ここでは映画「戦争のはらわた」の字幕について考察しています。
     
はじめに

今回、あの不朽の名作「戦争のはらわた」がリバイバル公開されるのに伴い、戦争映 画専門サイト「CROSS OF IRON」の主宰者bouzeさんより、字幕に関する考証のお手伝いを依頼され、当サイトでもオフ会等を開催してまとめた事をアップする事にしました。実 際にあらためて観ると、この映画は挿入歌、小物等も良く考証されており、それらの意味を知ると知らないでは、かなり意味合いが変わってくる様に思いまし た。

この様な機会を与えてくれたbouzeさん、並びにケーブルホーグさん、字幕を制 作された落合さん、さらにはオフ会に参加して、様々な資料を提供して下さった皆様に感謝すると共に、このコンテンツがこの映画を鑑賞する方々にとって「よ り楽しく観る」為の一助となれば幸いです。

なお、この結果は映画公開後に発売されるソフトに反映される予定です。

    
映画「戦争のはらわた」字幕に関する資料
(1999年12月19日のオフ会より)
   
以下、試写会での英語版とドイツ語版ビデオを比較して作成した物ですが、試写会 は1回しか観ておらず、ドイツ語版もシーンカットがあるため、その範疇でのまとめです。 

 1、マイヤーとトリエビヒ(トリービッヒ)の階級は中尉では無く少尉 です。 

 2、ストランスキー → シュトランスキー 

 3、スタイナー → シュタイナー 

 4、カーン → ケルン 

 5、シュネルバート → シュヌルバート (シュトランスキーに紹介する際、階級は上級兵長が正しい) 

 6、ディッツ → ディーツ 

 7、クルーガー → クリューガー 

 8、フレデリック・フォン・バーナード → フリードリヒ・フォン・ ベルンハルディ 
    (フリードリヒ・フォン・ベルンハルディ・フォン・プロイセンと思われる) 

 9、クラウゼビッツ → クラウゼヴィッツ 

10、マイヤーが戦死する戦闘シーンでのシュタイナーのセリフ 
      「撃て!」は「マイヤー!」が正しい。 

11、シュトランスキーのセリフ「こちら大尉!」 → 「こちらシュトランス キー!」 

12、シュトランスキーのセリフ「負傷にもめげず!」 → 「負傷しました!」  
      特にこのセリフはシュトランスキーの性格を表す物として重要で、戦闘が始まると情けない指揮官であった事を表す意味でも
      「めげず」の部分は削除願います。 

13、ホローバック → ホラーバッハ 

14、病院にやってくる将軍の名前 → ケーリングスホーフェン 

15、シュトランスキーに依って昇進させられたシュタイナーであるが、戦闘で負傷 して入院。病院のパーティーシーンでは
      再び昇進して曹長になっている。
       しかし、字幕では軍曹のままで間違っている。ただし、この軍曹と曹長の階級の差が判りにくい様であれば、
      シュトランスキーに昇進させられた時点から曹長に統一してはどうか?と言うのが、今回のオフ会での見解です。

16、シュタイナーが、病院のバルコニーから路上のトラックの脇にいる規格帽を 被った下士官に「Corporal !」と
      呼びかけるシーンがあるが、この下士官もシュタイナーと同じ階級であり、「曹長!」とするのが正しい。

17、ゾル → ツォル 

18、マーグ → マーク 

19、ハートウィッグ → ヘルヴィック 

20、シュタイナーの復帰後、シュトランスキーのセリフで「ワイマール将校云々」 と言うのがあるがヴェーアマハトオフィサーは
      国防軍将校と訳すべきで、字幕では「陸軍将校」とすれば良いと思う。
     (ワイマール将校ではプロイセン貴族の誇りとは無関係になってしまう。) 

