしないで済むアルミ製のコップを作ったとも考えられ る。
 

 
 
 
コップ付き水筒(0.8L)

この写真の水筒本体は両方共1939年製でアルミで作られているが、後に鉄製の水 筒も作られた。
また、水筒のキャップは写真左の物が1939年製で材質はアルミ、右の物は1943年製 で、プラスチック製になっているが、キャップは概ね1941年頃からプラスチック製に移行したようである。
各部のディティールに付いては後程詳しく紹介するが、細かく観察すると実に様々な違いが 発見出来、水筒のバリエーションを専門に集めるコレクターがいる程である。
 

 
 
 
コップ付き水筒(0.8L)

この水筒は、私にとっては特別の意味のある物で、元ドイツ兵を父親に持つドイツの 友人から譲り受けた物である。
水筒本体は、上で紹介した容量0.8Lのアルミ製の物で、1940年に作られた物だが、 コップの方は鉄製で1943年製である。これは、当時コップのみを再支給されたか、購入した事を示しており、使用痕跡のある水筒の刻印やスタンプが必ずし もマッチングペアである必要が無い事を証明している。ちなみに、この水筒はスターリングラード帰りと言う曰く付きの物で、所有者は陸軍の工兵として従軍し ており、負傷の為スターリングラードが包囲される前にドイツに後送されたそうである。
 

 
 
 
コップ付き水筒(0.8L)

話がそれたが、この水筒はキャリングストラップもブタ革製で、後から交換された物 の様だ。更にこのストラップのバックル金具は一部壊れており、上の写真で見るとストラップが白っぽくなっているが、これは金具が擦れたキズである。
フェルトカバーも1943年製で、おそらく水筒本体以外全て交換した物と思われる。
コップは後期型の鉄製で、表側はオリーブグリーン、内側は錆止めのプライマー処理となっ ている。
この水筒は、スターリングラードから帰還後、持ち主の転属に伴って、終戦まで西部戦線も 経験しているそうである。
 

 
 
 
コップ付き水筒(1L)

この水筒は、上の水筒より一回り大きく、内容量も1Lになっている物で、当初は山 岳部隊用として支給された。
写真左の水筒はデッドストックのマッチングペアで水筒本体、フェルトカバー、キャリング ストラップに全て1942年WAL社製を示す刻印かスタンプを確認する事が出来る。
写真右は、同じくWAL社製で1941年に作られた物。キャリングストラップがウェヴ製 である事から、熱帯仕様である事が判る。
コップはアルミ製だが、製造年は1945年製になっている。
 

 
 
 
コップ付き水筒(1L)

上の写真の裏側を写した物であるが、このタイプのフェルトカバーはこの様に裏側が 補強されているのが興味深い。これはやはりこの面が雑嚢の擦れる為、良く穴が空いたりした為の対策だろう。
また、同様の理由でコップの当たるボトルネックの部分も補強されている。
最初にこの1Lタイプの水筒は、山岳猟兵用と書いたが、降下猟兵やアフリカ軍団でも使用 された他、一般の兵の使用例も写真等で確認できる。
また、例によってこのウェブ製ストラップはアフリカ戦終了後は他の戦線で使用されてい た。
 

 
 
 
コップ付き水筒(1L)

この様に同じメーカーの物で製造年が違う物を集めるのも結構面白いが、水筒ばかり 100個以上収集しているコレクターの話によると、現存する1Lタイプの水筒の多くが、1941年から1943年までの期間に作られた物の様である。
黒のベークライト製コップは、ストラップがずれない様に底の中央に窪みが作られているの に対し、アルミ製のコップの方はストラップを通す為の金具が付けられているのが面白い。 
また、1Lタイプの水筒は衛生兵にも支給されていたが、衛生兵用の水筒は肩から下げる事 が出来るスリングが付けられていた。
 

 

 
 
コップ付き水筒(0.8L)

この水筒は、”熱帯用タイプ”と言われている物で、フェルトカバーの代わりに樹脂 で固めた木製のカバーが付けられている。
コップに関しては、これもマッチングペアでは無いので、当初は取っ手付きの大きいコップ が付けられていた可能性が高いと思っている。
木製カバーには、キャリングストラップを通す為のループが縫い付けられない為、キャリン グストラップが十字に交差した作りになっている。
また、このタイプの水筒も他の多くの装備同様、アフリカ戦線終結後には他の戦線でも使用 された。
 

