ドイツ語のカタカナ表記マニュアル
   
はじめに

今回は、ドイツ軍マニアの為の「ドイツ語のカタカナ表記マニュアル」を作成しまし た。
今後、各方面で正確なカタカナ表記が使われ、他の分野から観てもおかしくない文章が普及 する為の一助になる事を望むものであります。
このコンテンツ作成にあたり、多大な協力と資料提供をして下さった「おでっささん」と 「柴田和久さん」に改めて謝意を表します。なお、本稿は柴田さんの「なじみの単語で検証するドイツ語カタカナ表記のルール」(GP誌掲載)を下敷きに作成 しました。

一体何が違っていたのか?

ここで、語学のホームページでも無いのに何故改めて「カタカナ表記」を取り上げた のかと言いますと、あまりにも基本的な語句の読み方が誤った読み方で通称となっているからであります。
例えば:ドイチラン・・・正しくははドイチランでありますが、これは仮にもドイツ軍マニアを自称する者にとって大問題では無いでしょうか?
中には、銃器メーカーのMauser:モーゼル・正しくはマウザーやWalther:ワルサー・正しくはヴァルターの様に既に通称としてすっかり定着し、今更変 更の困難な語句もあるかもしれませんが、今回は敢えて正しい表記をする事で問題提起をする事にしました。
ただし、カタカナ表記が完全に発音を再現出来る物では無い事も事実で、許容範囲という意 味で一部通例に従った表記を採用した部分もあります。

カタカナ表記の為のドイツ語概論
まずはドイツ語のアルファベート

まずは、全ての基本となるドイツ語のアルファベートを表記しておこう。

A:アー ・ B:ベー ・ C:ツェー ・ D:デー ・ E:エー ・ F:エフ ・ G:ゲー ・ H:ハー ・ I:イー ・ J:ヨット ・K:カー ・ L:エル ・ M:エム ・ N:エン ・ O:オー ・ P:ペー ・ Q:クー ・ R:エル ・ S:エス ・ T:テー ・U:ウー ・ V:ファオ ・ W:ヴェー ・ X:イックス ・ Y:ユップスィロン ・ Z:ツェット ・

ドイツ語の発音と言語としての一般的特徴

1、上記のアルファベートが読めれば基本的にはローマ字読みで良い。(例外は後程 説明する。)

2、英語などより規則的で、同じ組み合わせの文字は基本的に同じ発音になる。
    (ただし外来語や複数の単語を合わせて作った合成語はこの限りでは無い。)

3、そもそもの発音自体がカタカナ音に似ている。(カタカナ表記はかなり有効であ る。)

4、文章の初めや固有名詞でなくても、名詞(代名詞以外)の最初の文字は大文字で 書き始める事に
    なっているので、品詞の識別が容易に出来る。

5、複数の名詞を連ねて新造語を造る特性があり、各単語の間を空けずに一気に書き 綴る為
    (ハイフンでつなぐ場合もあるが)、やたらと長い名詞が存在する。
    ReichsbetriebsnummerはReichs betriebs nummerとは書かない。また、この様に長い単語が造語
    される為、略語も多く使用される。Reichsbetriebsnummer =RB.Nr といった感じである。

6、名詞に性がある。これは日本語には無い為解りにくいが、男性・女性・中性の3 ツの性がある。
    ちなみにHose:ズボンやHosetasche:ズボンのポケットは女性名詞だがHoseträger:ズボン吊りは
    男性名詞である。

具体例を挙げながら発音と表記のルールを見ると

母音の表記
ローマ字読みをしない母音の組み合わせ。

長母音

ie:[イー]と発音する。
Kriegsmarine[クリークスマリーネ](海軍) ・ Fliegerbluse[フリーガーブルーゼ](飛行服)

●同じ母音を重ねた綴りaa,ee,oo,は長母音となる。
Heer[ヘーア](陸軍) ・ U-Boot[ウーボート](ドイツ海軍潜水艦)

●母音+hも長母音となる。(hは無声音)
Stahlhelm[シュタールヘルム](スチールヘルメット) ・Gewehr[ゲヴェーア](小銃) ・  Wehrmacht
[ヴェーアマハト](国防軍) ・ Hohenstaufen[ホーエン シュタウフェン]
Zeltbahn[ツェルトバーン](迷彩ポンチョ)

●固有名詞特有の綴りで、語末の〜owは、上のhと同様wは無声音となる。
Lützow[リュッ ツォー](第37SS騎兵師団)

