はじめに 軍装品を収集していると、それらが実際にはどの様に使われていたかに興味が湧く。そして実際に使ってみると、新たな発見があり、更に深みにハマッテしまうと言う事は多々ある様に思う。 そう言った意味ではリエナクトメントは面白い発見に満ちたイベントであるが、コレクションの中には既に実用強度が無い物や消耗品もあり、全て実物で・・・と言う訳にはいかないの現状。 また、国内リエナクトメントでのドイツ軍の再現度は、米軍や日本軍にかなり溝を開けられている様に感じる・・・。 勿論これは物だけの問題では無いのだが、物が無くては出来ない事もある。 そこで、代用品や自作アイテムで更に再現度をアップしてみようと考えた。 いざ作る段になると、自分が欲しい分量だけでは作れない物も多々あり、イベントで販売してみたところ、ご好評頂いたのでコンテンツ化する事にした。 元来自分が使ってみたいと思った物で、適当な代用品が無い物、余剰コレクションが中心でアイテムに偏りがある点についてはご容赦頂きたい。 |
糧食系アイテム | |
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サッカリンは第一次世界大戦時に開発された人工甘味料で、二次戦時のドイツ軍でも甘味料として使用されていた。 ドイツは第一次世界大戦時の経験から、戦争が始まると食糧を買い占める者がいて、生産量には関係無い食糧危機が到来する事を回避するため、主要食品の配給制を1939年に制定した。 その結果として、統制品の様々な代用品が脚光を浴びたため、サッカリンも当時のドイツ人には馴染みの品となった。 また、通常のサッカリンにバニラエッセンスを加えた物もあり、焼き菓子等に使用されていた。 ノーカロリーで砂糖のおよそ500倍の甘さがあるが、そのまま口に入れると苦みを感じる事がある。日本では嘗て発ガン性があるとされ姿を消したが、その後発ガン性の疑いが誤りだった事が判明、現在は特定食品の甘味料として使用されている。 ある程度年齢を重ねた世代には懐かしい甘みであるが、当時の兵士達にも馴染みの甘さを体験したくて再現した。 使用にあたっては砂糖の500倍の甘さに習熟しないと、つい入れ過ぎるので要注意。 |
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比較的初期のサッカリンで、内容量に1 1/4gと412粒とあり、均等な結晶形状をした物が入れられていたと思われる。 当時の紙質に似た紙は、国内では作られていないので、パッケージをそのままスキャンしてデータ化した。 つや消しの質感を再現するため、プリントアウト後に、つや消しの耐紫外線、撥水コートを施してある。 実物の内容量は1.25gで砂糖に換算すると500gに相当するとの記載があるが、本シリーズでは約2g入りにしてある。 |
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サッカリン B 上の物とはメーカー違いのパッケージを再現した物で、袋の構造が全く違うのが面白い。 作り方は上の物と同様で、プリントアウト後に、つや消しの耐紫外線、撥水コートを施した。 この撥水性能に関しては、濡れた手で触った程度ではインクの滲みは無かったが、そもそも内容物の方が濡れると溶けてしまう物なので、濡れた手では扱わない様にされたい。 |
1943年に布告された節約令では、工業製品のパッケージを単色刷りにする事が定められていたので、多色刷りパッケージの在庫が無くなり次第、この様に単色刷りの物が使用されるようになった。 また、このサッカリンの紙袋では、上の同一メーカー製の物よりサイズ自体も小さく変更されている。 |
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ドイツ軍の補給マニュアルには生乳や発酵乳の他に、加糖練乳と無糖練乳、粉ミルク等があった。生乳はその保存性に問題があった為、現地で購入する事が多く供給が不安定であった。 上の画像は、1941年の東部戦線でロシア娘から牛乳を購入するSSドイチェラント連隊の兵士。 |
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汎用性の高い無糖練乳の缶詰を再現。 後方地域でコーヒー等を飲み時にサッカリンと共に使用すると、当時の兵士達が温かくて甘い飲み物を飲んでホッとした気分が味わえる。 ラベルの紙質に拘った為、一度缶を白で塗装し、缶の印刷が透けるのを防いだ。 |
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ワイン 酒保品と言えば酒類とタバコ、当時の支給品の中にも酒類とタバコはあったものの、それでは足りずに酒保で購入する兵士達は少なくなかったそうである。 ドイツでは当時の国歌の歌詞にも登場するワイン、ビールと共に極めて馴染みの深い物で、当時から地域色の強いワインが多く作られていた。産地によりボトルの形状や瓶の色が異なり、ラベルに記載されている事項でおよその味が想像出来るシステムは、如何にもドイツらしさを感じさせる。 そこで当時のワインラベルコレクションの中から、中身と違和感が無い物をチョイスして再現してみた。 夜の飲み会後の空き瓶にも違和感を感じる方には特にお勧め!。 |