21、病院のシーンで将軍が来た時歌われた曲。 
       下記参照。

22、通信兵の名前 → ヴォルフ 

23、ラストシーンのシュタイナーとシュトランスキーの会話 
      シュタイナーのセリフ「鉄十受章の取り方を教えてやるぜ!」が正しい。 

24、ブラント大佐のセリフ「わしも闘うぞ!」 → 「逃げるな!闘え!」  

以上Pucki氏のレジメにオフ会メンバーが話した結果を少し加えた物です。  

その他の事項

冒頭のシュタイナー小隊が帰ってきた時のキーゼル大尉の「やっぱり」はニュアンス としては「当然」の方が良い。

シュトランスキーの着任時、キーゼルの紹介は「副官のキーゼル・・」になっている か確認して欲しい。

シュタイナーとシュトランスキーの出逢いのシーンのシュタイナーが軍曹になった時 のシュトランスキーのセリフの「昇格が嬉しく無いのか?」の昇格は昇進の方が良い。

マイヤー少尉が戦死する戦闘でシュトランスキー大尉が連隊に連絡するシーンで「擁 護」と言う単語が使われていたが、「援護」か「支援」若しくは「増援」の方が軍隊らしいと思う。

最後のシーン。「鉄十字軍がどの様な物か見せてやる」の「鉄十字軍」は「鉄十字 章」に。

字幕とは直接関係がありませんが・・・ 

シュタイナー軍曹が病院から前線に復帰し、シュトランスキー大尉と鉄十字章の推薦 を要求するシーンのバックに、 
R・ワーグナー/楽劇「ニュールンベルグのマイスタージンガー」 第1幕への前奏曲が流れています。 
ワーグナーの題材は神秘的な伝説が多い中、「靴屋の親方」を題材として いるこの曲をこのシーンで採用しているのは、シュトランスキー大尉の「血統と階級」説をある意味で矛盾させているようで、興味深い。 

オフ会参加者: STEINER・Hawkeyeさん・おでっささん・クボヒロさん・Puckiさん・Adlonさん・ 08/15さん(順不同)
 

    

タイトルバックの挿入歌:「小さいハンスちゃん」 
日本では「ちょうちょ」で有名な曲です。

Haenschen klein ging allein in die weite Welt hinein 
Stock und Hut steht ihm gut,ist gar wohlgemuet. 
Aber Mutter weinet sehr, hat ja nun kein Haenschen mehr: 
"Wuensch' dir Glueck !",sagt ihr Blick "kehr nun bald zuruek !" 

小さいハンスちゃんは一人で広い世界に出かけた。 
杖と帽子もお似合いで、とってもいい気持ち。 
でも、お母さんは大泣きだ。ハンスちゃんはもういない。 
「幸せにね。早くお帰りよ。」 

Sieben jahr'trueb und klar Haenschen in der Fremde war, 
da besinnt sich das Kind eilet heim geschwind. 
Doch nun ist's kein Haenschen mehr, nein, ein glosser Hans ist er, 
braungebrannt Stirn und Hand. 
Wirt er wohl erkannt 

ハンスちゃんが外国に行き、晴れたり曇ったりして7年が過ぎ、 
思い出したよ、ふるさとを。急いで帰ったのは良いけれど、 
大きなハンスになっていた。茶色く日焼けた顔や手で 
ちゃんとハンスと分かるかな? 

Eins,zwei,drei,geh'n vorbei wissen nicht wer das wohl sei, 
Schwester spricht: "Welch Gesicht",kennt den Bruder nicht ! 
Doch da kommt sein Muetterlein, schaut ihm kaum in's Aug'hinein, 
spricht sie schon:"Hans,mein Sohn, Gruess dich Gott, mein Sohn !" 

おいっち、に、さん、ハンスが通り過ぎたけど 
みんな誰だか分からない。妹さえ「あんた誰」、兄さんの 
顔が分からない。でも母さんは見つけるや、すぐに言ったよ 
「ハンス、私の息子、お帰り!」と。

    

マイヤー少尉の誕生日のシーン 
「誕生日の歌」 

Hoch soll er leben , hoch soll er leben , dreimal hoch ! 
Alt soll er werden , alt soll er leben , dreimal hoch ! 
Er lebe hoch ,hoch , hoch , 

彼の健康と長生きを祈って万歳三唱! 
長生きするぞ、長生きするぞ、今の3倍!
マイヤーくんの長生きを祈って、万歳、万歳、万歳! 