二重母音

●ei(eyも同じ):[アイ]と発音する。
Deutsches Reichs Patent[ドイチェスライヒスパテント](ドイツ帝国特許) ・ Polizei[ポリツァイ](警察)
Meyer[マイアー](人名) ・ Florian Geyer[フローリアン ガイアー](第8SS騎兵師団)

ここでワンポイント
zwei[ツヴァイ](基数の2)やdrei[ドライ](基数の3)の関連で Zwischenlösung(暫 定的解決)や Drilling
(三連装)を[ツヴァイシェンレーズング]とか[ドライリング]と表記している場合があるが、これは
[ツヴィッシェンレーズング]と[ドリリング]が正しい。

英語では i が一文字で[アイ]と発音される場合があるが、ドイツ語ではローマ字と同じで[イ]と発音する。したがってはMine[ミーネ](地雷)と表記する。

●au:実際の発音は[アオ]に近いが、今回は通例に従い[アウ]と表記する。
Panzerfaust[パンツァーファウスト](携帯式対戦車兵器) ・ Mauser[マウザー](銃器メーカー・通称モーゼル) ・ Paul hausser [パウル・ハウサー](人名)

●eu(äuも同じ): [オイ]と発音する。
Deutschland[ドイチュラント](ドイツ) ・ Brotbeutel[ブロートボイテル](雑嚢)
Prinz Eugen[プリンツ・オイゲン](第7SS山岳師団「オ イゲン公」)

変音『ウムラウト』

ä(aeに同 じ):日本語の[エ]に近い音。[ア]の形の口で [エ]と音を出す。
Ärmelbänder[エルメルベンダー](アームバンド・袖章) ・ Jäger [イェーガー](狩人・猟兵)

ö(oeに同 じ):[オ]と[エ]の中間音だが、カタカナ表記で は[エ]で代用する。
Königstiger [ケーニヒスティーガー](キングタイガー) ・ Göring [ゲーリング](人名)
Knöbelbecher[ク ネーベルベッヒャー](行軍靴の愛称:サイコロ壺の意)

ü(y に同じ):[ユ]に近い音になる。
Kübelwagen [キューベルヴァーゲン](キューベルワーゲン) ・ Typ[テュープ](タイプ・型)
Feldmütze[フェ ルトミュッツェ](略帽)

ここでワンポイント
Wünsche(人名)が何故か[ヴェンシェ]と表記されているが、正しくは[ヴュンシェ]。
同様にZündapp(オートバイメーカー)は[ツェンダップ]では無く[ツュンダップ]が正しい。

●語末や音節末の〜erは[アー]または[エア]、〜rは[ア]と母音化する。
Tiger[ティーガー](虎) ・ Karabiner [カラビナー](カービン・騎兵銃)
Seitengewehr[ザ イテンゲヴェーア](銃剣) ・ Steyr[シュタイア] (自動車メーカー)

ここでワンポイント
ここ数十年でドイツ語の〜er、〜r の発音は変化してきた。以前はローマ字読みに忠実に r をきちんと発音していたが、しだいに母音化され、特に北西部のライン地方などではその傾向が強く、現在ではむしろその方が主流となっている。
ただし、Werk(工場)の様にアクセントがあるerの場合は人により[ヴェルク]とも [ヴェアク]とも聞こえるが、カナ表記では前者が一般的である。
これは、ドイツ語のrは、「ノドチンコ」を発声の際に息で震わせる音であり、普通に話す と自然と力が抜けて[ア]になってしまう事に起因する。

具体例を挙げながら発音と表記のルールを見ると

子音の表記

●s+母音:sは濁った発音になる。
Eisernes Kreuz [アイゼルネス クロイツ](鉄十字章) ・ Soldbuch [ゾルトブーフ](給与支給帳)

●エスツェット<これも表示出来ない>(ssに同じ):清音になる。
Grossdeutschland[グロースドイチュラント](大ドイ ツ) ・ Preussen[プロイセン](国名)
Zeiss[ツァイス](光学器メーカー)

ここでワンポイント
エスツェット(ss)の発音は、スである。シュの音はsch[シュ]sp[シュプ]st[シュト]の3つに含まれる。
また、ssの様に同一の子音が重複している場合、その直前の母音は必ず短母音となる。
Galland(人名)は[ガーラント]ではなく[ガラント]が正しい。
同様にLuftwaffe[ルフトヴァッフェ](空軍) ・ Koppelriemen[コッペルリーメン](ベルト)

●語頭のstは[シュト]と発音する。
Steiner[ シュタイナー](人名) ・ Stielhandgranate[シュティールハントグラナーテ](柄付手榴 弾) 
Stiefelhose[シュティーフェルホーゼ](乗馬ズボン) ・ Sturmgewehr [シュトゥルムゲヴェーア](突撃銃 )