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ドイツのワイン産地には、それぞれに特徴があり、有名なモーゼルワインであれば、一般的には味は軽目で、ライン河流域のミッターライン、ラインガウ、ラインヘッセン、ラインファルツはモーゼルに比べると濃厚な味の物が多い。 そしてモーゼルであればボトルのガラスの色はグリーンで、ラインであればブラウンのガラスで作られている。 このラベルは、“Mosel-Saar-Ruber:モーゼル・ザール・ルーヴァ(モーゼル河流域全般を示す)”の中でもワイン産地として有名な村“Bernkastel:ベルンカステル”にある畑のブドウから作ったワインである事を示している。 因みにメーカーの”Max Gruban”は現在も存続している。 そして、今回使用したワインは、ラベルに合わせてモーゼル・ザール・ルーヴァのベルンカステル産ブドウで作られた、軽くて甘口のワインを使用した。 映画「戦争のはらわた」の劇中、シュトランスキー大尉が着任の際にブラント大佐にワインを勧められ「37年のモーゼルをロシアの南端で飲めるとは!」と言うシーンがあるが、まさにコレがあの”モーゼル”である。 ワイン製造年は1942年とし、”Max Gruban”のロゴマークを入れて”それらしく”自作した。 |
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このワインも上のモーゼルワイン同様”Max Gruban”社が当時使用していたワインラベルをコピーして再現した物。 ラインワインは、デザートワインとして有名なモーゼルワインと比べると一般的には濃厚な味わいのワインが多く、産地としては北から、ミッターライン、ラインガウ、ラインヘッセン、ラインファルツと区分されている。 特に最も南に位置するラインファルツは甘くて濃厚な味のデザートワインの産地として有名である。 このワインに使用したラベルには、“Rheinhessen:ラインヘッセン”の有名な村”Nierstein:ニアシュタイン”の記載と、ブドウの種類を示すReisling:リースリンク”が印刷されているので、この3つの条件を満たすワインを探して再現した。 したがって、このワインも比較的甘口なワインとなっている。 ワイン製造年が記載された帯ラベルには、ラベルにある紋章を配して1942年製の物を自作した。 ワインの味に関する好みは別として、当時からあまり変わっていない伝統的なドイツワインの味を体験する事は、当時の糧食再現同様に、リエナクトメントの小道具として楽しめる物であると確信している。 |
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のど飴の缶 | |
当時の”のど飴 ヴァイベート”の缶を再現。 ”ヴァイベート”に関しては当資料館にコンテンツがあるので、そちらを参照されたい。 実物の缶をスキャン後キズや汚れを修正し、特注で製作したデカールを塗装した缶に貼った物。 トローチや、オブラートで包んだ”のど飴”を入れて使用する。 缶のサイズ 直径:78mm 高さ:25mm |
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生活用品・私物類 | |
表紙付き便箋10枚と封筒(無地とスタンプ付き計5枚)野戦郵便用切手型シール9枚に、野戦郵便の書き方テキスト、ドイツ語の筆記体一覧表付きのセット。 今回は、USARのイベント用に、設定部隊の野戦郵便番号と、編成地のニュルンベルクの消印を再現。 家族や恋人からの手紙を手軽に作れるセットとした。 |
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今回は、USARのイベント用に、設定部隊の野戦郵便番号と、編成地のニュルンベルクの消印を再現。 家族や恋人からの手紙を手軽に作れるセットとした。 |
ハンカチと言っても、ドイツでは鼻をかむ為の物。 詳しくは当資料館にコンテンツがあるので、そちらを参照されたい。 野戦服やズボンのポケットに、各自1つは入れて欲しい必須アイテム。 紙質、大きさはトイレットティッシュにも近いので、代用品として使用可。 外装にはつや消しの耐紫外線、撥水コート処理済 |
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兵士達には朝夕2回が義務付けられ、出来れば毎食後行う事が望ましいとされていた歯磨きであるが、それらしい歯ブラシはあってもコレが無かった。 これは戦時中、国防軍に納入されていたチェコ製の歯磨き粉の紙袋を複製し、中に日本製の歯磨き粉を入れた物で、歯磨きに関する説明書付き。 裏面には、”Für die Deutsche Wehrmacht bestimmt:ドイツ国防軍専用品”と”1942”の文字等が印刷されている。 これは支給品で、単なる当時のパッケージでは無い。 外装にはつや消しの耐紫外線、撥水コート処理済 |
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ランプや懐中電灯が基本的に部隊装備であったのに対し、兵士個人が携行出来たのがこの”塹壕ロウソク”であった。 ただし、しばらく灯を点していると、ロウが溶けるので、水平な場所で使用しないとロウが溢れたり、安易に触ると熱かったりと、決して扱いやすいアイテムでは無い。 もっとも、この不便さこそがリエナクトメントの醍醐味の1つであろう。 |
