ここでは、ドイツ兵の身だしなみに関する資料を掲載しています。
   
 
はじめに

本コンテンツでは、ドイツ兵の身だしなみ:髪型と散髪、洗面と髭剃り、シャワー、手洗いなどについて、当時のマニュアルやプライベート写真を交えて紹介する。

   
  身だしなみ




髪型

リエナクトメントの各サイトでは、大抵規定になっているが、当時のドイツ軍でも勿論長髪は禁止されていた。
上の図は、1935年に発行された”SOLDATENLEXIKON:兵隊百科事典”に掲載されているもので、あらためて書くまでもないが、右が○で、左は×。

この他に、爪は伸びていないか?とか、保健衛生に関する事も細かく規定され遵守されているか検査された。

それは軍にとって、兵士は大金と貴重な時間を費やして育成した戦力そのもののであり、戦闘以外の理由で戦闘能力を損なう事は避けなければならなかったからである。
したがって、各兵士にとって健康管理は重要な責務であり、身体を清潔に保つ事は基本中の基本とされていた。


 散髪風景
入営後

兵士達は、前線でも各中隊の床屋で散髪を行った。

画像はカミソリでうなじを剃っている風景だが、剃られている兵の肩にタオルが掛けられている。

また、右に置かれたイスの上には、ハサミとクシが置かれている。

更に後方には、床屋兵の上着や、ベルト、野戦帽なども木の枝に掛けられているのが興味深い。

前線にて

この画像ではバリカンでうなじを刈っている。

刈られている兵は痛そうな表情をしており、順番待ちの兵の表情も不安げに見える。

この写真では3名が順番を待っているが、陽気が良い時はこの様に上半身裸で散髪を行っていた様である。



兵営内の洗面風景 
Der Dienstunterrricht im Heere より

ドイツ軍に於いても、朝の洗顔から歯磨き、食事前の手洗い等は教育事項に組み込まれており、朝の洗顔には洗面器一杯の湯が配給された。

そして、この湯で顔だけではなく、耳や首、胸と脇の下も洗い、Zähne putzen:歯磨きやRasieren:髭剃りも義務とされていた。

したがって訓練中の兵営生活では、まずは洗面器からコップに湯をくんで歯を磨き、その後顔を洗ってから、耳や首、胸や脇の下を洗った後、湯が汚れる髭を剃るという手順を叩き込まれた訳である。

特に歯磨きについては、少なくとも朝と夜は磨くこととされており、可能な限り毎食後に行う様指導されていた。また、冷水ですすぐと歯のエナメル質を傷める危険性があるため、お湯を使い、歯茎を傷める恐れがある硬いブラシは避け、柄も乾燥に時間の掛かる木製以外が好ましいとされていた。

上の写真では、左から歯磨きをしている、上半身を拭く、整髪する兵が写っている。

洗面風景

画像は、前線での洗面風景を写したものである。

木箱に洗面器を置き、上半身裸の兵士が向き合っている。
洗面器に手を浸けている兵が、ズボンのポケットにタオルを突っ込んでいるのに注意。

また、洗面器が置かれている箱の奥には、髭剃り道具や石けん等が置かれている。

左端の兵はシャツを脱いでいるところの様であるが、左から2人目に将校がいるせいもあってか、全員が上半身をきちんと洗おうとしている様に見える。

また、兵士達の奥には洗濯物が干されているのが面白い。
洗面風景

野営中の洗面風景。

この写真では、テントの手前に簡易な洗面所が設営されている。

左から2人目の兵は脇の下を、右端の兵は首を洗っているが、左端と右から2人目の兵はシャツを着用したままである。

彼らが上半身を洗うのは、これからなのか、洗うつもりが無いのかは不明である。

手前にしつらえられた棚の上には、水筒のコップやシェービングディッシュの様な物が置かれている。

髭剃り風景

夏の東部戦線で髭を剃る砲兵連隊の兵士。

砲架の上にシェービングブラシやシェービングフォーム、鏡を置いての髭剃りである。

この2名は規定通り上半身も洗ったのか、シャツを着用していない。
髭剃り風景

この画像は、将校の髭剃りを写したものである。

営舎が用意されていれば個室が与えられる将校も、状況次第でこの様な髭剃りをしなくてはならなかった。

写真の左上方には、木の枝に吊された鏡が写っている。

因みに、兵士には毎日髭を剃る事が義務付けられており、特に歩哨、点呼、上官への報告、パレードや式典に参加する際には、念入りに行うように規定されていた。

ただし、湯または水が入手困難な状況では、中隊単位でこれを免除する事が出来た。
 
”Tornister-Lexikon:背嚢百科”の表紙

Tornister-Lexikon:背嚢百科は、1943年に国防軍最高司令部が発行した、前線兵士向けのサバイバル・マニュアルで、当時の補給状況下でより快適に生き抜く為の知恵が多く掲載されている。

本来
は築城工兵や、野戦調理部隊が行う仕事を、自分達でも出来る様に、簡単な建物の作り方や、各種釜戸の作り方、トイレの作り方、越冬の為の建物や装備の作り方、動物の解体方法、野菜の保存法、火の熾し方、充分では無い補給状況下での食事のレシピ等々、実に多彩な内容が、多くの図版入りで紹介されている。

ここで見て貰いたいのは、表紙の右上でシャワーを浴びている絵、こうして見ると一見滑稽にも見えるが、シャワーも体を清潔に保つ為には不可欠な物であった。

この小冊子には、サウナ小屋の作り方まで記載されており、当時前線でコレを作った写真も所持しているが、国内のイベントでの再現は困難と思われるので、今回はシャワーの方だけ紹介することとした。

シャワーを作る

立木にはしご、ジョウロと紐、スノコで作るシャワーの図。

洗面時に上半身を洗う事は紹介したが、下半身を洗わないと衛生的には問題がある。

そこで、短時間に作れる簡易シャワーは前線でも活躍したのではないだろうか?。

しかし残念ながら、この簡易シャワーの写真に関しては、現在のところ所有していない。

汗をかく季節のリエナクトメントで、これを作ってみるのも一興かと思う。
シャワー無しでも

この兵士は、バケツ一杯の湯、もしくは水で体を洗っている。

前線兵士の間では下着代わりに着用される事の多かった、スポーツ着の短パンを着用している様に見えるが、詳細は不明である。

こっちであれば、人前で全裸になる必要も無く、イスとバケツだけで再現が可能と思われるが如何だろう?。
Handwäsche:手洗い

この画像は、列車で東部戦線に向かう兵士達を写したものである。
昼食の配給前に、蒸気機関車の給水施設で手と飯盒を洗っているシーンであるが、なんとも水の勢いが強そうである。

因みに、手洗いも毎食前に行う事と規定されており、その際にはブラシを使って洗う事が推奨され、特に爪と指の間を丹念に洗う事とされていた。

ここで興味深い証言を紹介しておく。

末期に陸軍高射砲部隊に配属された元兵士の証言によると、手を洗う習慣は身につけていたが、皆洗った手は振って水を切り、そのまま乾かすか被服で拭いていたとの事である。1人の証言で、全ドイツ軍将兵も同様であったとは言わないが、タオルのサイズを考えると納得する。

そう、既にコンテンツ化しているが、ドイツ兵に支給されていたハンカチは鼻をかむ物で、決して手は拭かなかったからである。

       
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26.Spt.2013 公開
01.Mar.2014 改定
25.Dec.2015 改定

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