●語頭のspは[シュプ]と発音する。
Springerhose [シュプリンガーホーゼ](降下ズボン) ・ Spiess [シュピース](曹長)

●schは[シュ]と発音する。
Schwimmwagen[シュヴィムヴァーゲン](水陸両用車) ・ Schutzstaffel[シュッツシュタッフェル](親衛隊)
Schulterklappe[シュルタークラッペ](肩章) ・ Magazintasche[マガツィーンタッシェ](マガジンポーチ)

●tschは[チュ]と発音する。
Deutschland[ドイチュラント](ドイツ) ・ Ratsch-Bum[ラチュブム](バリッ、ズドンといった砲撃音:野砲の事)

●a, o, u, au, の後のch
chの発音は4つの母音a, o, u, au, の後でのみ、かじかんだ手に息を吹きかけるような音[ハ][ホ][フ]になる。これは実際には全て同じ子音であるが、直前の母音の発音の口の形に影響され る為で表記も3通りに書き分けられる。
Wehrmacht [ヴェーアマハト](国防軍) ・ Dachau[ダッハウ](地名)
Jochen[ヨッヘン](人名) ・ Motorbuch[モトアブーフ](出版社名)

ここでワンポイント
ここでAachen[アーヘン](地名)を[アーヒェン]としたり Schuhmacher[シューマッハー](人名)を[シューマッヒャー]としないよう注 意!。chが[ヒ]の音になるのは次の場合である。

●a, o, u, au, の後以外のch
この場合は口先で「イヒヒヒ」と笑ったとき発せられる様な[ヒ]の音になる。 
Reich[ライヒ](帝国) ・ Dietrich[ディートリヒ](人名) ・ München[ミュン ヒェン](地名)

ここでワンポイント
様々なカタカナ表記が存在するヴィットマンのファーストネームMichael も[ミヒャエル]が正しい。また、文献によってはMichelという表記もあるが、Michaelの愛称で誤植ではない。この場合の読み方は[ミヒェル]となる。同様にJoachimはカタカナ表記では[ヨアヒム]と書かざるおえないが、発音は[ヨアハイム]に近い感じになる。 Joachimの愛称Jochen は[ヨッヘン]である。

●縮小語尾〜chenは常に[ヒェン]と発音する。
Schiffchen[シフヒェン](舟形略帽の愛称)・ Krätzchen[クレッツ ヒェン](バイザーの無い初期の帽子)

ここでワンポイント
このchen[ヒェン]は名詞の後に付けると「小さいもの・可愛いもの」を表すほか、「親しみ」や「軽蔑」の表現にも用いられる。これ は元の名詞のスペルに影響される事無く常に[ヒェン]と発音される。
我が国では「ちょうちょ」の曲名で親しまれているHänschen kleinという曲があ るが(映画「戦争のはらわた」のタイトルバック)このHänschenは人名のHansに上記の 〜chenを付けた物で、「ハンス坊や」という意味になる。
綴りにschがあるので[ヘンシェン]と読みたくなるが、上記の理由で[ヘンスヒェン]という発音が正しい。
なお、この後綴りの付いた名詞の幹母音がウムラウト可能な母音であれば、普通はウムラウトとする。

●ドイツ語系の固有名詞の語頭では、chはカ行の発音となる。
Chemnitz[ケムニッツ](地名) ・ Chiemsee[キームゼー](地名)

●chsは[クス]となり、後に母音が来ても[グス]と濁らない。
Luchs[ルクス](オオヤマネコ) ・ Fuchs [フクス](キツネ)
Weichsel[ヴァイクセル](ビッスラ川) ・ Sachsen[ザクセン](地方名)

●語末・音節末の〜igは[イヒ]と発音する。
König[ケー ニヒ](王様) ・ Leipzig[ライプツィヒ](地名)

ここでワンポイント
語末の〜gの発音についてはかなり地域差があり、Königを[ケーニク]と発音するドイツ人 は非常に多い。また逆に[ク]と発音すべき〜gを[ヒ]と発音す る人も多いため、地名のHamburgが[ハンブルヒ]になってしまう事もしばしばである。

●pfは[プフ]。
Totenkopf[トーテンコプフ](髑髏)・Kampf [カンプフ](戦闘)