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マッチ 3種 生活再現を考えた時に、是非欲しかった物の1つがマッチ。 タバコに火を点けるのも、ライターよりポピュラーだったマッチが欲しいし、ランプやロウソクの着火には不可欠だろう。 今回はマッチコレクションの中から3種類をチョイスして実物をスキャンした。 当時の様に木製のマッチ箱は既に生産されていないので、同サイズの紙箱入りマッチで再現を試みた。 |
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マッチ A ”Deutsche Sicherheitszünder:ドイツの安全マッチ”とプリントされたこのマッチ、募金箱にコインを入れる手と、子供達が描かれている。 イラストの両サイドには”Viele Wenig geben ein Viel:大勢の少しずつが、大きなものを与える”と言う様な標語が書かれているので、募金を促す意見広告と思われる。 当時は様々な募金が日常的に行われていたので、世相を表しているアイテムと言えるだろう。 オリジナルのラベルは紙質が悪い為、印刷にかすれがあったので、雰囲気を壊さない程度に修正。 箱の印刷にはつや消しの耐紫外線、撥水コート処理済 ただし、マッチなので濡らさぬ様願います。 |
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”Roland Hölzer” その下には、安全に着火出来るマッチである事が書かれているが、いわゆる安全マッチが登場する以前のマッチは、頭薬が有害であった上、何かにこすれば発火するデリケートな物で、自然発火しやすかった為だろう。 下の方には”Deutsche Zündhozfabriken A.G.:ドイツマッチ製造会社”とあるが、当時マッチ製造は国から保護されていて、独占的に行われていた。 箱の印刷にはつや消しの耐紫外線、撥水コート処理済 ただし、マッチなので濡らさぬ様願います。 |
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マッチ C このマッチは1943年の節約令に基づいて作られたタイプで、ラベルが単色刷りになっている他、上の2種類のマッチより3mm程度短くなっている。 ラベルを箱に合わせて引き伸ばせば簡単に作れるのであるが、マッチの軸まで切り詰めた当時の状況もリエナクトメントの醍醐味とばかりに、マッチ箱とマッチの軸を切り詰めて製作したこだわりの一品。 箱の印刷にはつや消しの耐紫外線、撥水コート処理済 ただし、マッチなので濡らさぬ様願います。 |
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当時のタバコに入っていた女優のブロマイドシリーズ。色々なシリーズがあり、専用アルバムに貼って集める事も出来た。 未婚の兵士達が財布や手帳に忍ばせて所持していたと言う設定に良いアイテム。 ただし、Soldbuchに入れる事は慎まないと、提示を求められた時にお目玉を食らう。 またこの手のアイテムからは、世相と言うと少し大げさになるが、流行、空気感の様な物を感じ取ってもらいたい。 |
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プライヴェート写真 今回は、USARクバン橋頭堡の参加者向けに、1943年に第73歩兵師団の兵士達が持っていて不自然では無い写真をチョイスしてみた。 家族写真や恋人、子供達、帰郷時に家族や子供と撮ったショット、郷里の南ドイツの風景の他、兵営時代の懐かしい写真や、兄弟や戦友から送られて来た物、そして自らが家族へ送る写真も用意した。 これらの写真を、野戦郵便セットと組み合わせる事で、家族から写真同封の手紙を受け取ったシーンや、自由時間に封筒から写真を出して眺める、家族に写真を同封した手紙を書いているといった演技も出来るだろう。 |
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写真は野戦郵便セットと組み合わせるだけでは無く、財布や手帳、認識票ケース等に入れて携行するのにも、適したアイテムである。 また、こうした写真を通して、演じる兵士の恋人や家族、郷里の情景などに想いを馳せる事で、故郷から遠く離れた前線での兵士を演じる際に、自然と深みが出ると思う。 |
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第73歩兵師団は、党大会で知られるニュルンベルク生まれの部隊なので、父親は当然の様に党員章を付けており・・・とか、父親も陸軍将校で、妹はBDM、更に彼女はDRKなんて、少しベタな設定を楽しめる写真も揃えてみた。 ただし、同一イベントで複数の兵士が同じ妻や彼女、子供等の写真を持っているのも不自然なので、38種類の写真を概ね各3枚ずつの限定版とした。 |
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本コンテンツ内のアイテムに興味がある方は投稿フォームにてお願いします。なお、誠に済みませんが購入を希望される場合、本業では無いので対応に時間が掛かる事がありますが、どうかその点についてはご容赦下さい。 |
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