 
コップ付き水筒(0.8L)

上の写真の水筒のコップを外したところを示す。

キャリングストラップがボトルネックの部分もベルトで固定出来るように作られてい るのが面白い。

また、この水筒のキャップはベークライトで作られていて、色も茶色になっている が、炎天下のアフリカでは、黒のベークライトや金属製の物は触れない程熱くなった為かもしれない。

上のキャプションで書き忘れたが、この水筒の裏側には写真にも写っている通り、丸 の中にD.R.G.M. H.R.E.41 D.R.P.angmと刻印がプレスされている。

また、コップの方にもH.R.E.45の刻印があるので、同じメーカーの物である 事が確認できる。
 

 
 
 
コップ付き水筒(0.8L)
 
この水筒は末期型と分類されるタイプである。
水筒のボトルは鉄製で、カバーは再生ウール製、更にキャリングストラップは2ピースのタ イプが使われている。ストラップにはRB.Nr0/0570/0036の刻印が打刻されており、ナス環はダークグリーンに塗装された鉄製である。コップも 鉄製で、FSS43の打刻入り、表側はオリーブグリーン、内側は錆止めのプライマー処理となっている。
また、再製ウール製のカバーには”Feil”と書かれているが、これは所有者の名前と思 われる。
 
 

堀内氏コレクション

 
山岳猟兵用水筒(1L)
 
前述の様に、山岳部隊では当初から1Lタイプの水筒が採用されていた。
補給が難しく、大容量の水筒が欲しいところであるが、携行性との兼ね合いから大きさが決められたのであろう。
リュックサック等、特殊な装備法に対応するため、この水筒にはウエストベルトに引っ掛けるフックの他に、肩から下げる事が出来るスト ラップが付けられている。
衛生兵もストラップ付き1Lタイプの水筒を採用していたが、これはまた別物であった。
 
   
水 筒 の 装 着 方 法
   
 
 
装着金具とベルト

野戦装備において、水筒は通常写真の様に雑嚢に取り付けて携行される。
具体的な取付は、雑嚢のDリングに水筒に付けられているナス環を引っかけて、更に雑嚢の ループにスリングベルトを通して固定される。
2点で支持する形になっている為、雑嚢とはかなりしっかり固定できる様になっている。
この他に、Dリングの付いた革製、または布製のベルトループに引っかけて、携行する事も あった他、衛生兵用水筒の様に水筒の方に肩から下げるストラップが付けられているタイプもあった。

 
 
初期型雑嚢と水筒(0.8L)

ベルトループに革の補強の付いた、初期型雑嚢に装着したコップ付き水筒。
初期型雑嚢のDリングやボタン等の金具がアルミ製なのに注意。雑嚢は1942年頃迄はこ のタイプが作られていた。
水筒と雑嚢の位置関係を見ると、水筒のナス環がコップよりも少し上に出ているので、雑嚢 のDリングが見えている。
モデラーの方々には、水筒と雑嚢を接着する時の参考にして頂きたい。
なお、戦前のマニュアルによると、水筒は写真と違って雑嚢の左側のDリングに装着する事 とされていた為、戦争初期には水筒を左側にぶら下げている兵も少なくない。

 
 
中期型雑嚢と水筒(1L)

1942年頃から支給された、中期型雑嚢との水筒。
雑嚢に関しては、既に雑嚢のコンテンツで紹介したが、この写真でも判る様に、Dリングや ボタン等の金具が全て鉄製になっているのに注意して欲しい。

この水筒の場合は、コップの背が高い為、上の写真のように雑嚢のDリングを見るこ とが出来ない。

写真では便宜上中期型雑嚢と1Lタイプの水筒を組み合わせたが、これは色々ある組 み合わせの一つと理解して頂きたい。雑嚢にしても水筒にしても在庫がある限り支給され続け、使用されていたので、末期に初期型の物を装着している兵士も当 然いる訳で、むしろ初期に後期のアイテムを選択する事だけ注意して欲しい。 

   
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12.Dec.1999 公開
25.Jul.2002 改定
  
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