ここでワンポイント
実際には pf は[プ]と[フ]を同時に発音するような音で、カタカナ表記は難しいが語学の分野では[プフ]と表記するのが通例となっている。

b,d,gの無声音化 : b,d,gは語末や音節末に置かれるとp,t,k,の発音になる。
Leibstandarte[ライプシュタンダルテ](親衛旗) ・ Gelb[ゲルプ](黄色)
kettenkrad[ケッテンクラート](キャタピラオートバイ) ・ Jugend[ユーゲント](青少年)
Feldbluse[フェルトブルーゼ](野戦服) ・ Deutschland[ドイチュラント](ドイツ)
Krieg[クリーク](戦争) ・ Sieg[ズィーク](勝利) ・ Schanzzeug[シャンツツォイク](スコップ)

●dt:[ト]と発音します。
Schmidt[シュミット](人名) 

●ng[ング]:英語のingと同じ鼻音になる。
Göring[ゲー リング](人名) ・ Achtung[アハトゥング](注意)

●w:英語のvに近い[ヴ]の発音。
Waffen-SS[ヴァッフェンエスエス](武装親衛隊) ・ Werk[ヴェルク](工場) ・ Umkehrbare Winteranzug
[ウムケーアバーレヴィンターアンツーク](リバーシブル冬期衣料・迷彩アノラック)

●v:fと同じ発音。
Volkssturm[フォルクスシュトゥルム](国民突撃隊)・ Panzer Vor![パンツァーフォーア!](戦車、前へ!)
SS-Verfügungstruppe [エスエス-フェアフューグングストゥルッペ](SS-VT・武装SSの前身)

●j:英語のyに近いヤ行の発音。
Tarnjacke[タルンヤッケ](迷彩スモック) ・ Jagdpanzer[ヤークトパンツァー](駆逐戦車)
Hitlerjugend[ヒトラーユーゲント](ヒトラーユーゲント) ・ Junkers[ユンカース](航空機メーカー)

●z・〜tz・〜ts・〜ds : いずれも[ツ]の発音。
Hoheitsabzeichen [ホーハイツアプツァイヒェン](国家鷲章)・ Frundsberg[フルンツベルク] 
Reichszeugmeisterei[ライヒスツオイクマイステラ イ](党需品管理局・RZM)
Einheitsfeldmütze[アインハイツフェルトミュッツェ](統一規格帽) ・ Blitz[ブリッツ](稲光)

●qu[クヴ]と 発音する。
Quelle[クヴェレ] (出典) ・ Qualitatswein [クヴァリーテーツヴァイン](ワインの等級)

●th:英語のthの音はドイツ語には無く、単にtと同じ発音になる。
Panther[パンター](豹) ・ Walther[ヴァル ター](銃器メーカー・ワルサー)
Thomas[トーマス] (人名) ・ Goliath[ゴーリア ト](巨人) 

ここでワンポイント
Walther[ワルサー]を[ヴァルター]に直すのは難しいだろうが、正しい発音は覚えておきたい。 Beethoven[ベートー ヴェン]はBeet-ho-venという区切りで構成されているため[ベートホーフェン]となる。

更に例外として

●ドイツ語では外来語を原語の発音で使用する傾向がある。
DeutschesAfrikakorps[ドイチェスアフリカコーア] (ドイツアフリカ軍団)
Handschar:音節の切れ目がHan-dscharであることか ら、[ハンジャール](トルコの半月刀)

●固有名詞が外来語では無いが。
Gestapo[ゲスターポ](ゲシュタポ・国家秘密警察)

ドイツ語の標準語

ドイツ語も方言の多い言語で、地域による発音の差がとても多いのですが、一応ハノーファー周辺の北部ドイツで話されている言葉が 標準語とされています。
しかし、この地域でもKönigstiger などは[ケーニクスティー ガー]と発音する人が多いのが実状で、日常的な発音といった意味では本稿と異なる意見もあるかと思いますが、発音辞典のKönigsberg [ケーニヒスベルク]などから類推して[ケーニヒスティーガー]が正しいと判断しま した。
余談にはなりますが、首都ベルリンでは「ベルリン訛り」があって、かなりクセがあったり、国際空港のあるフランクフルト(アム・マイ ン)でもヘッセン訛りが話されています。
また、バイエルン(南ドイツ)も独特の方言があり、バイエルン人が方言だけで話をしたら、通訳無しには北部ドイツ人には理解出来ないと いう話も決して誇張では無いようです。

むすび

今回は掲示板での書き込みが発端でこの様なコンテンツを作る事が出来ました。
全く他力本願のコンテンツではありますが、これを御覧になった方々が少しでも正しいドイ ツ語のカタカナ表記をする事で、間違いを正していく事が出来れば素晴らしい事だと思います。
本稿を20000ヒット記念コンテンツとしてアップする事が出来、嬉しく思います。

    
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07.Jun.1999 公開
30.Oct.2003 更新
11.Feb.2004 更新
08.May.2010 更新
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