パーティーをぶち壊しにしてから歌う歌。 
ヴェスターヴァルトの歌 

Heute wollen wir marschier'n, einen neuen Marsch probier'n, 
in dem schoenen Westerwald , ja, da pfeift der Wind so kalt. 

映画ではここから歌い出します。 

Oh, du schoener Westerwald ! Uber deine Hoehen pfeift der 
Wind so kalt, jedoch der kleinste Sonnenschein 
dringt tief ins Herz hinein. 

今日われらは、美しいヴェスターヴァルトを行進しよう。 
新しいマーチを奏してみながら。そうだ、そこでは風が 
大変涼しくそよいでいる。 

おお美しのヴェスターヴァルトよ!。その高地では風が大変涼しく 
そよいでいるが、ごく僅かの太陽の光が 
心に深く入り込んで来るのだ。 

    
病院のシーンで将軍が来た時歌われた曲。 

『世界の腐った奴等はふるえる』 

Es zittern die morschen Knochen 
der Welt vor dem grosen Sieg.(元歌:vor dem roten Krieg) 
Wir haben den Schrecken gebrochen, 
fur uns war’s groser Sieg. 
Wir werden weiter marschieren, 
wenn alle in Scherben fallt. 
denn heute da hort uns Deutschland, 
und morgen die ganze Welt. 

世界の腐った奴等はふるえる。 
われ等の大勝利を前に。 
われ等は恐怖に打ち勝った。 
それは大いなる勝利。 
われ等はさらに進む 
身は粉と砕けても。 
今日はドイツがわれ等に従い 
そして明日は全世界が。 

    

シュタイナー達がドイツ軍戦線に復帰しようとロシア軍 の中を密かに移動している最中にハーモニカ伴奏で歌う歌

 Im Feldquaritierの歌詞 

Im feldquartier auf hartem Stein 
streck ich die mueden Glieder, 
und sende ich in die Nacht hinein, 
der Liebsten meine Lieder. 
Es muss ja ich alleine sein←この行より通常と違う歌詞になっている。 
aus meiner Kompanie. 

通常の歌詞 
Nicht ich allein habs sogemacht,Annemarie ! 
Von der Liebste traumte bei der Nacht die ganze Kompanie 

「野営の歌」(アンネマリー) 

硬い石の野営の床に、疲れた手足を伸ばし 
僕は夜の暗がりの中に歌を送る。 
大好きなあの娘のところヘ。 
こんなことをしているのは、うちの中隊じゃ僕だけさ。

本来の歌詞 
こうしているのは僕だけじゃない、アンネマリー! 
夜、恋人を想っているのは、中隊、全員なのさ。 

    
    
ここからは、当初全く無視されていたロシア語の日本語訳を、桜樹ルイ16世さん のお知り合いのオクサーナさん(日本語の堪能なロシア女性です。)の協力で訳して貰った物です。

(各経過時間はレーザーディスク版を基準にしています)

約6分30秒時点

「撃ち続けろ」(上官)   
「わかりました大尉」(兵士)
(上記やりとりの繰り返し)
「当たったみたいだ」(不明)
「命中した」(兵士)
「味方の損害がかなり増えてます」(兵士)
「敵も長くは持ちこたえられないだろう」(不明)
「そうでしょうね」(兵士)
「弾薬はあと1時間分あります」(兵士)
「煙で何も見えない」(兵士)
「気をつけろ!」(不明)

約1時間21分10秒時点 工場の場面

「逃がすな!」
「ドイツ野郎を撃て!」
「(不明)!」
「やつら、もう逃げられないぞ」

約1時間25分時点 橋の場面

「腹減ったぞ。何か食い物をくれないか? このままじゃ死んじまうよ」
「さっき食ったばかりじゃないか」
「こんな重労働だからな、すぐ腹が減ってたまらん」
「そういや故郷から手紙きたか?」
「ああ、昨日」
「何て書いてあった?」
「うちにはもうパンひと切れすらない、ってさ」

約1時間31分45秒時点

「泣かないで」
「(不明)」
「だって、手伝ってるじゃない!」
「こっちの方が大事よ! 今、前線では武器が必要なの!あんたみたいな女は地獄に落ちる がいいわ!」
「...私のナイフはどこ?」
「お黙り! 仕事しなさい!」
(約1分ブランク)
「泣かないで」
「おちついて」
「『松』応答せよ(その後不明)」(無線手)
「命令どおりに作業しております」
「あのあたりってどのくらい犠牲者出たの?」
(ドイツ兵が侵入してくる)
「脱げ!」
「制服と体をよこせ!」
「脱げと言っただろ!」
「じっとしてなさい」
「けだもの! けだもの!」
「ドイツ人め! 彼女を殺すなんて!」
「受け取れ」(3回繰り返す)
「ほら見て見て、何てかわいい....」
「あんた、この武器っておもちゃなの?遊ぶ以外に何ができる?」
「静かに静かに静かに.....」

約1時間42分10秒時点

「ああ、俺の足!」
「もうすぐメシだぞ」
「今日は何が出るかな?」
「ハト麦のスープらしいよ」
「ああ、あんなものばかり食ってたら餓死しちまう!」
(スタイナーの一行に気づいて)
「止まれ! 誰だ!?」
「第25小隊だ。捕虜を2人連れている」
「敵は捕虜にせず殺せ、と命令されているだろう。どういうことだ!?」
「ソ連邦最高会議の命令だ! 別に、あんたたちにこいつらを引き渡してもいいんだが」
「ごめんだね。じゃあ通れ」
(少し経って)
「だまされた! さっきのやつらはドイツ野郎だ!」
「ドイツ野郎が逃げやがったぞ!」

以上

    
    
ブレヒトの詩の訳について。:by BD6さん

最後の最後に出てくるブレヒトの詩(?)ですが、原文はこうです。

Don't rejoice in his defeat, you men
For Though the world stood up and stopped the bastard,
The bitch that bore him is in heat again

意味は直に訳すと

あの男が敗北したからといって、喜ぶのは早いぞ、諸君世界は立ち上がり、あの外道 を阻止したがヤツを産んだメス犬に、またさかりがついているのだから

くらいの感じだと思うんです。要するにブレヒトが言いたいのは、世界はヒトラーの 歪んだ野望を粉砕したけれど、その野望を産み出したもの、民族差別、貧困、全体主義、軍事力への崇拝……こうした土壌はまだ消えていない、条件さえ揃え ば、また第二次世界大戦のような悲劇が起きるんだ、ということでしょう。《メス犬》はこうした悲劇の土壌のシンボルだと思います。みなさんに評判の悪い、 戦後のアフリカや東南アジアの戦争の写真をスライド風に流すエンディングは、ブレヒトのこのフレーズにインスパイアされたものじゃないでしょうか。

で、字幕なんですが、なぜか

社会が立ち直り、平和になってもかれを悩ませたメス犬がまた発情しているぞとなっ ています。

「社会が立ち直り、平和になっても」は意訳の範囲としても、「かれを悩ませたメス 犬がまた発情しているぞ」はどうみても誤訳じゃないでしょうか?たぶんboreを「うんざりさせる」「退屈させる」の意味にとったんだと思います。でもそ れだと、関係代名詞thatの先行詞がThe bitchなので、boresかboredに変化しなければならないんです。だからここは普通にbear(産む)の過去形boreだ、ととるべきだと思う のですが……

    
ここで紹介した内容については、全て翻訳を担当されている落合氏にお知らせして ありますが、映像の長さとの関係や、わかりやすさと言う意味で全てが今後発売されるDVDソフトに反映される訳ではありません。結果は是非ソフトを購入し てご覧下さい。
今までのソフトとかなり印象の違う「戦争のはらわた」を楽しんで頂ける物と確信していま す。

なお、このコンテンツを作るにあたり、オフ会に参加して下さった皆さん、桜樹ルイ 16世さん、オクサーナさん、bouzeさん、画像提供をして下さったケーブルホーグさんにあらためて感謝の意を表します。

    
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14.Mar.2000 公開
12.Oct.2002 更新
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